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追憶のノスタルジア  作者: 壮佳
第二晶
12/18

討伐

街の上に黄を交えて、澄みとおった春の空が開けている。



「燐慟様、こちらです」



プロペラの回転音が、その空に吸い込まれていく。


速度を重視したために小型となったそのヘリに乗り込むと、途端に身体を浮遊感が襲う。




「目標までは?」


「三分ほどで着きます」


「判った」




まぶたを眼球に覆い被せ、余計な思考を払いのける。


走馬灯のようにさまざまな光景が、体の奥を熱い風とともに突き抜けていく。




──誰も傷つけさせはしない




ガルゼレスのせいで、どれだけの人が傷ついたかもしれない。


すでに悲しみに呑み込まれてしまっているかもしれない。


誰かが悲しむのを見たくない。


なにより、あんな思いをするのは自分だけで十分だ、と。そう自分に言い聞かせる。



「燐慟様、まもなく到着です」



ゆっくりと、まぶたを持ち上げる。

飛び込んできたのは、橙一色の空。



痛いほどに光が突き刺さり、瞳孔の収縮が急速に進む。




ようやく慣れてきた視界の眼下には、一体のガルゼレス。


体長三メートルほどで、全身はくすんだ茶の剛毛に覆われている。


街を見回すその目は恐ろしいほどつり上がり、絶えず口の端からは涎が溢れており、冷たいアスファルトを濡らす。


すでに住民の退去は済んでいるらしく、誰もいない街を、水の上を漂うように彷徨(さまよ)い歩いている。




「猿か、厄介だな」




見た目が進化しているだけでなく、知能も発達しているのだ。



俊敏性も兼ね備えており、容易な相手ではない。



──普通の人間にとっての話だが





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