第1話 異世界に転生、食べなきゃ死ぬ
──腐った弁当のせいで死ぬとは、思ってもみなかった。
夜のコンビニ駐車場。
大学の課題を終えた帰り、腹が減って買ったのは「半額シール」の唐揚げ弁当だった。
口に入れた瞬間、少し違和感を覚えた。
酸っぱいような、苦いような、何かが違う。
それでも俺──一ノ瀬 蓮は、腹が減っていた。ただそれだけの理由で完食した。
そして、視界が暗転した。
最後に覚えているのは、弁当の容器がカランと転がる音だけ。
目を開けると、そこは草原だった。
見渡す限り、空と緑。だが、風の匂いが妙だ。甘く、湿って、少し焦げている。
胃の奥がぎゅるると鳴った。……空腹だ。
体が軽く、そして異常に飢えている。
俺は立ち上がり、ふらふらと歩き出す。
足元の草が、やけに香ばしい匂いを放っていた。
試しに一枚ちぎって口に入れる。
──次の瞬間、全身に電流が走った。
「……っ、な、なんだこれ!?」
心臓が跳ね、筋肉がうなる。
体の奥から熱があふれ、まるで燃えるような感覚に包まれた。
そして、頭の中に声が響いた。
【《食感同調》が発動しました】
【対象:香草グラスリーフ】
【効果:体力小回復+感覚鋭敏化】
「……スキル、だと?」
目の前で、風がスローモーションのように見えた。
匂い、音、光──五感が研ぎ澄まされていく。
わけもわからず、俺は笑ってしまった。
「弁当食って死んで、草食って強くなる……? なんだよ、この世界。」
そんなときだった。背後の茂みがざわめく。
振り返ると、犬のような、でも皮膚が赤黒く光る化け物がこちらを見ていた。
「……おい、まさかあれも食えるのか?」
喉が鳴った。恐怖と、飢えと、興奮がないまぜになる。
逃げるか、戦うか。
──いや、違う。喰らうか、喰われるかだ。
拳を握る。全身に巡る“草の力”が脈打つ。
あの神秘的な声が、もう一度響いた。
【この世界では、食べたものだけが、あなたの力になります】
「……そういうことか。」
俺は口角を上げ、呟いた。
「なら、俺は食って、生きて、強くなる。」
その瞬間、化け物が飛びかかってきた。
俺は、拳を──いや、“牙”を研ぎ澄ますように構えた。
生きるために喰らう。
それが、この世界のルール。
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