第56話 翠と3人娘の邂逅とアドバイス
スパスタへの所属を決意した次の日。
俺は翠と一緒に静岡のギルドに向かった。
お供はシエル。
オニキスとシラユキはお留守番だ。オニキスにシラユキの面倒を見てもらっているんだが、めっちゃ張り切っていたんだよな。
「どうしたの?」
「いや、オニキスがめっちゃ張り切っていたのを思い出してな」
「新しい後輩ができたからじゃない?」
「そうなのかもな」
お兄ちゃんとしての自覚が芽生えちゃったのかもな。
「それで、女子高生3人組なのよね」
「そうだ。俺のことを魔力感知で見抜いてきてな。そのままなし崩し的にって感じかな?」
「脅されているってわけじゃないのよね」
「いや、実際彼女たちはダンジョン探索が全然上手く言っていなかったから、何かしらのアドバイスが欲しかっただけ見たい。俺から絶対に誰にも言わないでほしいと約束して、破っていないからな」
「それならいいけど。魔力感知でバレた以上、これからもっと気を付けたほうがいいわよ」
「分かってる」
これからも、正体ばれを防ぐためにはもっと色々警戒したほうがいいな。
でもな。
「魔力を隠ぺいするアイテムが高いんだよな」
「・・・それはそうね。一番安くても50万近くはするもんね」
「それを考えるとね?」
「なら、尚更スパスタに入って稼がないといけないわよ」
「配信は自分のペースでいいって遥人が言っていたからな。ブラック企業時代の地獄よりはマシだろ?」
「それと比べるとね」
それはそう。
という感じで運転し、静岡に到着した。
どうやら、3人娘も来ているみたいで、受付嬢の方に案内してもらい、彼女たちが待っている個室に入った。
「お久しぶりです。波多野さん」
「久しぶりって、最後に会ったの1週間前だよ」
「それでも、久しぶりと感じちゃうんですよ」
「波多野さん、その方が」
「紹介するよ。俺の幼馴染でD級探索者の」
「久保田翠よ。よろしくね」
って感じでお互いの自己紹介をした後、彼女たちの現状を聞いた。
「今の探索者学校って結構ヤバいのは知っていたけど、実際に聞くとそのヤバさが増すわね」
「俺も彼女たちにアドバイスをしたとは言っても、同じ初心者と変わらんからな。
何かアドバイスが欲しいなっと思ってな」
「「「(・・・)お願いします!!」」」
「そうね・・・」
と翠は一度考えた後、こう言った。
「ダンジョンを攻略するうえでパーティーとして一番必要なのは連携。指示する人が前衛の場合、ユウが教えたやり方は間違っていないわ」
「そうなのか」
「最初から、ある程度の数に対する対処法を決めれば、最速で動けるからね。けど、もっと大切なのは何事にも動じない精神力になるわ」
「精神力ですか?」
「・・・根性論?」
「フフフッ。違うわよ。ダンジョンって結構不測なことが起きることが多いのよ。どんなに計画していても、それが一気にとん挫なんてこともあるわけ」
それは確かにそうかもな。
ダンジョンは特にモンスターが突然あふれるスタンピードや、下層とかで出てくるモンスターが突然上層に現れたりすることもあるんだとか。
「何が起きるか分からないダンジョンで、冷静さを失うと間違いなく死ぬわ」
「翠もあったのか?」
「私はないけど、受付嬢時代に経験しているのよ」
「経験ですか?」
「えぇ。確か5層に行った若い探索者が突然下層に出てくるようなモンスターにパニックを起こして、逃げなかった結果・・・って感じかな」
それは・・・絶対にパニくるだろうな。
けど、実際に自分に起きた時、どう対応するかを瞬時に考えないといけないよな。
「だから、冷静さを欠いちゃいけないの。特にリーダーの楯川さんかしら」
「はい」
「リーダーのあなたがパニックを起こすと、他の2人にも伝染するからね」
「冷静に迅速に対応できるようにするってことですね」
「そういうことよ。楠さんと大川さんも。楯川さんに全部任せるんじゃなくてある程度は自分たちでやれるようにしないとね」
「「はい」」
「楯川さんが不測の事態で動けなかったときの戦い方も覚えたほうがいいわね」
「何が起きるか分からないからか」
「そう。突然、パーティーが分断されるなんてこともあったりするのよ」
それはマジで怖いな。俺の場合、シエルたちと分断されたら、その時点でほぼ詰みな状態だからな。
「ユウにも言うけど、ダンジョンを絶対に舐めたらいけない。舐めてかかった人は大体痛い目に遭っているからね」
「「「はい!!」」」
「分かったよ」
ヒン!!
リュックから出したシエルと一緒に返事をした。
多分、シエルは話半分しか聞いていなさそうだな。
「それじゃあ・・・実践と行きましょうか」
ということで翠と3人娘の4人と一緒にダンジョンに潜り、
同じスキルを持つ楠さんには剣の振り方と立ち回りを。
楯川さんには、盾を使った攻撃方法や、ヘイトの溜め方を。
大川さんには、魔法の撃ち方と援護の仕方を教えるのだった。
「最初から翠を頼ればよかったな」
「凄いでしょ?」
「流石は翠だ。本当にお前は凄いよ」
「そう?・・・ありがと」
とちょっと顔を赤くしながら言った翠を3人娘がニヤニヤと見守るのだった。




