第36話 高橋さんと決めごと
「配信活動をするにあたって、注意することはありますか?」
「注意ですか?」
配信活動をすることが決まったのはいいが、ちゃんとルールとかがあるならしっかり守りたい。ルールを破ることに良いことなんてないからな。
「まず、注意することは周りですね」
「周りですか?」
「ダンジョンでの配信活動の際は、周りに人がいないことを確認してください」
「いたのを知らずに配信して、肖像権とかで揉めることを防ぐためよね」
「はい。それで過去に裁判になったこともあるので」
それは気を付けたほうがいいな。しかも、俺の場合シエルとオニキスがメインだから、ちょっかいを出す人も必ず出るだろうし。
「後、どこのダンジョンを潜っているのかを言わないことですね」
「何でですか?」
「もしかして・・・出待ちを防ぐためってこと」
「はい。もし、ダンジョンの場所を言ったら」
「そこに向かう人が続出して、身動きが取れなくなったり、配信活動を辞めるように協会から言われる可能性があるからよね」
「はい」
普通にダンジョン探索している人からしたら、そういう出待ちは邪魔でしかないもんな。マジで気を付けておこう。
「一番の最優先は波多野さんのスキルです」
「俺のスキルって・・・あっ」
「はい。現状、波多野さんしかない唯一のスキルは絶対に配信では言わないことです」
「これがバレれば、日本の協会だけじゃなく、海外からもユウを捕まえる刺客が出てくるってことよね」
「はい。強いモンスターを無条件でテイム出来ることがあれば・・・波多野さん1人で最悪国を1つ滅ぼせる戦力が作れるかもしれませんので」
「・・・・・」
めっちゃ話が壮大なんだが、2人とも真面目に話しているので本当のことなんだろうな。俺のことを心配してくれて、俺の安全を第一に考えてくれているのだ。
「分かりました。そうなると・・・2体とも懐かれた形で俺の従魔になったという説明で大丈夫ですかね」
「それでいいと思いますよ」
「けど、その場合シエルちゃんはどうする?この子ってダンジョンの外にいたんでしょ?」
「そうだよな」
「それについては、波多野さんがダンジョンで偶々倒れていたシエルちゃんを優しく介抱されて懐かれたっていう感じでいいと思いますよ」
「それが一番丸いわよね」
「オニキスもそんな感じだから、それが一番いいかもな」
ということでシエルとの出会いは少しの捏造を、オニキスとの出会いは捏造ほぼなしで配信で語ることが決定。
「これから配信するにあたって、カメラとかを買わないといけないよな」
「今のこのご時世よ。ダンジョン配信用のカメラもあるわよ」
「ギルドでも売っていますが・・・家電量販店のほうが高性能なのでそちらで買うのがお勧めですね」
「分かりました。シエルたちが稼いでくれたので、買うことは出来ると思います」
ということで帰りに寄ってみることにしよう。
「ユウは配信用のチャンネル名はどうするの?」
「それは従妹たちに相談しようかな。配信とか今どきの子だから見ているだろうし」
「何かおっさん臭いわよ」
「仕方ないだろう。今までそういうネット動画とか見る暇ないほど働かされていたからな」
「そこまでのブラックだったのね」
「心中お察します」
と2人から哀れの目で見られるのだった。
その前に、
「シエルとオニキスと軽くダンジョンに行くか」
ヒン♪
ぽよん♪
「波多野さん?」
「分かってます。今回は軽くって言っているので大丈夫ですよ」
めっちゃ目が怖かったな。ギラっとしていたぞ。
「もし何かあれば、すぐに私が止めるわ」
「お願いします。久保田さん」
「翠でいいわよ。ところで、高橋さん」
「何でしょうか?」
と翠と高橋さんが俺に聞こえない声でひそひそと話しているが、何を話しているんだろうな?
「高橋さんはユウのことどう思っているの?」
「私ですか?そうですね・・・今のところ悩みの種になっているトラブルメーカーですね」
「そうなのね・・・ホッ」
「どうかしましたか?」
「なんでもない「ですが」?」
「まだ、私が男の人として意識していないだけかもしれませんね」
「なっ!?それ次第では・・・ってこと?」
「そうかもしれませんね」
「真奈美・・・ライバルが増えるかもよ」
という会話をしていたのを俺は知らずに、シエルとオニキスと軽くストレッチをするのだった。
