フィフスグラウンド戦記外伝 黒死蝶56
機体の準備はほぼ完璧に近い。
俺とテルシアは2機編隊を組み、飛空戦艦の格納庫から勢い良く飛翔すると、昨日、『白い鳥』と会敵した空域へと針路をとった。
雲の量はそれ程多くは無い。
が、この空域は雲が発生しやすく、刻一刻と状況が変化している為、常に周囲へと目を向けていなければならない。
既に、3個中隊が、昨日の空域の索敵を終えており、既に『白い鳥』は移動したと思われる。
丁度、この時、索敵範囲を更に広げて、合計12個の中隊と9個の小隊が巨大な円を描く様に広がっていた。
その間に、小さいながらも連邦国軍機との戦闘が行われている。
相手は第4世代の機体で、しかも少数であったと言う事もあり、こちらの損害は軽微だったのだが、やはり油断は禁物だ。
昨日の事もあり、より一層警戒を強めるべきだと思っている。
先ほどから何か、違和感が拭えないのだ。
誰かがこちらを見ている様な、そんな違和感だ。
「テルシア、周囲の空域はどうだ?
反応はあるか?」
念の為、問い掛けてみる。
俺の機体より、テルシアの機体の方が、レーダー性能が高い。
とは言え、普段目視によって、敵を見付ける事に慣れている俺達としては、レーダー性能に関しては以前乗っていた機体と大差ない様にも感じてしまうのだが。
「今の所、反応は無いようですね。
それよりも、針路はどうしますか。
雲を迂回しますか?」
少し雲が増えて来たようだ。
それを見やってか、テルシアが提案して来る。
「そうだな。
上昇しよう」
「了解」
緩やかな曲線を描いて、目の前の雲の塊を避ける様に上昇する。
と、一瞬、太陽の光が遮られた、そんな気がした。
刹那、一気に機体を翻し、急加速。
直後に、その場所に青白い閃光が迸る。
「上だ!」
俺は叫びつつ、上空を睨み付ける。
2機編隊の白銀の機体。
そしてノーズアートは白鳥が翼を広げている。
『白い鳥』か。
すかさず、機体を上空に向けて、レーザーを放つ。
つい先ほど、俺がやったように一気に機体を翻し、急加速して避ける。
流石は、『白い鳥』だ。
鋭い曲線を描いて、忽ち迎撃態勢を整えている。
「テルシア、頼むぞ」
「了解」
そうして、俺はスロットルを捻り込む。




