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24×2  作者: 佐伯チカ
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回想

愛されるってどんな感じですか?


愛するのとは違いますか?


それは幸せなことですか?



我が目を疑うとはまさにこのことだ。

『何故!?』

因果と呼ぶべきなのか?輪廻と呼ぶべきなのか?

僕は、ただただ、唖然としていた。

そして、次の瞬間、僕はあの千鶴と共にいた日々の中にいた。


千鶴は2学年下だったため、僕が大学3年になって東京へ出てきた。

渋谷での一件以来、僕は本気で彼女だけを愛していた。

本格的に付き合っていると呼べたのは、その頃からだろう。

僕のアパートは浦和にあり、彼女は女子大の寮生活だった。

だから会えるのは週末のみ。

携帯もない時代だ。

声を聞くのもままならない時代だった。

どこが好きだったのだろう?

あの頃の僕は、そんな自問をすることさえ無いくらいに彼女に夢中だった。

なにもかも。

存在そのものが、愛おしかった。


彼女が東京に出てきてから、初めて僕のアパートに遊びに来ることになった。

僕の誕生日を祝ってくれるということだった。

駅まで迎えに行くと、彼女は満面の笑みで電車から降りてきた。

「時間かかった?」

僕はそう聞くと、

「うん!結構遠いよ!」

彼女は素直な感想を言った。

二人、顔を見合わせて思わず吹き出した。

アパートに着くと、暫く高校時代の話で盛り上がった。

彼女の親友の話。

同じ部活の仲間たちの話。

取るに足らない話ばかりだったが、心が弾んでいた。

僕は改めて彼女に言った。

「待っていたよ」

彼女は嬉しそうに、

「うん。私も」


それから、毎週、彼女が週末に僕のアパートに来るようになり、

僕は幸せの絶頂のなかにいた。

もっとも、この時の僕はそれを絶頂と知るよしもなかったのだけれど。

二人が深い関係になるのに、そう時間はかからなかった。

彼女も嘘をついて女子大の寮に外泊許可をもらい、僕のアパートに泊まったりもしてくれた。

幸せだった。

愛する子が隣にいてくれる時間。

泊まった次の日の一人の夜は、寂しくて、胸が苦しくなった。

会いたい。

『歩いて、会いに行こうか?』

終電も終わった時間に、そんな無茶苦茶な事まで本気で考えもした。


もちろん、二人で旅行にも行った。

数え切れないくらいの場所へ行った。

喧嘩もした。

でも、必ず仲直りが出来た。

僕は大学4年、彼女も短大なので卒業の年を迎えると、

本気で彼女との事を決意していた。

『プロポーズしよう!』

『彼女にずっと、そばにいて欲しい』

そう思い始めていた。


その頃からだったのだろうか?

あるとき、彼女の生理が極端に遅れたことがあった。

彼女は毎日泣いていた。

僕は責任を取る覚悟は出来ていたし、むしろ嬉しささえあった。


でも・・・


彼女は、順序と規律を優先した。

もし、妊娠したら、『堕ろす』と。


僕は、絶望した。

『またか!?』

僕の子供を産みたいと無条件で願ってもらえない。

この時は僕はまだ気づいていなかったんだ。

女性の心理を。

いや、今でも気づいていないのかも知れない。

だから、こんなに苦しいんだ。

『好きであること』『愛していること』『結婚すること』

すべて別の次元に存在していたんだ。


そして運命の日がやってくるんだ。

あの10月24日が・・・

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