file2:疑問と決意、そして…
パトカーの運転は田淵が担当し、助手席には権田原が座っている。
法定速度をきちんと守って走る田淵に、権田原が少しいらついたように人差し指で足をとんとんと叩いた。かといって乗っている車が車なのでもっとスピードを出せとも言えない。
左肘を器用にドアへとつき、頬杖をつく。
ゆっくりと流れていく町並みをぼんやり眺めていると、横から田淵がポツリと呟いていた。
「それにしても……」
権田原の視線が田淵へと移る。それを確認してから田淵は話を続けた。
「なぜ彼らは盗みを働くのでしょうか。盗んだものを返すところから考えても、品物自体が目的とは考えにくい」
「あのガキどもは警察をおちょくってんだよ! それ以外になにが考えられる!」
声を荒げる権田原に怯えつつ、恐る恐る田淵が意見を述べる。
「それなら直接予告状を警察へと届けるはずです。ですが持ち主にだけ予告状を送る。なにか意味がありそうな気がして……」
ドスンと打ちつけられた権田原の右手よって、田淵の声がピタリと止まる。
「あのガキどもがなにを考えて盗みを働くかなど知ったことか!」
「ですが……」
「いいか? 肝心なのは奴らを捕まえること、そしてさっさと特防少年院へとぶち込むことだ! そうすれば奴らの考えてることも分かるし、住人たちも目を覚ますに決まっている!」
権田原は不機嫌に怒鳴り散らすと、押し黙ってしまった。
権田原にそこまで言われては田淵も言い返せなかった。
警察はN.F.Sを捕まえなければならない。そしてその役目をかせられたのが権田原と田淵なのだ。
心身ともに引き締めた田淵は、ハンドルを強く握りしめる。
だが、署内に戻った二人を待ちかまえていた署長は、そんな田淵の決意を無に返すものだった。
いろいろな大会で手に入れたであろうトロフィーや、歴代の署長の写真が飾られている署長室。窓際に位置する椅子に座って、宮部署長は渋い表情を浮かべていた。
「おれたちをN.F.S担当から外す!?」
部屋の中に権田原の怒声がこだまする。
宮部署長は一度咳払いをしてから、変わらぬ落ち着いた口調で述べた。
「正確には現場から退いてもらうということだ。聞き込みなどの捜査は続行してもらう」
「ようするに使いっぱしりってことでしょうが」
権田原の言い分に、宮部署長は肯定も否定もしなかった。
「相手は間違いなく能力者だ」
「そんなことは分かっています! だいたい、いま分かったことではないでしょうが!」
「少しようすをみてただけだ。その結果、こちらも能力者でないと分が悪いと判断しただけのことだ」
「どういうことですか?」
署長が答える前に、二人の背後からノックの音が聞こえた。