第二章 第三節
「ふーっ…お腹一杯…」食堂に入って数十分、翔太と由依は海鮮丼を食べ終え、駅へと戻ろうとしている。
「時間的に間に合うかな…?」
「微妙かも…」ちょいと心配しつつお金を払って駅へと急ぐ。良かった、まだ列車は停車している。
13:07発函館行き131D普通列車。車輌は函館から乗車した車輌だ。
乗客は二人以外には居ない。
「貸しきり状態か…」
「そうみたいね…」と話していると列車は定刻で発車した。
「ねぇ、翔太君。このあと何処に行くの?」
「う~ん…札幌に戻らないとなぁ…ホテル札幌だし…」
「何か臨時来てないかしら…」
「臨時かぁ…でも団体専用だろうし、乗れないでしょ」
「あっ、そっか…」話しているととある駅を通過した。
「あっ、"天ノ川駅"…」
「天ノ川駅??江差線にこんな駅あったかしら…」
「え~と、天ノ川駅はJRが造った駅じゃなくて、鉄道ファンが造った駅なんだ。だから全部の列車はここは通過するよ」
「へぇ…」
列車は森の中を進んでいく。所々ある橋梁は警笛を鳴らして通過。ヨンマルのエンジンが唸りをあげ加速。翔太と由依は寄り添う形で外を見ていた。すると
「間もなく、木古内です。木古内では全てのドアが開きます。」と、ワンマン放送が流れ14:13。木古内に到着した。
「さて…木古内か…」と、翔太
「由依ちゃん。特急で函館行っちゃうか、そのまま普通列車で函館行くか、どっちが良い?」
「どうして?何かあるの??」
「ん?この普通列車、ここで1時間くらい停車するんだけど、どっちが良いかな…って」今翔太達が乗車している131Dは木古内で59分停車する普通列車なのだ。翔太はどちらでも良かったのだが(笑)、由依は
「う~ん…特急で早めに函館行こう?」と言った。
「なら白鳥だ。特急券は…列車の中で買う…しかないよなぁ…」
二人はそのままホームで特急を待つことにした。
14:20。列車がやって来た。4011M函館行き特急スーパー白鳥11号。編成は789系だけの組成だった。
「バッタ(785系NE-303編成)無しか…」と、翔太。乗車して座席を探す。しかし…
「満席かよ…」自由席は何処も満席だった…
「座るところ無いからデッキで立ってないといけないけど…大丈夫?」 「私は大丈夫だよ」
スーパー白鳥は定刻で発車した。ちなみにデッキには他に数人が立っていた。
「中々の混み具合ねぇ…」と、由依。翔太は
「やっぱり夏休み期間だからかな…」と答えた。
発車して数分経って車掌が廻ってきたので特急券を購入。とりあえず函館へ。
「函館からはどうするの?」
「とりあえずは北斗で札幌かな…」
「札幌にいつ頃着くの??」
「19時ちょいと前くらいかな…」
「晩御飯は?」
「う~ん…まだ決めてないんだけど、車販か札幌駅か…」
「駅弁かぁ…何食べようかな…」と、話していると上磯を通過した。
「あっ、セメント工場だ…」
「大きいね…」
「そうだね…あっ、そう言えばこの工場の引込線が昔あったんだけど、跡地どうなってるんだろ…」
「廃線になったの?」
「うん。確かこの近くで立体交差していたはずなんだけど…」
「へぇ…」
しばらくして七重浜を通過した。函館が近いからか町が少しずつ大きくなってきた。
もうそろそろで函館だ…
「さて、そろそろ函館だから…ん??」翔太は有川桟橋引込線を見ていて何かに気づいた。
「DD51…有川入換に入ってるのか…」なんと原色の凸を見かけたのだ。
有川を過ぎて函館線と合流、五稜郭を通過し五稜郭機関区の横へ。しかし朝見たときと停まっている車輌はあまり変わらなかった。
「間もなく、終着函館です。──」とアナウンスが流れ、14:58。定刻で函館に到着した。
「さて、乗り換えだ」二人は隣に停車しているスーパー北斗の編成に乗り換えた。
5011D札幌行き特急スーパー北斗11号。先頭車は両方とも両方とも量産車だった。
二人は扉の近くに座った。
「さて、あとは札幌に向かうだけ…今日は楽しかったなぁ…」
「私も。初めて二人で旅行に行ったけど楽しいね…」
「明日からも二人きりだけどね…」と、翔太が言った瞬間由依はすこしドキッとした。そりゃあ…恋人同士が二人きりで旅行してるんだもの…(苦笑)
「そ…そう、ね…」
「ん?由依ちゃん??どしたの?」
「何でもないっ!けど…翔太君と二人きりなのが嬉しくて。」
「僕も由依ちゃんと一緒にいれて嬉しい。やっぱりs…」すると「ブィィィーッッ…」と、キハ281のフルスロットルのエンジン音が聴こえてきた。どうやら発車したようだ。
「ん?翔太君??何か言った??」どうやら最後の一言は由依には聴こえていないようだ。
発車して僅か4分。最初の停車駅の五稜郭へ。数人が乗車して発車した。
その時翔太は時刻表を見ていた。
「う~ん…やっぱり山線経由の特急はないか…」すると由依が
「ねぇねぇ翔太君。」と声をかけてきた。
「ん?どうしたの??」
「山線って何?」
「山線…?山線ってね…」と、翔太は説明を始めた。
「山線って言うのはね、長万部から…あっ」
「??」
「今乗ってるスーパー北斗は室蘭本線を通っているんだ。」
「うん。」
「それで、今は函館本線を通っているけど、その函館本線って長万部からは倶知安の方を回って小樽へ行くんだ。」
「え~と…その長万部から倶知安回りで小樽に向かうのがその山線ってやつなの??」
「そ、正解。」
「それじゃ長万部から室蘭までは何線なの?」
「そこも室蘭本線だよ」
「へぇ…」
「だからスーパー北斗とか普通の北斗は函館本線→千歳線→室蘭本線→函館本線って3路線を渡って函館に行ってるんだ。」と、説明を終えると通路の方から
「いやぁ…凄い物知りだねぇ…」と声が。翔太が振り向くと
「あ、きっぷを拝見します」声の主は車掌さんだった。
「君はとてつもない物知りだなぁ…鉄道ファンなのかい?」
「はい、そうです。」
「ハハハ、なら隣に座っている彼女さんは?」と、車掌は由依に話を振った。由依は
「フェッ!?あ、あぁ…私は今勉強してますっ」と、急にハッとした顔をして
「あの…白鳥 和幸…って、知ってます?」と車掌に質問した。
「白鳥…??あぁ、あの天才運転士??」
「て、天才…?」と、由依。確かに苗穂に行ったときは凄かったよなぁ… と、翔太は心の中で思い出す。
「そ。天才運転士。で、あなたはその白鳥さんの娘さんなの?」
「はいっ…お父さん…白鳥 和幸の…娘です。」
「貴女が…白鳥さんの娘さん…なんか性格似てると思ったよ…」と、車掌。すると思い出すように
「あっ、きっぷ拝見するの忘れてた…」と言った。
「どうぞ。」と二人は車掌にきっぷを見せた。車掌は二人のきっぷにハンコを押してさらに…
「二人に珍しいスタンプあげる。」と言って白い紙に国鉄時代に使用していたハンコを押して二人に渡した。
「うわぁ…ありがとうございます!!」と翔太。車掌も
「珍しいでしょ?これ」と得意気に話していた。
「国鉄…何で民営化したんだろ…」と、由依。車掌と翔太はちょこっと顔を見合わせて…
「国鉄、って言うのはね…」と説明を始めた。
まず翔太が「国鉄って言うのはね、日本国有鉄道って言って、ほら─」とヨンマルの扇風機の写真を見せた。
「写真の扇風機にJNRってあるでしょ?これが国鉄ロゴ。英語で言うと"Japan National Railway"だからJNRにしたんだ。」
そして車掌が
「民営化したのはね、国のお金がなくなってもう国では面倒見切れないよ…ってなって民営化したんだ。確か…昭和60年位だったかな…」
「へぇ…」と由依。翔太は
「所で、国鉄からJRに引き継いだ車輌ってどんなのがあったんですか?」車掌は
「え~と…まず711系でしょ、781系、DD14、キハ53、キハ22、キハ56、ヨンマルもそうだし、キハ183も国鉄車だし…あとは…」と、悩み始める車掌。その時、翔太は
「あっ!キハ80系もそうでしたよね…」と言った。
「あぁ…そうだ、なんで出てこなかったんだろ…ボク乗務したことあったのに…」
由依は「ベテランなんですね…」と言うと
「うん、あと何年かでボクも定年なんだ…」と車掌は少し悲しそうに言った。
「キハ82は元々本州の車輌でなぁ…さすがにトプナンには乗務できなかったけど何回かお世話になったなぁ…」
「でもやっぱりキハ183とは違いますよね…」と翔太。
「そうだね…でもスラント車とか坊主は見てるだけで国鉄時代に戻った気分になるよ…」と、話していると由依が
「車掌さん車掌さん!もう少しで大沼公園に着いちゃいますよ!!」確かに時計を見ると定刻5分前だった。車掌は
「あっ!ヤバっ!!」と慌て始めた。
「乗務、頑張ってくださいね!!」と翔太が言うと車掌は
「君たちも良い旅を!!」と残して隣の車輌へと向かっていった。
* * *
「ちょっとトイレしてくるね」と翔太が席を立った。由依はすぐさまスマホを取りだし誰かに連絡を取り始めた。
「ふふっ…皆居たら翔太君ビックリするかなぁ…」由依の陰謀も翔太との恋人生活と同じく、始まったばかりだった…
第二章 第四節へ続く。
と言うわけで半年振りです。711系です。
長い長ーいテストが終わりました()嘘です。もう冬休みになってます(しろめ)
6月から半年に渡り更新できなかった理由としてはやっぱり就職試験が近くて更新する時間が無かったのが一番の理由です…。
対策をしっかりと行った結果、無事に第一志望である会社に入社内定を頂きました!!
今日のこの更新のあとは今度は自動車学校に通い始めるのでまた小説の執筆・うp(最近全く執筆してないけど)が出来なくなってしまいます…
さらに4月からは社会人となり、まともに更新できません…。ですがぼちぼちと更新していきます。
それでは次の更新まで( ゜∀゜)ノシ