フィフスグラウンド戦記外伝 黒死蝶12
「こちら、ナロサルス・ケイン。
間も無く警戒空域に入る。
各機、一層注意されたし。
なおヴェルト隊は自由飛行へ移行」
今回の任務の責任者であるケインから通信が入る。
警戒空域に侵入時は小隊の配置を5角形から正方形に変更する。
俺のヴェルト隊はここからは自由に飛んでも良い事になっている。
実の所、今回の任務の主な目的としては敵がいないかと言う警戒飛行では無く、新たに配属になった新人パイロットの飛翔訓練であった。
確か今回出撃した者が20名でうち予備戦力として入隊して数日しか経っていない者が9名程だ。
俺達4人を抜くと、16名中半数以上と言う事になる。
戦力的に非常に厳しいだろう。
「了解した。
こちらは自由にさせて貰う。
もう少し周辺を飛翔して良いか?」
「認証する、貴隊の自由に」
一応、許可だけとって機体を旋回させる。
他の小隊が正方形に配置が切り替わる邪魔にならない様に移動しておくのだ。
何も言わずとも、テルシアとライトフライ、バルが追従して来る。
この様に、わざわざ指示を出さずとも動ける事が戦闘中では重要になっているのだ。
「さて、無駄話はそろそろ終わりだ。
ここからは周囲を警戒しつつ飛翔。
敵機を見付け次第、自由戦闘」
「いつも通りですな」
「りょーかーい!
って言うか敵がいるんですかね?
見た所、全然居ない様に思えるんですけれど」
そう言ってライトフライとバルは2機編隊で飛翔していく。
万が一に備えるに越した事は無い。
今回は新人が多い。
俺達の自由飛行が認められているのも、恐らくは警戒を兼ねた物なのだと考える。
ケインはそれを言わないが、その為にわざわざ俺の小隊全員を今回の任務に参加させたのだろう。
「テルシア、いつも通りで頼むぞ」
「了解」
テルシアは戦闘時と同じように、俺の右後方に滑らかに機体を滑らせた。