第二章 彼女の過去
僕らは家の事から最近あった事まで、幅広く話した。
僕らは時間も忘れて話した。
美玲ちゃんの話は…悲しくて、現実味を帯びていなかった。
信じ難い様な内容だったのだ。
まるで、漫画の様な…
彼女の家は父子家庭で、お父さんと美玲ちゃんと弟さんで暮らしていたらしい。
皆さんはお気付きだろう。
僕は今、「暮らして"いた"」と話した。
そう。今は暮らしていないのだ。
その原因は、お父さんにあると言う。
美玲ちゃんのお母さんは、弟さんが生まれてすぐ亡くなったらしい。
その為、男手一つで育てて来たのだ。
働きながら家事をこなす毎日。
それに苛立ちを感じてか、毎日お酒を飲む様になっていったという。
その量は日に日に増えて行き、酔って歩けなくなる程飲む様になったらしい。
お父さんは、酔う度に美玲ちゃんや弟さんに暴力をふるった。
その暴力も、お酒の量に比例して激しさを増していった。
その標的になるのは、弟さんが多かったと言う。
本気で殺されると思った事もある程らしく、その暴力から弟さんを遠ざける為に、美玲ちゃんは学校へ行かずバイトをしているのだと言う。
美玲ちゃんは、バイトで貯めたお金で弟さんを別のマンションへ引っ越させたらしい。
嘘みたいな話だった。
僕の17年の人生は、絵に描いた様な平凡さで良くも悪くも無かった。
だから、美玲ちゃんの話は信じ難かった。
美玲ちゃんが嘘を吐いてるとか、そういう事では無く、ただ信じられなかったのだ。
事件とは無縁の生活を送る僕には…