表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集

作者: ゆずは

「綺麗だね」

「そうだね」


 湖のほとりで男女が囁き合う。俺はその光景を木の陰から睨んだ。


 舌打ちをしつつ、右手に握り締められたトランシーバーを耳に当てる。


「全隊、状況は?」

『A隊作戦目標地点に到達』

『B隊同じく』

『C隊同じく』

『ブクブク』

『E隊同じく』


 ブクブクは良しとして全隊作戦目標地点に到着した様だ。


「C隊、カップルの状況は?」

『イチャイチャしています』

「よし、殺すか」


 俺はそう呟くと、一つ息をついて、口を開いた。


「これよりCBS、カップル撲滅作戦を開始する。D隊、作戦を開始せよ」


 俺の言葉にまたブクブクという音が返ってくる。さっきからそう返ってくる理由は至って簡単だ。何故ならD隊は水中にいるのだから。


『D隊、作戦行動に移りました』

「わー綺麗」


 C隊の報告と共に女が声を上げる。今頃水面では光が反射して幻想的な景色になっているだろう。まあそれはD隊の鏡による光の反射なのだが。


 俺は木の陰から顔を出す。すると、女が少しずつ前に進んだ。


(きた!)


 俺は内心そう呟き、トランシーバーから指示を出す。


「A隊、作戦行動に移れ。B隊はA隊の援護」

『了解』


 その返答と共に、男の後ろで物音を立てずに迷彩服の三人が立ち上がる。そしてそのまま男に忍び寄り、背後から女目掛けけて男を押す。


「うわっ!」


 男は押され、そのまま女も押す。そしてそのまま女は湖へドボン。


(うおっしゃあぁぁ!)


 内心叫びながらガッツポーズ。


「A隊B隊は後退。C隊はその場で待機」


 そう指示を出し、俺は影で見守る。男は何故か湖を見ながら頭を抱えている。普通彼女が湖に落ちたら助けるのが普通である。しかし、彼には出来ない。何故なら彼は泳げないのだ。


 しかし、男は意を決したのか、頭を横に振って湖に飛び込んだ。


 バシャンといういかにも飛び込みミスった様な音と共に、水面に白い泡が激しく立つ。溺れていやがる。


「C隊、作戦開始」

『了解』


 C隊はそう返答すると、溺れた二人に駆け寄って浮き輪を投げる。


「大丈夫ですか? 掴まってください」


 投げられた浮き輪を二人は掴み、そのまま岸に上げられる。どうやら助かった様だが、これだけでは終わらない。


 俺はトランシーバーを口元に近づけ、今まで動かさなかった最後のE隊に指示を出す。


「E隊、作戦行動に移れ」

『了解』


 その返答と共に、六人の集団が少し離れたところで大きな声で話し始めた。


「あの彼氏意味わかんなくない? 彼女溺れたら普通助けるでしょ。て言うか自分で落としてたし」

「しかも泳げないときたもんだぜ。最低だな」

「マジひくわー」


 そのまま六人の会話が進む。すると、彼女の表情が曇り、そして怒りに満ちた。


「そうよ! あんたが押さなきゃこんな事にはならなかったわ! 責任とってよ!」

「いや……俺は後ろから押されて……」

「ならすぐ助けなさいよ! ああもう、服ベトベトじゃない。最悪よ最悪」

「わ、悪かったよ」

「もうあんたなんて知らないわ!」


 女はそう言いながらスタスタと歩いて行った。男が「まってくれー!」と叫ぶがもう遅い。


 俺はその光景を見ながら脳裏で一言。


(任務完了)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ