第51話 安全第一と将来を考えて
「・・・・・私たちの連携って」
「・・・・・これが初心者なの?」
「・・・・・凄い」
う~~~ん、そこまで持ち上げなくても。
「本来俺がいなくても、この子達で倒せるからね」
ヒン♪
ぽよん♪
としゃがみつつ、シエルとオニキスを撫でる。
めっちゃ喜んでいるし、褒められたのに気付いてとても嬉しそうだ。
「それでも・・・私たちより連携はいいですよ絶対」
「この子達、見た目以上に賢いのよ」
「それでも、しっかり波多野さんの言うこと聞いているのは躾がいい証拠ですって」
「可愛くて強いのは反則」
「反則って」
確かに見た目が可愛いのに強いのは反則・・・なのかな?
「それにしても、波多野さん」
「うん?」
「剣の振り方や体の動き的に何かやっていましたか?」
「剣道を中高でやっていたけど、ブランクがあるし、
俺的にはまだまだだなぁと思っているけど」
「にしては正確に流れるように斬っていましたよ」
そうなのかな?
確かにダンジョンに挑戦してから体の調子がいいんだよなぁ。
前職の時は体調が悪くて、しっかり休まないと過労で死ぬとか言われたからな。
「会社を辞めたからかな」
「・・・そんなに過酷だったんですか?」
「自分が前にいた時の会社が超絶ブラックだっただけだよ」
と女子3人に俺の前職がどんだけブラックかを教えた。
「休日出勤は当たり前。上司の仕事は部下の仕事。
残業は基本サービス残業で、最長3週間は会社に行っていたよ」
「それは・・・」
「会社に泊まることも多かったから、布団を買って置いていたしね。けど、別の残業やっていた人に布団が取られてない時があったからね」
「「・・・・・・」」
「寝る暇も惜しんでやったのに、給料はそこまで上がらないし、
ボーナスも雀の涙ほど・・・・本当にハハハハハ」
「ちょっ!?しっかりしてください!?」
「波多野さん!?」
「・・・これはひどい」
なんだろ、眼から涙が止まらないや。
ヒンヒン
ぽよん
「お前ら・・・ありがとな」
俺の涙をシエルが舐めて、オニキスが触手を使って俺の肩をもんだくれた。
本当にその優しさはしみるよ。
「って感じかな」
「本当に辛かったんですね」
「目がどんどんハイライトが消えてきて怖かったですよ」
「・・・反面教師にする」
「「美鈴!!」」
「いや、大川さんの言うとおりだよ。俺を反面教師にして、しっかり自分の将来を考えたほうがいい。これからも探索者を続けるならばより稼ぎを考えたほうがいい」
「稼ぎですか?」
「探索者は自分の体が商売道具だからね。もし体のどこかが悪くなって、突然探索者としての活動ができないってなることもあるからね」
「確かに、これからのことを今のうちに考える必要がありますね」
「そういうこと」
俺は安全モットーを第一に考えているからな。
その結果がブラック企業だったとは夢にも思わなかったけど。
「さてと、今日はここまでにして戻るとしますか」
「そうですね」
「結構戦いましたからね」
「今日の稼ぎに期待」
「そうだね」
「これから3人だけでやれそう?」
「はい・・・と言いたいんですけど」
「まだちょっと不安です」
「まぁそうだよな・・・知り合いに頼んでみるか」
と俺は一度翠に連絡を入れて(その際、めっちゃ問い詰められたが)、事情を説明して、OKをもらい、次回は翠も連れていくことが決まるのだった。
こうして、3人娘と一緒にダンジョンから帰還するのだった。
今日の稼ぎ
俺・・・・4万4058円(ゴブリンの小魔石8個、コボルトの小魔石7個)
3人娘・・・8万7298円(ゴブリンの小魔石11個、コボルトの小魔石13個)
魔石の品質は全部C~B+。1個3000~4000円ぐらい。




