file:18帰宅後
家の中に入った春人たち三人は、権田原がついてきてないことを確認してから鍵をかけた。
三人の口から、同時にため息が漏れる。
「ふぅ、心臓に悪いなあ」
「まったくです。もう少しシャキッとしたらどうですか? アスク」
「んなこと言ったってなぁ、ゴリさんの勘がするどくなってたんだから仕方ないだろ?」
春人と深冬、そしてなぜかアスクと呼ばれている義朝がもめあっていると、部屋の奥から人影が現れた。
「なんだ、なにかあったのか?」
声の主は義朝だった。そして目の前にいる自分に対し、顔をしかめる。
「早く解除しろよ。いやな気分だ」
「へいへい」
春人と深冬の間にいる義朝が、指に巻かれていた黒い糸――正確には髪の毛だ――を外す。すると義朝はあっという間にアスクへと姿を変えていた。
「なんだか不安になってきたなぁ」
「まったくです。もし失敗したとしたら、原因はアスクの可能性が高いですね」
「あのなあ……」
うなずく二人に、不満そうなアスク。
「まっ、どっちにしろ今回の作戦にはアスクの能力が必須だからね」
「頼りにしてるですよ、アスク」
からかい半分な口調で、深冬がアスクの肩を叩く。その手をはじき、アスクはそっぽを向いてしまった。
「むくれたですか? 子どもみたいですね」
「小学生のガキンチョにゃ、言われたかないぜ」
「やるですか、アスク!?」
「望むところだぜ!」
飛びかかっていくアスクに、深冬は手をかざした。すると手にふれたわけではないにも関わらず、アスクの体はいっこうに近づかない。
「きたねえぞ、リア!」
「何とでも言うがいいです」
「本当に大丈夫なのか、こいつら……」
「大丈夫だよ。アスクだってやるときはやるんだし、リアだって本気で心配なんかしてないよ」
深冬への実力行使が無駄と分かり、醜い言い争いへと形を変えたアスクを前に、義朝は頭が痛くなっていた。