表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

カトレアちゃんは宿屋チェルシーの娘みたいです。

エイヴァン先生とおじさんおばさんの会話を聞いていると大体の状況が理解出来てきた。


俺が入っているこの女の子カトレアちゃんはこのおじさんおばさんの娘でフルネームはカトレア・ミッチェル

ちなみに両親の名前は母親がエレナ・ミッチェル父親がロバート・ミッチェルというらしい。

冬に風邪をひいてこじらせてしまい11歳になったばかりの春に亡くなってしまった、ということだ。

そして今日、カトレアちゃんを弔う儀式をしていて俺が目覚めてしまった。

この世界の弔い方法は火葬でも土葬でもなく、遺体を藁でできた船に乗せて流すらしい。遺体と一緒に花や食料を乗せてあの世で貧しい思いをしないように。



しばらくしてエイヴァン先生の問診がはじまった。

「あなたのお名前は分かりますか?」

「・・・分かりません」


ここで俺はカトレアじゃない、橘だ!と言ったところでこれからの人生どうなるか分からない

祟りだと言って閉じ込められるかも。

研究だと言って痛めつけるかも。

そんな最悪な状況が脳裏をよぎってとっさに記憶喪失のフリをした。


殆どの質問を「わかりません」でやり過ごす。診断結果は記憶喪失ということになった。

身体的には問題は無く、カトレアちゃん死亡前の症状も治っているとのこと。

今はショック状態で記憶も少しずつ戻ってくるだろうということで今日はもう帰ることになった。


「なんか実の娘に自己紹介なんてなんだか照れるな」

「そんなこと言ったって今のカトレアには私たちの記憶も無いんだよ!しょうがないだろう?」

帰り道の途中ロバートさんとエレナさんが自己紹介してくれた。

エイヴァン先生の元で聞いていた内容とあまり変わらなかったが新たに分かったことが一つ、家は宿屋だということ

話を聞きながら歩いていると前を歩いていたロバートさんがいきなり立ち止まり、止まり切れなかった俺はロバートさんのお尻に顔面からぶつかる


「ここがカトレアの家【宿屋チェルシー】だよ!おかえり!カトレア!」

鼻をさすりながらロバートさんの指さす方向をみるとそこには帰り道に見ていた家達の倍の大きさはある建物があった。大きく看板には【宿屋チェルシー】と書かれていた。


まじまじと建物を眺めている俺に対してエレナさんが

「どうだい?なにか思い出したかい?」と聞いてきた。

その問いかけに対し俺は俯いて顔を横に振る

その仕草を見た二人は「しょうがないよ」と言いながら少し寂しそうな顔で笑った。



ごめんなさい。俺はあなた達の娘、カトレアじゃないんです。

思い出すも何も元からこの世界の記憶なんてありません。

あなた達を騙しているんです。


とてつもない罪悪感に苛まれる。




家の中に入ると真っ暗で静まり返っていた。

ロバートが家中のランプに火をつけて回ると視界がぼんやりと広がっていく

数人で座れるテーブルがいくつも並んでいて、カウンターテーブルもある

そしてカウンターテーブルの後ろには数えきれないほどの瓶。雰囲気からしてお酒だろう

そこは宿屋というより酒場という方が近い感じだった。


「あたしらの家はこっちだよ!」

辺りを見回して動かない俺にエレナさんがお店の奥にある扉を開けて手招きをする

早歩きでカウンターの前を通りエレナさんの元へ行く

扉をくぐればそこにはレンガで出来た暖炉、木のテーブル、本棚、独特なカーペット、そして何より壷!!

ゲームで見てきた The 始まりのまりの家 的な雰囲気を醸し出していた。

こんなことになって不謹慎だと思うけど今まで画面越しに見ていた部屋が目の前に広がっていてすごく興奮する。

興奮を表情に出さないように気を付けながら何食わぬ顔で暖炉の横に置かれた壷に近づく


やっぱりリビングに壷は当たり前なんだ!

中身はゴールドか薬草ってのがお約束だよね!


そんな事を考えながら壷の中を覗き込む

すると中身は薄暗くてよく見えないが何か液体だった


もしかしてポーション!?こんな序盤の町で?


好奇心を抑えられず壷の液体を人差し指で触れてみた。

触った感触はサラサラしていて無色透明おまけに無臭思い切って舐めてみる・・・味がしない。


「カトレア!なにそんな水舐めてるんだい!ホコリが入って汚いよ!」

俺の行動に気が付いたエレナがびっくりしていた


そうかこれはポーションじゃなくてただの水だったのか。残念。


「この水は暖炉を炊いたときに家の中が乾燥しないようにいつも置いているものじゃないか。そんな事も・・・」

その瞬間に俺たちが入って来た扉が開き

何やら美味しい匂いをさせた料理を持ったロバートが入って来た


おそらくエレナは そんな事も()()()()()()()()() と言おうとしたのだろう


ありがたい事にロバートのおかげで聞きたくない言葉を聞かないで済んだ。



3人で食卓を囲む サラダらしき物と、野菜がたくさん入った具沢山のスープ そしてメインディッシュに50センチはありそうな魚が大皿である


サラダは葉物が中心でthe 素材の味 ドレッシングは無いらしい

スープはコンソメスープの様な味わいだけど、少しスパイシーになっていて美味しい

魚はこの世界独特の香草だろうか、魚本来の味と鼻から突き抜けるような酸味の香草がなんともマッチしている。

星、みっっっつです!!!


静かすぎる雰囲気に思わずふざけてしまった。



殆ど会話をしないままご飯を食べ終わり カトレアちゃんの部屋へ案内された。


部屋の中には机とベッドと本棚だけのシンプルなものだ


「今日は疲れただろ?もう休んだらいいさ、おやすみカトレア」

そういってロバートは額にキスをしてドアを閉めた


部屋には自分以外誰もいなくなり 急に疲れがどっと押し寄せてくる


「はぁ・・・疲れた」

独り言をいいながらベッド倒れ込んだ。

太陽の匂いと 微かに知らない人の匂いがする


これから俺はどうすべきなんだろう?



ーーーガタガタッ


急にベッドの下から物音が聞こえた。






キリのいいところで終わらそうとしたら予想以上に長くなってしまいました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ