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フィフスグラウンド戦記外伝 黒死蝶46

「なぁ、テルシア。

お前の気持ちは分からんでも無い」

やはりそうか、と思いながら俺も立ち止まり、壁に背中をもたれさせて答える。

「何故、俺達が道案内なのか、と言う事なのだろう」

「はい」

彼女は小さく頷き、続けて言う。

「私達には、最新鋭の機体を与えられています。

それに、敵を軽んじる訳ではありませんけれど、飛翔技術に自信も持っています。

今回の作戦では、私達こそ、最前線に立って『白い鳥』を見つけ出すのが味方の犠牲を最小限に食い止める良い方法だと思っているんです」

理論としてはそれが正しいだろう。

何の為に最新鋭の機体を与えられているのか、と言う点においても矛盾していると思う。

それに、俺も自身の技量と、他の部隊の味方機との差について考えない事は無い。

今の味方の飛翔技術だと、『白い鳥』に対してどれ程、有効に戦えるのか、あまり楽観視出来る物では無かったのだ。

「あぁ、それは俺も同じだ。

だがな、お前……。」

だとしても、今のテルシアはそれとは別の事を考えているのでは無いかと思える。

「本当は別の理由があるんだろう」

言った瞬間に、彼女の空色の瞳が逸れる。

「別に……じゃない…すか」

僅かに聞こえる程の声で彼女は答える。

「別に、良いじゃないですか。

他の理由があっても、良いじゃないですか」

もう一度、言った。

俺は恐らく、今、この瞬間にテルシアが何を考えているのかを正確に理解していた。

だから、言葉にしなくてもテルシアは分かっているのだと思う。

この事をわざわざ口に出す事がこの時必要だったのかと言う点において悩むが、言わずにはいられなかった。

「お前、本当は、バルやライトフライの仇をとりたいと思っているんだろう。

分かっていると思うが」

「勿論、分かっています」

と、俺の言葉を遮る様にテルシアは言う。

「それが、愚かしい事だと分かっています。

知っていますし、理解してます」

「だったら」

「でも、納得は出来ません」

今日この時まで、この様な事は無かった。

いつもの様に、感情を感じさせない口調で、淡々と物事をこなして来たテルシアだと言うのに。

今もなお、バルやライトフライを失った事に対して執着している。

それは至極当たり前のことで人の死が自分に影響を与える事は多々ある。

だから今はその事実を受け止めて、納得して、乗り越える必要があるかも知れない。

そしてテルシアには少し時間が必要では無いだろうか。

過去、多くの友人や、仲間を失った出来事の理由として、感情によって戦いってしまったが故に自らも命を落としてしまうと言う物がある。

そう言う場面に何度も出くわして来た。

であるならば、感情を切り離す事こそが、生き残る為の手段だと信じて、これまで飛んでいた。

人間らしい事は捨てろ。

自分は機械なのだ、そう思う事によって、冷静に判断し、敵を葬り去る事が出来るのだ。


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