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ラーベラムの世界  作者: エディ
2/21

プロローグ2

前書き


スイッチ入った~(ただしグロシーンがあるので注意)



以上

 森というほど木々が密集していない。だが、林というほど木が少ないわけでもない。

 そんな木々が立ち並ぶ場所を通る一本の道があった。一応の人通りがあるらしく、道はしっかりと踏み固められ、歩くぶんには問題のない硬さをしている。といっても舗装がされていないただの土だから、雨が降ろうものなら瞬く間にぬかるんでしまうだろう。

 まさに田舎道という言葉がしっくりくる。

 そんな道を二人の人間が歩いていた。

 一人は田舎道にひどく不似合いな長い金髪の男。髪を伸び放題にして、腰のあたりにまで伸びている。とはいえ全く手入れをしていないわけでなく、金色の髪はまっすぐに延びるていて、太陽の光を受けると神秘的な光を反射させている。

 まるで輝くような黄金の髪は、神々しさすら感じさせ、その顔にある黄金の瞳も印象的だ。非常に長身で、何やら気品を漂わせる風格すらある。

 だぶつきのある白いシャツを適当に着て、はいている茶のズボンも特に質のいいものとは見えない。だが、この男が身に纏うだけで、それは都市部でも通用しそうな洒落た身だしなみに見てるほどだった。

 一方その隣を歩くのは、黒髪黒目の少年だった。身長から見て歳は十歳くらいだろう。黒い髪はまるで光のない漆黒の闇夜のような深い色をしていて、黒い瞳には深い色を宿している。しかしその黒さとは対照的に、肌は驚くほど白く、繊細さを持っている。病的な白さではなかった。だが、生きているものの感じを与えない。まるで彫刻に用いられる大理石か陶磁器のような鉱物質の白い美しさを思わせた。

 歳故に顔だちはまだ幼い子供のものであるが、それでも恐ろしく綺麗な少年だ。

 そんな姿の少年は、黒一色の服装をまとっている。ロングコートを思わせる長い上着に、黒のズボン。彼の漆黒の髪に溶け込んでしまいそうな色をしている。そして少年の身長にはひどく不似合いな剣を腰に吊るしていた。剣の長さに対して、少年が小さいために、剣の鞘は、地面の上でズルズルと引きずられている。

 そのせいで少年の歩く足取りはおぼつかない。

「……」

 いい加減、そんな状態で歩くことに諦めがついたのだろう。少年は腰に吊るしていた剣を鞘ごと抜き取り、手に持って歩くことにした。そうしないと、いつまでたっても鞘が地面に触れていて歩きにくい。

 そんな少年の様子を、傍にいる金髪の男は口の端をかすかに歪めて笑う。表場が変化しただけで、それまでの神秘的な雰囲気が消し飛び、何やら軽薄なオーラが漂う。

「うるさい!」

「僕は何も言ってないよ」

「何を考えてるかは分かる」

 漆黒の少年クラウの不機嫌な声に、クククと笑う金髪軽薄男の男。

「だいたいお前、あれがなにかも知ってるだろう」

 そう言い、不機嫌に少年は空に浮かぶ太陽。そしてその上下にある塔を示す。

「さあ、僕にだって知らないことはいくらだってある。あんなもの正体なんて知るわけないだろう……っていえば信じてくれるかな?」

「……要は、知っていても言う気がないってことだな」

「本当に知らないだけかもしれないけどね」

 はぐらかす軽薄男に、少年クラウはそれ以上問い詰めることはやめた。

 こいつは出会った時からこういう奴だ。

 そう思い、これ以上この軽薄男との無駄な会話をすることをやめた。

 ただ、その後も二人は道沿いに黙々と歩き続けた。特に目的地があるわけではなかったが、道があるならいずれはどこかにたどり着くことだろう。

 奇妙な塔を従えた太陽だが、それでも時間の経過とともに角度が変わっている。ならば、いずれ夜が来るのだろう。それまでに人里でも廃村でもいいから、何か雨露をしのげる建物ぐらいは見つけておきたかった。

 でなければ、野宿をするしかない。


 それからどれくらい歩いただろう。

 青い太陽が中天に差し掛かるころになって、少女の悲鳴が聞こえた。

 「逃げろ」という差し迫った声に、何やら獰猛な獣の鳴き声が続いて、木々のきしむ音が続く。

「おやおや」

 明らかに緊迫した状況が近くで起こっているが、軽薄男は呆れた声を出していた。ただし、呆れたのは緊迫した状況にではない。男の傍にいたクラウが悲鳴を聞きつけた途端、駈け出して行ったのだ。走る少年の姿を見ながら、軽薄男は肩をすくめた。

「君って子は……」

 うっすらと口の端を歪める顔には、冷たい笑いが浮かんでいた。

 そんな軽薄男の姿に気づくことなく、悲鳴が聞こえた瞬間に駈け出していたクラウ。

 それから続く「逃げろ」という叫びに、獣たちの声。

 林の中を複数の気配が蠢いているのを感じつつ駆けた。

 それから犬というより、狼に近い獣の唸る声がいくつも聞こえてくる。

 そして林の視界が開けた先で、小型の狼の群れと、それに追われる二人の子供の姿があった。


「アイリス、早く逃げるんだ」

 二人の子供。そのうちの一人は青い髪と瞳の少年。クラウとさして身長の変わらない背丈をしている。ダガーを片手に持ち、それで傍に迫ってきた小型の狼に向けてダガーを繰り出した。その一撃を回避するために狼は後ろに跳び退る。

「ダ、ダメ、カミュ兄ィ」

 カミュと呼ばれた少年の背後には、庇われるようにしてアイリスと呼ばれた少女がいた。だがこの状況のせいだろう、両膝を地面についてしまっている。恐怖からか、その場から身動きが取れないらしく、ただ眼前に群がる狼たちの群れを見て、顔に恐怖と涙を湛えていた。

「アイリス!」

 少年が叱りつけるように叫ぶが、アイリスと呼ばれた少女は全身を震わせて動けない。その姿を見て取り、カミュと呼ばれた少年が意を決して、ダガーを構える。狼たちの群れに油断なく視線を飛ばし、背後の少女を守るように立ち塞がる。

「カ、カミュ兄」

「大丈夫。僕が絶対に守って見せるから」

 背後にいる少女にそれだけを言い、カミュは迫ってきた狼の一体に突きを放つ。その一撃は飛びかかってきた狼の口を見事に貫き、ダガーはそのまま狼の口から脳へと一直線に貫通する。

 狼は即死だった。

 だが、狼の突進の重さが消えたわけではない。そのまま突進してきた狼の体を少年はまともに受けてしまい、その重さに耐えきれずに後ろに倒れこむ。

 倒れたところに、死んだ狼の体が覆いかぶさるようにのしかかった。

 その光景に、少女が再び悲鳴を上げる。

 それでも反応が早かった。倒れた狼の体をすぐさま払いのけ、少年はすばやく立ち上がる。だが、ダガーは殺した狼の頭に深く食い込み、それを少年の力では今すぐ引き抜くことができない。

 武器を失い、カミュと呼ばれた少年は丸腰になっていた。

 それでもカミュは諦めまいと、この状況の中で狼たちと少女の間に立ち塞がった。

 とはいえ、少年の勇気など、もはやなんの役にも立たない。

 それでも必死に、カミュは狼たちを睨み付け、諦めたくはなかった。


 そんな状況の中、先ほどの悲鳴を聞きつけたクラウがやってきた。

「よっ」

 手にしていた剣を鞘から抜き放つ。体の大きさと剣の長さがあまりにも不釣り合いなため、片手で剣の塚を握り、もう片方の手で鞘を投げ捨てるようにして剣を抜き放つ。短い草の茂った地面に鞘が音も立てずに転がる。鞘から抜き放たれた剣は、彼の身にまとう衣装と同じく漆黒の黒。しかしそれは、まるで太陽の光すら飲み込んでしまいそうな、底の見えない色をしていた。

 剣を抜き放つと同時に、クラウは傍にいた狼を二、三匹まとめて横一閃の一撃で仕留める。刃が通過した狼の頭部が上下に切断され、そこから赤い血と肉と脳漿がぶちまけられ、即座に死体と化す。

「おっとっ、とっ」

 一閃した剣の重さに堪えきれず、剣に振り回されてクラウの体がバランスを崩しそうになる。だからあえて剣を握り続けることに執着しなかった。クラウは剣を手から離す。

 手から零れ落ちた刃は、そのまま空中を飛び、落下地点にいた不運な狼の体を貫通する。刃は狼の体をまるでものともせず体を貫いたまま、剣は地面へと突き立った。

 この闖入者の登場に、その場にいた狼すべてが動揺した。

「よう、無事か、少年少女?」

 そんな情況の中、クラウは片手をあげて平然とした声で尋ねた。

 突如現れ、狼を数体倒した黒色の少年クラウに対して、カミュと呼ばれた少年も反応が遅れた。それでもクラウの顔を見て頷いた。もっともアイリスに至っては、恐怖から抜け出せず、クラウのことは見えていない。

「それは結構。とりあえず、こいつらを追っ払えばいいよな」

 気軽く請け負うクラウ。しかし、

「武器が……」

 この場に現れた少年は自分とさして変わらない歳だとカミュにもわかる。そしてその少年の手には、すでに剣が握られていないのだ。こんな状況で一体どうやって、狼の相手をするのか。それに、例え武器があっても、この数の狼を相手にできるはずがない。

 だが、そんなカミュの心配などクラウは気にしていなかった。

 突然の闖入者の登場に狼たちも一瞬動揺したが、すぐさまクラウの周囲を包囲して、獰猛な声をあげる。

 まず最初の一匹が、丸腰のクラウに飛びかかった。だが、クラウが腕を一閃。肘鉄をくらって狼がその場から吹き飛ばされる。

 仲間の一体があっけなく吹き飛ばされたことに、これはただ者でないと狼たちも感じ取ったのだろう。次に狼たちは一斉にクラウに向けて襲い掛かった。

「逃げるんだ!」

 カミュは叫んだ。

 だが、その叫び声がする中で、クラウは襲い掛かる狼たちの相手をした。

 肘鉄をかまし、襲い掛かってきた狼の顔面に拳をたたきつける。

 拳で迫ってきた狼を吹き飛ばしたが、反動を受けて子供のクラウも後ろから地面へと倒れされる。

「たくっ、この体だと力が入らないな」

 悪態をつき地面に倒れこむクラウだが、咄嗟に体を丸くして反動を殺す。そして地面に両手をつき、勢いを利用しつつバク転の要領で跳ね起きる。

 倒れた時ちょうど傍に投げ捨てていた鞘があったので、それを手にしっかりと握りながらだ。

 そして跳ね起きた先にいた狼の顔面を足で踏みつけ、ついでに二、三匹と足蹴りの一撃をお見舞いする。

 狼を戦闘不能にしつつ、数を頼りにしてさらに迫ってくる狼たち。相変わらず口を獰猛に開いて襲い掛かってくるものだから、そのうちの一体の口に、先ほど手にした鞘の先をねじ込む。鞘で口を突かれた狼が悲鳴を上げて地面に転がった。

「こっちの方が剣より軽くて扱いやすいな。ただ威力がない」

 そんなことを呟きながら、さらに迫ってくる狼の眼球めがけて鞘の先端で突く。鞘はそのまま目を抉り、その奥にある狼の脳を直撃する。

 しかしクラウのスキをついて、別の狼が背後からとびかかった。だが、後ろを見たわけでもないのに、クラウは飛びかかってきた狼のことに気づいていた。姿勢をわずからずらして狼の突進を避けながら、空中を飛ぶ狼の前足を手で掴む。そのまま腕を思い切り引っ張り、狼を地面に向けてたたきつけた。叩きつけた先には別の狼がいたため、その狼は仲間の体に叩きつけられる形となって悲鳴を上げた。

 その後、鞘と自らの肉体だけでクラウは狼たちと次々に対峙し、さらには戦い場所を移動しながら、地面に突き刺さったままの剣を再び引き抜いて狼の体を両断していった。

 辺りに血の飛沫が尽きることなく飛び散り、肉片と化した狼の体が次々に転がっていく。

 まるで、悪魔がこの場にいるようだった。

 威勢のよかった狼たちは、自らの仲間が次々に殺戮されていく様に圧倒され、初めにいた数の半分以上が、瞬く間に戦闘不能にされ、そのうちの多くは物言わぬ骸と化してしまった。ついには戦意をくじかれ、狼たちは尻尾を巻いて退散していった。

 この残酷な殺戮劇の光景を、カミュはただ黙って見ているだけだった。それでも、その視線は一度としてこの殺戮の場から離れることがなかった。

「まあ、こんなもんか」

 狼たちが退くのを確認した後、クラウは緊張感なく言った。自らの獲物である漆黒の剣を戦いの中で手にし、その後は都合によって何度か放り投げたり、拾ったりしていた。そんなぞんざい扱いをしていたものだから、戦いが終わった時には、漆黒の剣は地面に転がっていた。

 地面に転がっていた剣の柄を握り、それからそれをくるりと1回転させて鞘に納めようとする。

「おわっ!」

 だが少年のクラウの体に対して、剣の大きさはアンバランスなのだ。剣の重量と長さのせいで重心が狂ってしまい、回転させようとした剣が地面をはねて空中に舞い上がる。クルクルと空中で2、3度回転した後、剣はカミュとアイリスのいる傍の地面に突き刺さった。

 近くに剣が突き刺さったが、カミュには身動きもできなかった。

 目の前の光景に圧倒されていたというのもあるし、命の危険に立たされていたので冷静でもなかった。

 ただ、突き立った剣を見て、素直にそれがすごいものだと思った。そして、その剣を持ち主に返そうと、剣を握ろうとした。

「触るな!」

 だが、カミュが剣に触れるよりも早く、クラウの鋭い声がした。

 自分と歳の変わらない少年だと思った。なのに、その声にはカミュを心の底から怯えさせるほど圧倒的なものがあった。

 思わず身動きできなくなったカミュ。そのカミュを無視して、クラウは剣の傍まで歩いてくると、無言で剣を引き抜いて鞘へと戻した。

 剣を鞘に戻した後、クラウはカミュたちに向き直った。

「とりあえず、無事だな?」

 と確認する。

「はい。あの、ありがとうございます。助かりました」

 と、答えるカミュ。

「彼女は?」

 カミュの背後にいたアリシアのことだ。忘れてはいないはずなのに、あの戦いの光景で失念していた。カミュは自分が守ろうとしていた少女アイリスを振り向いた。するとアイリスは、この殺戮があった場所から体ごと視線をそむけてガクガクと震えていた。

 人間ではないとは言え、辺り一帯に転がる獣の死骸。それもまっとうではない殺され方をしたものたちの末路が、そこには転がりまくっていた。、

 この光景は幼い少女にはあまりにもむごすぎる光景だった。

 そして、そのことを思い出した瞬間、今までの戦いの光景に我を忘れていたカミュもアイリスと同じ思いに満たされた。

 全身がこわばり、喉元にこみあげるものを感じた。

 我慢できずに、カミュは胃の中のものを吐き出した。


あとがきという名の反省会


 この小説を書いてる最中に、何度も思っていたんです。

 私の実力はもはや枯れ果ててしまったのだ。

 若いころの熱意などない。

 そう思っていました。






 ……あ、スイッチ入った(oεo)~~~






 戦闘シーンを書き出したら、自分の中のウジウジした思いなんて木っ端微塵に吹き飛んで……ヘプシッ

 オッといけない、ついつい木っ端微塵になったほこりを吸ってくしゃみが出てしまいました~


 とりあえず、気が付けばノリノリになって書いてました。

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