フィフスグラウンド戦記外伝 黒死蝶40
針路を北へと向けて飛翔する。
周辺には数多くの島が点在している空域に差し掛かった。
また、連邦国首都オーリエットが陥落し、その際に逃げ出した飛空戦艦の残骸が浅瀬に横たわっているのをいくつか発見しているが、連邦国軍の姿は無い。
既に、北部の都市に避難しているのだろうと推測している。
仮に、万が一この場所で会敵したとしても現在皇王国軍が十数隻の飛空戦艦を展開している場所が比較的近いと言う事もあり、直ぐに対応出来るだろうと思われた。
と、島の端に建造物を見付けた。
どうやら灯台のようだが、半分崩れかけており、内部の階層が見え隠れしている。
もしかしたらここでも戦闘が行われたのだろうか。
「どうする。
少し降りてみるか?」
「そうですね…。」
テルシアに問いかけると、彼女はこちらに親指を立てて言う。
「良いですよ。
何だか景色が綺麗な所ですし」
それを聞いて、機体をゆっくりと下降させ始める。
と、風が突然吹いた。
僅かに揺れる機体。
「結構、強いですね」
丁度、灯台の下の海面から吹き上げる海風が真面に当たる場所らしい。
そうして灯台の横に機体を滑らせて着陸する。
灯台の横からも風が吹いている。
「本当に古い灯台ですね」
機体から降りるなりテルシアが言う。
「そうだな」
と答えて改めて見やる。
灯台の壁は崩れかけて、蔦が絡まっている。
長い間、人が立ち入った形跡は見られない。
入口のドアも地面に倒れていた。
「折角ですし、入ってみましょうか」
と、言いつつも、既にテルシアは入口の中へと歩いていく。
俺は渋々付いて行く事にした。
一部の床は下草で覆われて歩きにくい。
所々に残っている窓も緑色の苔が生えている。
階段を見付ける。
と、言うか既にテルシアはそれを上っているのだが。
「あまりうろうろしない方が良いぞ。
崩れるやもしれん」
「気を付けているので問題ありません」
そう言って彼女は更に上って行った。
進むと、開けた場所に差し掛かる。
どうやら2階部分らしいが、一般的な建造物の2階の高さでは無く、それと比較すると、5階程の高さがあるだろう。
この階層の壁は半分ほどが崩れている。
外の風景が良く見える場所だ。
と、不意にテルシアが立ち止まって床の一点をじっと見ている。
「何を見ているんだ?」
「ちょっと待っていて貰えますか」
そう言って、彼女はしゃがみ込んだ。