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好きなことをしている人が好きなのだろう  作者: 高月水都


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1/2

前編

本当は一つにまとめたかったけど

 わたくしの三か月違いのお姉さまは自分の幸福に気づいていないのだろう。いや、それすら不幸の原因だと思うだろうか。


 当事者になってみないと分からないが、自分が不幸だと嘆いて動かない人だと思ってはいた。


 王族のみ現れる金色の目。わたくしはそれを持っていなかった。それでも、不貞を疑われなかったのはわたくしには双子の弟がいて、金色の目を持っていたから。


 そう。()()()()。過去形だ。


 弟はいない。

『ね~たま。くるし……』

 と喉を抑えて、苦しんで亡くなったのが瞼に焼き付いて離れない。


 金色の目を持つ男子は後継者争いに巻き込まれたのだ。


『お前が死ねばよかったのにっ!!』

 弟の死を認められない側室だった母は部屋に置かれていた置時計、ティーカップ。花瓶。……その他諸々を生き残ったわたくしに投げて、常に責め続けていた。


 侍女達が守ってくれていなかったらとっくの昔に命を落としたかもしれない状態で、生き残ったわたくしを殺せば弟が戻ってくるとでも思ったのか侍女たちが会わせないように手を尽くしても執念深く探し出して手当たり次第調度品を投げていた。


 ……やがて、女の尻ばかり追いかけていた王の耳にも入り、母は精神を病んだことを隠密にされて、療養地に送られた。

 それ以後どうなったか分からない。


 後で、子どもだから分からないだろうと囁かれた噂話で、母を嫉んだ別の側室がわたくしの居場所を逐一母の耳に入るように細工していたとか。母の精神が壊れていく様を愉しんでいたと――。



 そんな経験があったからわたくしは幼いながらも考えた。


(ここは地獄だ……)

 女性の金色の目は王に即位しないが、価値がある。そのうち同盟国かどこかの貴族に降嫁させる貴重な足場堅めの逸材だ。恨みを買うよりも恩を売った方がいい。だけど、金色の目ではない自分は蔑ろにされるだろう。現にわたくしは殺される危険の中に置かれていた。ならば、その前にこの場所から逃げれる手段を作らないと。




 そのための手段を考えながらも、今のわたくしの手で出来る手段は何があるのかと子供なりに考えつつ、幼い子供だからこそ与えられる公務――主に子ども相手の交流を行っていた。


 子供同士で遊ぶさまを見ていると、異母兄弟姉妹はみな敵という感じで接点のない状況……、唯一味方だと言えた存在の弟の苦しみながら死んでいく様が脳裏に浮かんで同年齢の子供の関わりが出来る子供たちが強いと思った。


「あなたもここに居ればもっと積極的に関われたのかな……カルディオ……」

 そっと持って来ていたポーチの中から宝物を取り出そうとするが、ポーチの中で引っ掛かっているのか上手く取り出せず力を入れたら、今度は力を入れ過ぎだったのか勢いよく飛んでいき、コロコロ転がって、一人の男の子の足元で止まった。


 今回の公務は孤児院。子どもたちは自分の持ってきた玩具やお菓子に興味を示していたが、彼はそのどちらにも興味を持たなかった。 


 代わりに……。


「これ魔道具だ。うわ~。初めて見た~」

 興奮したようにじっくりと見ている。


「それ。返してくださる」

 双子の弟の形見。子守り歌が録音してあった魔道具だが、悪戯をして今は弟の楽しげな声が聞こえる。いや、ノイズ混じりでだいぶ音割れしているので聞き取ることも難しいかもしれない。

 だけど、彼はわたくしの差し出した手に気付かずに勝手にわたくしの宝物をいじりだして、

「こんな仕組みなんだ。かなり部品が摩耗しているな……。でも、これなら……」

 何処からか金属を持って来て、それを加工したと思ったら、


『ね~たま。見てみて~』

 ノイズ混じりだった声が鮮明にしっかりはっきり聞こえる。ああ、こんな声だったとセピア色だった記憶が鮮やかによみがえり、気が付くと頬を涙が伝っていた。


 ああ。こんな声だった。


「よかった。直った!!」

 楽しげに魔道具を修理終えた少年がその時になってわたくしに気付いて、

「あっ、これ君のだったの?」

 返すねと差し出され手を掴んでいたのは無意識だった。


「――あなた。魔道具に興味ある?」

「はいっ?」

 戸惑っている少年に間髪入れずに、

「本格的に魔道具の研究をしたいのなら支援するわ。だから、誰も見たことない魔道具を作って世界をひっくり返しなさい」

 その後出てきた言葉は、完全に黒歴史となるだろう。


「王に褒美を尋ねられたら。第5王女のマルガリッタを妻に迎えたいと言いなさい」

 というとんでもない発言だった。


「………………………………はい」

 まさか、それに頷かれるのもそこまで研究したいのかと彼の研究オタクがそこまでこだわっているのかと驚かされたが。


 それがまさか、のちに研究の父と言われるわたくしの婚約者。ビアン・フォールウェイとのなれそめだと思わなかった。





「そんな幼い時からの出会いだったのね。マルガリッタとフォールウェイ博士って」

 第三王女ホーリア姉さまに依頼されて竜の鱗を加工した装飾品を職人と共に届けてからの世間話。ちなみにビアンが最初だが、その後にもいろんな才能の原石を見付けて支援し続けて、今回の職人もその支援した者の一人だ。


 まあ、褒美にわたくし……というのは流石に黒歴史なので言っていないが。


「魔道具以外見えていないのよ。わたくしの無茶ぶりに律義に真に受けて、本当に褒美にわたくしを求めるなんて……」

 愚かな人だ。


 好きなことをするために自分の人生をわたくしに明け渡すなんて……。


「マルガリッタ?」

「……今だから言いますけど、わたくし以前のホーリア姉さまもその婚約者の辺境伯令息が嫌いでした」

 会えないのなら会いに行くなり、竜とか魔獣とかで断りの手紙を出すのなら調査をさせるための人を派遣させればいいのにそれをしなかったホーリア姉さま。いつも誘いを断ってホーリア姉さまを針の筵状態にさせていた婚約者。


 金色の目(王家の証)を活用しないで、自分の環境を嘆くばかりで何もしなかったのだから。


「過去形? なら、今は?」

 ホーリア姉さまは怒りも悲しみもしなかった。冷静に聞き返してきたので、

「今はそうでもないです。……わたくし、自分の好きなことをするために自分の責任で動ける人が好きなんですよ」

 後半のセリフは小声で告げると、

「わたくしもマルガリッタが好きよ」

 と力いっぱい抱きしめてくれる。


 好きなことをするために努力をする人が好きだと気付いたのはビアンに会ったから。でも、だからこそ、思うのだ。


 ビアンの好きなことをする時間をわたくしの婚約で奪っているのではないかと――。

 かつて、ホーリア姉さまの置かれた状況にわたくしがビアンを追い込んでいないかと――。



マルガリッタ→マルガリータ

ビアン=ボンゴレビアンゴ

カルディオ=カルボナーラ

という感じで遊んでいたりする(笑)

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