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フィフスグラウンド戦記外伝 黒死蝶30

2時間が過ぎた。

時間は20時。

思い出した様に食堂に向かう。

どうすれば良いのかと悩んで、余裕が無いと言うのにも関わらず空腹感があると言うのは、案外、自分が思っている以上にこの事は簡単な事なのかも知れない。

正直、これまで部隊の仲間や部下の戦死や死亡した事の通達を人任せにしていた。

例えば、副隊長を務めていたバルや、他のライトフライ、テルシアに代役として告げて貰っていたからだ。

無責任だと、俺自身も思う。

小隊が、俺とテルシア、バルとライトフライだけになってからはそう言う事を忘れていた。

忘れられる程に、俺達は卓越した技量と自信を持って幾多の戦闘を生き残って来れた。

それは、大きな間違い、勘違いだったのだ。

ただ、単に運が良かっただけだったのだと、思い知らされたのだった。

もしかすれば、テルシアもそう思っていたのかも知れない。

或は、バルやライトフライでさえもそう思っていたのかも知れない。

様々な後悔が浮かんでくるが、しかし、だからと言って現状が変わる訳では無い。

映画や小説の様にバルやライトフライが実は死んでいなかったとか、若しくは生き返る、と言った事は決して無いのだから。

と、食堂に辿り着く。

いつもの様に食券を買い、パスタを受け取って、一番奥の席に座る。

機械の様に口に食べ物を運んで咀嚼していく。

いつもしている動作と言う物は、何も考えなくても、出来る物らしい。

フォークを持つ指や腕。

口や、顎の筋肉や骨が、その動きを覚えているのだろうか。

いつもなら、既に来ているであろうテルシアはいつまで経っても来なかった。

部屋に居るのだろうか。

食堂を出て、テルシアの部屋に向かう。

無機質な壁と扉が並ぶ。

そこを進んで、彼女の部屋の扉をノックする。

返事は無かった。

もう一度、ノックして呼び掛ける。

やはり返事は無い。

試しに、ドアノブを回してみる。

すると、鍵は掛かっておらず、扉が開いた。

不用心だな、と思った。

しかし、つい先ほどの俺自身の事を考えて人のことは言えないだろう。

と、部屋に一歩入る。

部屋の中は、照明が付いていない。

真っ暗だった。

どうやら、ここには居ないらしい。

ならば何処にいるのだろう。

食堂に入れ違うになったかのだろうか。

いや、しかしここまで直線的に来れるので違うだろう。

だとすればと考える。

会議室、観覧室、休憩室等々艦内の様々な設備を思い浮かべつつ、普段テルシアが行きそうな所と言えば……。

もしかしたら格納庫ではないかと思いつつ、俺は扉を閉めて格納庫へと向かって歩き始めた。



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