フィフスグラウンド戦記外伝 黒死蝶14
と、視界の隅。
雲の隙間に僅かながら光る物が見えた。
即座にモニターに表示されるレーダー範囲を広げるが雲が多いせいで不鮮明に映る。
「見えたか?」
テルシアに問いかける。
「はい。
私には3機ほどに見えました。
恐らく、連邦国軍の物かと」
瞬時に機体を翻した俺の右後方にぴったりと位置付けてテルシアが答える。
それと同時にライトフライからも通信が入ってくる。
「隊長ぉー。
10時の方角が気になります」
恐らく俺と同じものを見たと言う事なのだろう。
「2、3機の編隊の可能性が高いですな」
付け加える様にバルが言う。
「了解。
該当空域を警戒するぞ」
それだけで各々が何を為すべきか分かっている。
ライトフライとバルも編隊を組んで、俺と同じように飛翔していく。
「こちらハレム・テルシア。
周囲を警戒されたし。
繰り返します。
周囲を警戒されたし」
「こちらナロサルス・ケイン。
どういう事だ。
敵か?」
「その可能性が高いです。
至急、対応した方がよろ」
と、テルシアが言い終えるより早く、立て続けに爆発が起こった。
「嘘だろ、トレイク!
くそ!トレイクが堕ちた!」
「こちらノーマッド。
サイト墜落!
繰り返す、サイト墜落!」
声を荒げた味方の通信が次々と入ってくる。
一気に2機が堕ちる。
恐らく機体を撃たれたのだろう。
遠距離からの狙撃か。
或は…。
「敵です!
連邦国軍の機体を確認!!」
「に、逃げろ!」
「何処に行った!
俺達もやられる!」
一気に混乱が広がっていく。
「こちらケイン。
全員、落ち着け!
針路座標354・675に向かって飛べ!」
ケインが必死に言うも、元の編隊が崩れ、我先にと飛んでいく。
新人のパイロットであれば尚更だ。
無理もない。ここが戦場である事を忘れていたのだろう。
いや、そもそも最初からここを戦場であると思わなかったのかも知れない。
ケインでさえそれを自覚していなかったのだろう。
そうでなければせめて、機体のシールドを展開させる様に命じていた筈だ。




