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フィフスグラウンド戦記外伝 黒死蝶34

翌日。

いつも通りの時間に食堂で朝食を食べている。

メニューはいたってシンプル。

トーストとスープだ。

皇王国軍での朝食に関してはビッフェタイプになっている為、様々な食材が並べられており、中には朝食からステーキを食べる事も出来るのだ。

が、俺はどうも朝食は、と言うより食事に関しては空腹感さえ無ければ良いと考えているので、がっつりと食べる事は無い。

普段と同じメニューがしっくりくるとでも言うのだろうか。

と、言うのに、何故か今日は俺の背後に並んだテルシアがさり気なく自身のトレーの中に野菜サラダが盛られた皿を2つ載せて、席に座るなりそのうちの1つを俺のトーストとスープの間に置いた。

ご丁寧にドレッシングがかかっている。

「何をしているんだ?」

と、聞いてみれば、彼女はいつもの無表情を僅かに緩めて笑みを浮かべながら答える。

「いつも同じメニューで、しかも野菜をちゃんと摂っていない様でしたので、私が気を利かせただけです」

「お前なぁ」

「何ですか?

副隊長たるもの隊長の体調管理を…。

あ、これは洒落とかじゃなく。

体調管理をも気を使う事は重要な任務であると私は考えております」

「いや、それは初めて聞いたんだが。

俺は俺自身。

一応、健康に留意しているし、そもそも俺の健康状態はお前に分か……。」

と、俺が言うのを遮る様に彼女が口を開く。

「何となく、分かるんですよ。

特に飛んでいる時」

何処か得意げな口調。

そう言われるとは思いもせず、俺は反論しようとして諦めた。

こう言う時に何を言っても聞かないだろう。

普段、無表情な彼女は、意外と意固地と言うか頑固な所がある。

と言う事が最近になって分かり始めたのだから。

だからして、妥協点を探る事にしよう。

方針転換は時として重要だ。

「しかし、一つ条件がある」

「何です?」

「野菜を食べるのは明日からと言う事はどうだ?」

「駄目です。

折角、私が持って来たのを無駄にするんですか?」

なるほど、そう来たか。

「初日からこんなに食べれん。

この半分から始めるのはどうだろうか?」

納得いくのか、いかないのか微妙ではあったが、少し考える様子でこちらを見やり、頷く。

「まぁ、仕方が無いでしょうね。

分かりました」

そう言って、彼女はサンドイッチを頬張った。



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