表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/18

file:15作戦会議(N.F.S側)

ナンバーズへと帰った春人――ケイに、義朝とN.F.Sの三人が駆け寄る。

「ただいま」

「どうやら釈放されたようだな」

照れ笑いをしながら頭を掻くケイに、何者かがガバッと抱きついてきていた。

「心配したんだぞ、このバカケイが!」

声をあらげるフィンの頭を、軽く撫でる。

「わるかったなフィン、まさか声で判断されるとは思わなかったんだ」

「あの時、あの女は……わたしたちの声を聞きたかったんだな……」

ケイから体を離しつつぼやく。ケイは一度頷いてから自分の意見を述べた。

「あの面会は、声を聞きたいがために開かれたものだったんだ。質問などする必要なんてない。名乗らせればそれで事足りる」

フィンが黙って頷くと、後ろにいたリアが一歩前へと進んできた。

「話はだいたいフィンから聞きました。全員で行かなくてよかったようですね」

「まったくだ。俺の能力の天敵だな」

自嘲気味に笑うアスク。頷きつつもケイは話を続けた。

「裏の部屋はおじさんが?」

義朝が素早く相づちを打つ。

「緊急事態だったからな。一応移動しておいたんだ」

「おかげで俺の家はぐちゃぐちゃだけどな」

ため息混じりに嘆きつつ、アスクが肩を落とす。どうやら部屋の有様は相当ひどいらしい。

「で、これからどうするんだ? ほとぼりが冷めるまで大人しくしとくという手もあるが……」

フィンの申し出にいち早く首を振ったのは、腕を組んで考え込んでいたリアだった。

「わたしは反対です。そんなことをすれば、春人がケイだと認めているようなものですよ、フィン」

「ああ、リアの言うとおりだ。というわけで、次の予告状は明日送る」

「なんだって!?」

「マジか?」

「本気ですか、ケイ!」

三者三様の叫びがナンバーズ内にこだまする。義朝は黙って成り行きを見守るだけだ。

「ケイ、それはそれで怪しいですよ! 容疑を晴らすためだけに、焦っていると思われるです!」

「わかってるさ。だからといって日数が過ぎれば、準備をされる恐れがある。明日予告状を叩きつけ、明後日の日曜日に決行だ」

「ですが!」

あくまで引こうとしないリア。もちろん、他の二人もケイが焦っているとしか思えなかった。

だが、すでにケイの頭の中にはシナリオが書きあがっていたのだ。

「みんな、耳を貸してくれ。詳細はこうだ」

四人が顔を寄せあい、ひそひそと語り合う。話が進むにつれて、三人の顔色がよくなってきていた。

「どうだリア? いけそうだろ?」

「いいですね、ケイ。やってみる価値はありそうです」

「だけど、それには三村のおっさんの力が……」

慌ててケイがアスクの口をふさいだ。むぐむぐと口を動かすアスクをそのままに、義朝へと愛想笑いを浮かべる。

「言っておくがな春人、おれはもう手伝わんぞ」

「そ、そんなあ!」

懇願するケイから顔を逸らして、バーの片づけをはじめた。

「お願いだって、おじさん! あと一回でいいから!」

「ほう、一回でいいのか?」

「えっ?」

そう言われ、ケイはわずかに動揺していた。

手伝ってくれるに越したことはないが、言い方に裏が含まれているのは明らかだった。

「どういうことです?」

代表でリアが尋ねると、店のカーテンを閉めながら答えてきた。

「簡単なことだ。警察も無能じゃなけりゃ、この店や春人からマークをはずしたりしない」

「ってことは……やっぱりどういうことだ?」

首を傾げて考え込むフィンの隣で、アスクがプッと吹き出す。

「つまり、いますでに監視されてる可能性があるってこった。そんな中、おれたちが平然と店の外に出てみろ。めでたくおれたちも容疑者の仲間入りってわけだ。わかったかい? フィンお嬢様」

「……ケンカ売ってんのか?」

フィンの中指に力が込められる。慌てて――といっても笑いながら、アスクは店の裏へと逃げていった。すかさずフィンも後を追う。

「もう一度聞くぞ、春人。一回でいいのか?」

二人の喧噪に呆れつつも、ケイへと改めて問う。

「に、二回手伝ってください……」

ボソボソと述べるケイ。それでもわざわざ尋ねてくるのは、手伝ってくれる気があるからでは……という淡い期待が膨らんでいた。だが……、

「断る」

「おじさぁん!」

「おれは最初に反対したはずだぞ。それをお前がどうしてもというから、お前たちの行動を黙認することにしたんだ。その時に言ったはずだぞ? 黙ってはいるが手伝いはしないとな」

「それは、そうだけどさ! かわいい孫が捕まってもいいの?」

わざとらしく目を潤ませていると、リアがケイに続いていた。

「義朝さん。わたしのせいでケイがこんなことになったです。わたしがわがままを言わなかったら、N.F.Sすら存在してないんです! だからケイを責めるのは違います!」

リアの渾身の訴えにも、義朝はまったく動じなかった。

「別に責めているわけじゃない。ただ責任は負わなければならない。盗んだものを返したからといって、盗み自体が無罪になどならない」

しょぼくれるケイに、やれやれと両手をあげる義朝。

「まったく、世話の焼ける奴らだ。今回だけだぞ?」

「おじさん!」

「義朝さん!」

ケイとリアが同時に叫ぶ。

「ただし、今回が本当に最後だ。次に力を貸してくれなんぞぬかしたら、その場で警察に連れていって正体をバラすからな」

「うっ……」

一瞬、返答に苦しみつつも、ケイはこっくりと頷いた。背に腹は代えられないと判断したのだろう。

「で、どういう作戦なんだ?」

義朝に聞かれて、先ほど話していた作戦を聞かせる。最後まで聞くと、口元をほころばせながらケイを見下ろしてきた。

「なるほどな。悪くないかもしれん」

「でしょ? というわけで、とりあえずおじさんはフィンを家に送って。アスクの実践練習もかねるから、おじさんは髪の毛をアスクに渡して家に帰っていいよ」

「了解だ。家で電気もつけずにゆっくりしとけってことだな」

苦笑いを浮かべるケイをそのままに、義朝は裏へと入っていった。いまや空き部屋となってしまった一室へと入ると、入り口付近でフィンが奥にいるアスクを睨みつけている。「ほら、喧嘩するな」

「アスクはいつもわたしのことバカにしてんだ! 今日こそ痛い目に……」

と、突然フィンと義朝の姿が、何の前触れもなく消えてしまった。

だが、普通なら慌てるはずの現象にも、アスクはまったく慌てていない。

それから少しの時間が経つと、またも前触れもなく義朝の姿が現れていた。そばにフィンの姿はない。

アスクが口笛を吹きつつ、感嘆の声を上げる。

「よく協力する気になったね? テレポートは極力使いたくないって言ってたくせに」

「最初で最後さ」

「部屋を空にした時も同じこと言ってなかったっけ?」

「あれは俺が勝手にやったことだ。頼まれてじゃない」

髪をかきあげてから大きく息を吐いた。義朝の表情に疲れが見える。

「んじゃま、俺も家まで送ってくださいな」

「わかった……と言いたいところだが、ケイがいってたぞ。実践練習もかねてお前と帰るってな」

「……マスクを使えってか。せっかく楽して家まで帰れると思ったのに」

肩を落としつつ、義朝に近寄っていく。

「んじゃ、髪の毛一本もらうね」

「あまり痛くすっ……!?」

義朝の言葉が終わる前に、アスクの指が頭から髪の毛を抜きさる。

痛そうに頭を撫でる義朝の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。

「おっと、ごめんな三村のオッサン」

「まったく誠意が感じられんが……」

愚痴をこぼしながらも、瞬く間に姿を消す。またテレポートでどこかへと移動したのだろう。

「さてと、それじゃあ帰るとするか……」

大事そうに義朝の髪の毛を握り、空き部屋から出ていく。N.F.Sと雅たち警察の戦いが、いま始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ