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24×2  作者: 佐伯チカ
8/16

再会

いつまでも忘れられなかった


どうしても忘れられなかった


常に頭の片隅に彼女がいた



あの頃の僕は、ネットという仮想空間にまだ可能性を信じていた。

仮想空間とはいえ、所詮人間同士のコミュニケーションの場所に変わりない。

そう信じていた。

だから、ネットを通じて知り合った仲間と思えた人たちと心から解り合えていた気がしていた。

現実社会からの逃避行動だったのかもしれない。

けれど、僕には居場所がなかった。

唯一、存在を見いだせる場所だったのだ。


ある日の事だった。

その日も、夜になって自分の掲示板で常連の仲間たちと、半ばチャットのような勢いで掲示板を

埋めていった。

僕はなにげなしに書き込んだ。

『どこかに、可愛い女の子いないかなあ。最近、虚しいんだ』

すると、一人の仲間からresが届いた。

『根無し草さんのお住まいの近くに、紹介出来る子がいますよ』

根無し草とは僕のHNだ。

『マジで?』

『本当ですよ。まだ若いけど面白い子ですよ』

僕は冗談交じりに書き込んだ。

『じゃあ、彼女に僕のメアド教えておいて!連絡待っているよって!(笑)』

もともと冗談の好きな連中の集まりなので、いつもこんな調子のやりとりだった。

だから、その日のやりとりも、僕は気にも止めてはいなかった。


『じゃあ、そろそろ今日はこの辺で』


くだらない話かもしれないが、そんな馬鹿を言っている時間が嬉しかった。

僕の話に付き合ってくれる仲間にも感謝していた。



翌日の夕方だった。

一通のメールが届いた。

なんと、マジだった。

『昨日、紹介されましたアズミと言います。オヤジ好きです。(笑)よかったら、一度お食事でも

 どうですか?』

正直、驚いた。

いや、本当に女の子からか?

実は、ダミーの男がからかってメールしてきただけかも?

僕は、半信半疑だったが、乗ってみるのも悪くはないと思っていた。

『いいよ。じゃあ、今度の休みに公園前駅の駐車場。車で待っているよ!』

40を過ぎたいいオヤジが・・・と自分でも笑ってしまうが、

こんなジョークも悪くはない。

久しぶりに現実社会で楽しいひとときを過ごせたら・・・

その程度の思いだった。


今思うと、これも自虐的な行為の一貫だったのかもしれない。

この事が、逆に嘘や騙しである事をどこかで期待していたのかもしれなかった。

この頃の僕は、未だ死への願望が根強くあったから。


数日後、待ち合わせの場所へ向かった。

駅前の駐車場に車を止めると、外へでてタバコを吸いながらあたりを見回していた。

携帯のメールが鳴った。

『いま、駅前駐車場の方へ歩いてます。全身黒ずくめのカラスちゃんです』

ふと、携帯から顔を上げると黒いミニスカートと黒のTシャツの女の子が歩いていた。

僕はゆっくり彼女に歩み寄り声をかけた。

「アズミちゃん?」

おもむろに顔をあげた、その子を見て全身に鳥肌が立った。


『千鶴!!!』


あの頃の千鶴にうり二つの子がそこにいた。


「こんにちは!初めまして。アズミです」

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