第32話 翠と従姉妹と修羅場?
俺のところにやってきたのは幼馴染みの翠だった。
「どうしてここに?」
「おばさんから会社を辞めてここに引っ越したって聞いて心配で見に来たのよ。
一切連絡がなかったからね」
「あぁ~~~連絡するのを完全に抜けてたな」
「・・・私のこと忘れてたんだ。へぇ~~~~」
あっ、すっごい怒っているのが分かる。
「本当にごめん!!それと・・・心配してくれてありがとな‼」
「まったくもう・・・体調はどうなの?」
「もう大丈夫。会社に勤めてた時より健康にはなったよ」
「それは良かった・・・ところで彼女は出来たの?」
「い~~や、仕事ばかりだったから、出会いなんて一つもなかったよ」
「そう・・・なんだ」
「そういえば翠は「優兄」・・・あっ」
「誰か来ているの?」
「・・・今、女の声が聞こえたけど、どういうこと?」
「えっ!?・・・それは」
瑠莉奈の寝起きの声が聞こえたと思ったら、
何か翠の声が低いことに恐怖しかないんだが。
「実は今、従妹の姉妹が泊っていてな」
「何で?」
「偶々ダンジョンで会ってな」
「ダンジョン?もしかして、ユウ、あんた探索者になったの?」
「それもふまえて説明するけど、仕事は大丈夫なのか?」
「・・・えぇ。問題ないわ」
「分かった。なら、入ってくれ」
と翠を家の中に入れるのだった。
「優兄・・・ってその人は?」
「紹介する。俺の実家の隣の家の娘さんで俺にとっては幼馴染の久保田翠」
「久保田翠よ」
「でこっちが、俺の親父の弟夫婦の娘さんの瑠莉奈だ」
「初めまして。波多野瑠莉奈です」
「ところで瑠莉奈。真奈美は?」
「お姉ちゃんはもうすぐ起きると思うよ」
「そっか」
真奈美の方が朝が弱いんだな。
「ねぇユウ。真奈美さんって」
「瑠莉奈の姉だな」
「そして、優兄の未来のお嫁さんだよ!!」
「何を言っているんだお前は!?」
「・・・なるほどね」
何がなるほどなんだ?後、2人とも目が怖いぞ。
その後、真奈美が居間のほうにやってきて、翠に挨拶をした。
その際、2人とも笑いながら握手をしていたが目が笑っていなかった。
「優兄。どうして翠さんはここに来たの?」
「実は・・・」
翠が来た理由を2人に説明した。すると、
「それは優馬さんが全面的に悪いですよ」
「お姉ちゃんの言うとおりだよ」
「本当に心配したんだからね。しかも、健太とかには伝えているのに」
完全に1対3の構図が出来上がっているが、これについては全面的に俺が悪い。
「話を変えるけど・・・翠は今何の仕事をしているんだ?」
「私はソロの探索者よ」
「「えっ!?」」
「女性のソロ・・・って結構言われないか!?」
「言われるわよ。「女の癖に」とか、「女でソロとか死に急ぎかよ」って」
「実際、女性のソロって中々いませんからね」
「けど、私は自分のペースでダンジョンに挑みたくてね。今じゃD級探索者になれたわ」
女性のソロでD級まで上がるのはマジですごい。
「どうして探索者になったんだ?」
「最初は別の県のギルドの受付嬢をやっていたんだけどね。文句を言う人が多かったり、セクハラする人たちがいてね」
「最低だね」
「そんな時にスキルに覚醒して剣術スキルを手に入れて、強くなって男どもを見返したいと思ってね」
翠も翠で苦労したんだなぁ。
「久し振りに帰省したら、おばさんに会って、あんたが仕事を辞めて戻ってきたって初めて聞かされたんだから、健太君にも連絡したら事実だったし。幼馴染の私に連絡はなかったからね」
「それは本当にすまない」
「来てみたら、可愛い女の子と同棲しているし」
「同棲じゃないかな!?」
「ほんとに~~~?」
「当り前だ。俺のような男がこんなかわいい女の子と付き合えるわけないだろ」
「「「ジーーー」」」
「えっ?何?」
何かジト目で見つめられビクッとなった。
「優兄はいつもこんな感じなんですか?」
「昔からそうよ。人の好意に鈍感なんだから」
「そうなんですね・・・はぁ~~」
「あなたも苦労しているのね」
「翠さんもですか?」
「そうなのよ・・・幼馴染で一番近い距離にいたのにまったくよ」
何か、3人がコソコソ話し出して、いたたまれないな。ってそうだった。
「真奈美。瑠莉奈。今日は学校だろ?準備しなくてもいいのか?」
「「あっ」」
と我に返った2人は俺が作った朝ご飯を急いで食べて、一度部屋に戻って支度をした後、家を出た。
「行ってくるね優兄!!」
「行ってきます!!翠さんも頑張りましょ」
「えぇ。真奈美さんも頑張りましょ」
何か、真奈美と翠ががっちり握手をしていた。何か通じることでもあったのだろうか?
「・・・本当に気付かないのね」
「何がだ?」
「・・・はぁ~~~」
ため息を付かれたんだが・・・俺が何かしたのか?




