フィフスグラウンド戦記外伝 黒死蝶24
と、北の方角に向かう編隊を見付ける。
機体は第4世代ヴューレ零羅。
3機を1小隊にして、それを5個小隊で編隊を組んでいた。
機体のノーズアートは双剣が描かれている。
騎士団の中でも警備を担当している者達だ。
だが、だとしても合計15機とは珍しい。
普段の彼らの任務としては艦内、若しくは艦隊周辺の警備の筈だ。
そして、多くても3機1小隊を3個で編成しているのだが、何かあったのだろうか。
素早く機体を翻し、彼らに追従する形で飛翔する。
そして、近距離通信を送ってみる。
「どうした、何かあったのか?」
「あぁ、敵襲らしい」
先頭を飛翔する男が答える。
「敵襲?こんな近くで、か」
「まぁな。
とは言え、既に戦闘は終わっているようだ。
…どうやら、敵さんが味方の機体をしつこく追って来たらしい」
男は言う。
その口調に何か遠慮している様な違和感を覚えてしまう。
「ヴェルト隊長、悪いが俺達に任せて貰えるか?
あんたは帰還していた方が良い」
俺が黙っていると、付け加える様に言われる。
普段とは違う違和感。
いつも通りの穏やかな空であるのだが、その中に僅かに異質な物が紛れている様な感覚。
「その、座標は、何処なんだ?」
噛みしめる様に問う。
男は答えなかった。
「その、座標は、何処だ?」
もう一度、問いかける。
「なぁ、ヴェルト隊長。
その、なんだ…。」
言葉を詰まらせる男。
と、前方の蒼穹に黒煙が上がっているのが見えた。
一目で戦闘があったのだと感じた。
刹那、機体を一気に加速させる。
先ほどから嫌な予感しかしなかった。
俺は完全に忘れていたのだと思う。
そして、自覚していない所で驕っていたのかも知れない。
俺達は高度な飛翔技術を持っているのだから、墜ちる事は無いと、考えていたのかも知れない。
生き残る為に、多くの戦場を飛んで、その間に多くの事を学んで。
前方に黒煙を上げた機体が見えた。
塗装やパネルが剥がれ落ちて、内部のコードや装置がむき出しになった第4世代ヴューレ煉華の機体が力無く時折、ふら付きながら飛翔している。
恐らく動力部に損傷を受けたのだろう。
ノーズアートは3つの羽。
パイロットが、こちらに向かって手を振る。
普段のその素振りとはかけ離れ、力の無いものだった。
「隊長ー。
あの。
そのー」
言葉を紡ごうとして、しかしそれはなかなか声にはならない様子だった。
「ライトフライ!
大丈夫なのか?」
何とも間抜けな問い掛けだっただろう。
冷静に見れば大丈夫では無い事ぐらい明らかだと言うのに。
「あぁ、えっとー。
はい。
なんとか」
いつもの間延びしたような口調のライトフライだが、声が掠れて聞こえにくい。




