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追憶のノスタルジア  作者: 壮佳
第二晶
7/18

──────


「君、猫かぶってるでしょ。バレバレなんだけど」



スッと細目られる二つの瞳。放たれる眼光は、触れたら怪我をしてしまいそうなほどに鋭い。




「何か、色々企んでたりして」




いきなり核心をついてきた蓮。だが、ここでボロを出すわけにもいかず、燐慟もほんの少しだけ反撃に出る。




「猫をかぶる? そんな必要がどこに──」


「いやいや、ありまくりでしょ。何せここは、神咲直轄の超エリート学園。神咲の息のかかった者しかいないんだから」




あいも変わらぬ人当たりの良さそうな笑顔を貼り付けて、蓮は言う。




「言うなれば、君は敵陣にたった一人で迷い込んだ野良犬、ってとこかな?」




子供騙しの嘘などではない。彼は──神咲 蓮は完全に確信している。

これ以上何を言っても、無駄だと判断した燐慟は、長く尾を引く白いため息を吐き出すと、眉根にシワを寄せて窓の外に目をやった。




「お前、めんどくせェな」




すると、途端に目を輝かせた蓮。




「お、敬語やめてくれるんだ」




声を弾ませて、蓮がこちらを見る。やはり、ニコニコと楽しそうに笑っていた。




「うるさい。俺は、めんどくさいヤツ大嫌いなんだよ」


「えぇー、めんどくさいヤツって僕?」


「お前以外にいないだろ」




すると、蓮はまたくすくすと笑い声を洩らす。




「それじゃあ、明日からの実力試験でも本気見せてくれるよね」




リリアラド学園の初めての行事、実力試験。


学年ごとに、それぞれ割り振られた組み合わせ通りに、トーナメント式で戦い、実力を図るというもの。

審判が下した判定は絶対で、相手を殺してしまった場合は、減点となる。

つまり、合法的に人を殺せる、完全なる違法地帯となっている。




「ただ、時雨(しぐれ)もいるからなぁ。本気でいかないと死んじゃうかもよ?」



「──ッ!!?」



『時雨』


その一言を聞いた瞬間、自分の身体が反応してしまったのが判った。




「ははっ、何それ、隠そうとしてるつもり?」


「…………」




鋭く目を光らせた蓮に、これ以上探りを入れられないように、なんとか平静を装う燐慟。




「気になるでしょ? "なぜ彼女が生きているのか"」




黙り込んだ燐慟に、さらに蓮は言葉を重ねる。




「教えてあげてもいいよ、彼女のこと」




横目で確認できた蓮の瞳に浮かぶのは、兎を狩る獣のそれ。



ぞわり、と。




背筋に悪寒が走る。

何か、嫌な予感がする。

そして、蓮の唇が動いた。




「──ただし、トーナメント戦で僕に勝ったらね」



普通の女子がそれを見たならば、頬を赤らめて顔を逸らすであろうその笑顔が。

獲物を追い詰めた猛獣のようなその双眸が、燐慟を捉えていた。



「無理に決まってるだろ。俺は榊なんだぞ」



「ふぅん………」




スッと細められた碧眼が、燐慟を見る。

ピリピリとした沈黙が、両者の間に腰を落ち着かせる。




「ま、いいけどね。それはそうと、時雨、入学式で新入生代表あいさつをするらしいよ。首席だったらしいからさ──」




そんな蓮の言葉が燐慟の鼓膜を叩くも、すでにこのとき、蓮の声は燐慟には届いていなかった。


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