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目覚める鉄血宰相

2025年、ベルリン。曇天の朝。ブランデンブルク門の前に立ち尽くす一人の男に、観光客たちは違和感を覚えた。


黒い軍服に身を包み、胸には鉄十字章。胸元には金の鎖時計を下げ、手には艶のあるステッキを握っている。まるで19世紀の写真から抜け出たかのようなその男は、鋭い蒼眼で周囲を睨みつけながら、低く唸った。


「ここは……ベルリン、か? だが……この鉄塔と奇怪な箱……まるで悪夢の中の帝都だ」


携帯電話のシャッター音が響く。


「ねぇ、見て、コスプレか何か?」「映画の撮影?いや、本物みたい……」


観光客たちはスマホを向けるが、男はそれを奇妙な兵器とでも見たかのように睨みつけた。


「貴様、それは武器か? 私に向けるな」


言葉はドイツ語――だが時代がかっていて、やや古風だ。それでも現代の人々には意味が伝わる。

挿絵(By みてみん)

そこに一人の警官が歩み寄る。若い女性警官だ。


「おじいさん、大丈夫? ご家族は? IDは?」


「IDとは……身分証か。ふむ……ならば言っておこう。私はオットー・エドゥアルト・レオポルト・フォン・ビスマルク=シュレースヴィヒ=ホルシュタイン=リュッカウ伯爵だ」


警官はぽかんと口を開けた。


「……どこかの劇団ですか?」


だが男――ビスマルクは胸を張り、毅然と告げた。


「冗談ではない。私はドイツ帝国の初代宰相である。国王の名の下、普仏戦争を戦い、帝国を統一した。貴様、皇帝はどこだ。ヴィルヘルム陛下に謁見せねばならん」


そのとき、通りがかりの一人の歴史学者風の中年男がその名に反応した。


「ビスマルク? 今ビスマルクって言った? それはまた……」


彼は警官の肩を叩き、スマホで顔認証アプリを起動。男の顔写真を撮ると、AIが応答した。


『オットー・フォン・ビスマルク。1815年生、1898年没。ドイツ帝国初代宰相……』


AIの音声に、警官も表情を変える。


「顔一致率……92%!? まさか、本当に……!?」


混乱の中、ビスマルクはうっすらと笑みを浮かべた。


「どうやら、また“仕事”をする時が来たようだな」

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