フィフスグラウンド戦記外伝 黒死蝶11
翌日、4機編隊を組んで出撃となった。
簡単な任務だ。
異常がないか予め決められた空域を飛翔するだけだ。
4機編隊を1つの小隊として、それを5個小隊布陣させ、全20機で編成されている。
何処の方角からでも対応できるように5角形を象って飛んでいる。
「さぁて!
久々の大部隊ですね!」
ライトフライが小隊のみでの通信回線で楽しげに言う。
「あまりはしゃぐなよ。
子供じゃないんだからな」
一応、釘を刺しておく。
今回が初めての任務と言う者が少なからず居たからだ。
常識的にもあまり目立つような行動は慎むべきだと思っている。
「分かっていますよぅ」
と、心から残念そうな声を上げるライトフライ。
「隊長殿。
私め、ライトフライ嬢の面倒を見るのが疲れてきております。
なので、そろそろメンバーチェンジを申請致しますがどうでしょうか?」
バルが紳士的な声色で提案して来る。
第4世代ヴューレ煉華に搭乗している彼は僅かながら肩を下げている様にも見えた。
何か不平不満を言う時の彼の癖でもある。
どうやら本心らしい。
「私もバルさんとのコンビが辛いです!
毎回、格納庫でナンパしているのが超、ウザいんです!
と、言う訳で、テルシアさん!
私とチェンジして下さいよ」
編隊を解き、素早くテルシアの真横に機体を位置付けてライトフライが口を開く。
「…駄目」
と、テルシアはちらりとライトフライを見やった。
その直後、ほぼ即答で反論する。
「えぇーっ!
良いじゃないですかっ!
これでも、私、ストレスで胃に穴が空きそうなんですよ」
途端にまるで子供が駄々をこねる様に両手をぶんぶんと回して始めるライトフライ。
その横のテルシアとバルも恐らく呆れ顔で見ている事だろう。
とは言え、バルとライトフライのコンビネーションは見事な物だ。
恐らくお互い、高水準の飛翔技量を兼ね備えているからなのだろうと思える。
例えば、一方が攻撃を仕掛けている時には、もう一方は周囲を警戒して飛翔する。
それを無言の内に行えるコンビネーションは見事と言えるだろう。
「兎に角、頑張ってくれ。
バルも悪意は無い筈だ」
「善意もありませんよね」
ぼそりとライトフライが言う。
「それとバル。
お前さんももう少し遠慮しろよ。
一応、コンビを組んでいると言う事を忘れない様に」
「勿論ですとも」
あくまで丁寧に答える。
が、恐らく心の中では苦笑を浮かべているに違いない。




