第64話 この卵からは何が生まれるのか?
「帰るのはめっちゃ大変だったな」
ヒン
ぽ・・・よん
ウゥ~~~
皆も車の中でだら~~んとなっている。
実際卵を見つけることができ、急遽配信を止めることにした俺たちはダンジョンから戻って来たんだが、視線が刺さる刺さる。
これはヤバいと思い、すぐに受付嬢にさいたまダンジョンに潜った記念のサインを書いて、シエルに足の判子をしたのを渡したんだが、所々で自分も欲しいなっていう視線がくるもんだから、どうしようかと考えた結果。
「まさか、受付嬢さんが色紙を持っていたとは思わなかったな」
そうなんだよね。彼女から(何で持っていたかというと、有名なダンジョン配信者に来た証としてサインを書いては飾るようにしているんだと。実際20人ぐらいのサインが飾っていた)色紙を貰い、何枚か書かせてもらい先着順で渡すようにしてもらった(迷惑をかけたお詫びとして、その受付嬢さんにも渡したが)。
書いて置いた瞬間、すごい勢いで人が寄って行ったから、これ幸いだと車の方に戻った。さすがにここで鑑定してもらおうとしたら、サインをまた書かないといけなくなるかもしれないと思ったからだ。シエルたちに迷惑をかけ過ぎないようにしたい。
「・・・めっちゃ疲れたな」
ヒン
ぽよん
ワフ
全員同意してくれた。今回シエル以外の2体は初めて人前に出たからな。
結構な視線を集めていたからな。ストレスが溜まっていなければいいが。
「今回のようなことが、行く先々で起こるかもしれないし、これ以上のことが起こる可能性もある」
ヒン!?
ぽよん!?
ワフ!?
めっちゃ驚いているが、君たちがこのチャンネルでの主役だからね。それを忘れていないかな?
「どうする?これからも人前に出るか、前までやったリュックの中に入って・・・って3体も入るリュックがないな」
シラユキが家族として増えて、リュックの中に全員入ったら、パンパンになるし破れる可能性の方が高いな。
ヒン!!
「シエルは今日のように人前に出ても大丈夫か」
ワン
「シラユキはリュックの中がいい・・・怖かったのか?」
ワン
コクっと頷いたあたり、相当怖かったんだろうな。
「オニキスはどうする」
ぽ~~~
めっちゃ考えているな。
ぽよん!!
「オニキスも大丈夫ってことね。分かった。今度からはシエルは俺の方に、オニキスは俺の頭の上でシラユキはリュックの中で決まりだな」
ヒン!!
ワン!!
オニキスはシエルに全部の負担を与えないようにと考えたんだろうな。
それはありがたいかもしれない。
「一番は・・・この卵だよな」
ヒン
ぽよん
ワン
まさかの卵が宝箱から出てくるとは思わなんだ。
結構SNSでも騒がれているし、一部ではトレンドにも入っているんだとか。
翠からは
『ユウはどうして世界で初のことを引き起こすのよ!!』
と理不尽に怒られ、健太からは
『お前の運はどうなっているんだ?』
と呆れられた。
真奈美と瑠莉奈は、
『優馬さんは凄いですね』
『優兄だけズルいよ!!』
と羨ましがられたり、尊敬の目を向けられた。
小夜さんからは、
『・・・・・・』
と書かれたメッセージが送られてきたため、戦慄してしまった。
三枝社長からは
『君は配信の神に好かれているのかもな』
と褒められ?はした。
う~~~ん。俺も狙ったつもりは一切ないんだよね。
開けたら卵が出てくるって中々ないことだからな。
「とりあえず帰り着いたし、今日はゆっくりしつつ、卵は・・・どうしようかな?」
一応、体温がなくならないようにタオルには包んでいる。けど、死にそうになっているって話だし、これだけじゃ駄目だな。
ちなみに、卵の色は赤色だ。めっちゃ珍しい。
「布団を敷いて、一緒に温めるか」
ということで、布団を敷いてそこに卵と一緒に布団に入った。
ちなみに今の季節は6月のため、俺はタオルケットだけにしているが。
ヒン!!
ぽよん!!
ワン!!
「お前たちも一緒に温めてくれるのか」
生きることを諦めかけている卵だからな。
これぐらいはしないとな。
「生きることを諦めないでほしい。外の世界は絶対にお前を歓迎するから。
だからどうか、死ぬようなことを考えないでくれ。俺も従魔たちもお前が生きることを、生まれることを望んでいるからな」
と声をかけつつ、午後をゆっくりと過ごすのだった。
どうか、この卵の中にいるモンスターが生きることを強く望むよ。
外の世界は楽しいんだ。だから、生きることを絶対に諦めるなよ!!




