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フィフスグラウンド戦記外伝 黒死蝶21

告白をしたからと言って、自分達の置かれた環境が変わった訳でも無い。

以前の様に黙々と、機体の調整をしてキーボードに数値を入力していく。

と、テルシアと視線が合う。

強いて言うならば、途端に彼女は視線を泳がす回数が大幅に増加した事ぐらいだろうか。

作業をしながらも思う事があった。

これは何の根拠も意味も無い事ではあるにしても考えらずにはいられないのだが、もしも戦場で危機的状況に陥った時、俺は果たして冷静に動く事が出来るだろうか。

全員に言っている事だが、『自分が生き残る事だけを考えろ』と言う事を実行できるのか不安だった。

感情を捨てろ、機械となれ。

と、常に考えている。

それこそが戦場に置いて生存確率を高める公式であると思えるのだ。

「隊長。

お昼ですけれど、どうしますか?」

テルシアはどうだろう。

二人のうち、一方が危機的状況に陥った時、果たして自分の生存を優先させる事が出来るのだろうか。

お互いへの想いが足枷となるのでは無いかと、思ってしまう。

「聞いていますか?」

「あぁ、聞いている」

「どうしたんです?

あ。もしかして浮かれているんですか?

嫌だなぁ、隊長って案外、惚気やすいんですね?」

「惚気てたまるか!

それよりテルシア。

お前はどうするんだ?

いつも通り、なのか?」

「はい。

食堂に行こうと思いますが」

「なら、いつも通りだな」

そう言ってキーボードを仕舞うと、通路を歩いていく。

いつもならテルシアは空戦時と同じ様に右後ろを歩いているのだが、今日は何故か右の真横を歩いて、ちらちらとこちらを見やっている。

そして、黙ったまま、俺のパイロットスーツの袖を摘まんだ。

どうしたものか、と思いつつ彼女を見やる。

「なんですか?」

「なんですか、じゃ無いだろう」

「見ないで下さい、恥ずかしいじゃないですか」

「恥ずかしい事をしているのは誰なんだよ」

「誰なんでしょうかね。

私は分かりません」

そう言うテルシアは何処か嬉しそうに見える。

からかわれているのだろうかと思いつつ。

結局、食堂までそのままの姿勢で歩いていく事になった。



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