絶望
絶望には終わりがありますか?
涙には終わりがありますか?
教えて下さい・・・
結婚とは人生の墓場である
そんな陳腐な言葉も笑えてしまうほどの地獄だった。
新婚当日から、それは始まった。
朝、目が覚めると、隣に紀子が寝ていた。
「朝だよ!」
そう言葉をかけても起きようとしない。
『まあ、疲れているんだろう』
僕は、気にも止めず会社へと向かった。
会社は新婚であることに気を遣ってくれ、定時であがらせてくれた。
そう言う意味では新婚も悪くない。
少しだけ得をしたような気分だった。
当時住んでいた家までは、車で10分くらいの場所だった。
家とは言っても、2LDKのごく普通のアパートだ。
1階の隅の部屋なので、外からは丸見えだ。
車を降りて、玄関のチャイムを鳴らす。
昔ドラマでよく見た光景だ。
ドラマでは、新妻がエプロンをして出迎え、頬にキスをする。
そんな下らぬ妄想を思いながら、紀子が出てくるのを僕は待った。
しばらく待っても返事がない。
まあ、ドラマのようには行かないのが現実だ。
諦めて鍵を開け、中に入ると部屋中真っ暗だった。
『何かあったのか!?』
僕は、急いで寝室へ向かった。
そこには寝ている紀子の姿があった。
「おい!どうしたの?」
「う~ん・・・」
紀子は目を擦りながら、僕の方を見た。
「具合でも悪いの?」
僕が訪ねると紀子は不機嫌そうに言った。
「ただ、寝ていただけよ!」
「もう帰ってきたの?」
僕は呆れて言った。
「もう6時だぜ。夕飯は?」
相変わらず憮然とした態度で紀子は言った。
「コンビニでお弁当でも買ってきてよ!」
驚いた。
いや、瞬間的に頭に血がのぼり、口論となった。
『まったく、いきなりこれか!』
僕は呆れて、そのまま寝ることにした。
その時は、たまたま機嫌が悪かったのかと思い過ごしたが、
『たまたま』ではなかった。
それから、僕は毎日コンビニの弁当を食べ、
休みの日は、3食ともコンビニ弁当だった。
何もしない。何も出来ない。
世の中にこんな女の子がいるとは思ってもいなかった。
付き合っている時は、彼女のアパートへ行くと料理を作って食べさせてくれたものだ。
『釣った魚に餌はいらない』
とは、男のセリフとは限らないらしい。
そんな毎日が数ヶ月続いた。
さすがに僕も、限界に来ていた。
その晩はいつにも増して激しい口論となった。
その瞬間。
例の発作が襲ってきた。
激しい動悸。めまい。頭の後ろを闇へと引っ張られるかのごとくの恐怖。
僕は、とっさに言った。
「ちょっと、待って!」
「パニックが・・・」
「助けて・・・」
紀子は凍り付くような冷たい目で僕を見下ろしながら言った。
「そういう時ばっか!ずるい!」
そう吐き捨て外へ出て行ってしまった。
「タ・ス・ケ・テ・・・」
この日を境に、彼女は他の男と不倫し、僕の目の前にはほとんど姿を現さなくなった。
『だから、言ったんだ』
『希望なんて持つなって』