フィフスグラウンド戦記外伝 黒死蝶47
「分かっているなら、実行しろ。
今までに失った者達の分まで、な」
納得できたのか、していないのか彼女は黙ったままだ。
そうして俺が歩き始めると、テルシアも同じように歩き始めた。
結局、格納庫に向かうまで、そして機体を上昇させて、格納庫から空に飛び立つまで彼女は一言も話さなかった。
が、飛翔に関しては流石に高水準で俺に追従して来る。
既に周囲の空域を、編隊飛行した小隊、若しくは中隊規模の味方機が、巨大な円を描く様に飛翔している。
そして機体のモニターから索敵している味方から送られてくる情報が表示され、次々と数値と文字の羅列が流れていく。
それらを見るに、未だ『白い鳥』の決定的な情報は掴めずにいるようだ。
「こちら、ユーリ小隊。
座標305・593に、複数の連邦国軍機と、飛空戦艦を発見。
なお、飛空戦艦に関しては不時着。
大破しており、戦闘能力は無に等しいと、思われる。
繰り返す座標……。」
不意に通信が入る。
「こちらバルム中隊。
ユーリ小隊は、連邦軍機を追尾せよ。
我々と合流次第、攻撃を開始する、以上」
「了解。
追伸、連邦国軍機の数2。
座標306・592に向け転進」
何か嫌な予感がする。
と言うのが正直な感想だった。
ユーリ小隊は4機編隊。
バルム中隊は12機編隊だ。
数の少なさを考慮に入れて、数量的に有利になった所で戦いを挑むと言う事なのだろう。
確かに、正しい選択だ。
だと言うのに、何か違和感を感じてしまう。
機体を翻し、フットバーを蹴り込む。
そしてスロットルを捻る。
視界が塗り替えられて、ユーリ小隊の方角に向かって加速していく。
距離は遠い。
恐らく、バルム中隊の方が先に辿り着いてしまうだろうが、それでも向かわずにはいられない。
「隊長、嫌な予感がします。
用心するべきかと」
テルシアも俺と同じ事を感じていたのだろう。
右後方でぴったりと追従しながら彼女は言った。
「あぁ、兎に角。
急げ、こう言う時の勘ってのは悪いものほど当たるからな」
「了解」




