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24×2  作者: 佐伯チカ
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絶望

絶望には終わりがありますか?


涙には終わりがありますか?


教えて下さい・・・



結婚とは人生の墓場である


そんな陳腐な言葉も笑えてしまうほどの地獄だった。


新婚当日から、それは始まった。

朝、目が覚めると、隣に紀子が寝ていた。


「朝だよ!」

そう言葉をかけても起きようとしない。

『まあ、疲れているんだろう』

僕は、気にも止めず会社へと向かった。


会社は新婚であることに気を遣ってくれ、定時であがらせてくれた。

そう言う意味では新婚も悪くない。

少しだけ得をしたような気分だった。

当時住んでいた家までは、車で10分くらいの場所だった。

家とは言っても、2LDKのごく普通のアパートだ。

1階の隅の部屋なので、外からは丸見えだ。

車を降りて、玄関のチャイムを鳴らす。

昔ドラマでよく見た光景だ。

ドラマでは、新妻がエプロンをして出迎え、頬にキスをする。

そんな下らぬ妄想を思いながら、紀子が出てくるのを僕は待った。

しばらく待っても返事がない。

まあ、ドラマのようには行かないのが現実だ。

諦めて鍵を開け、中に入ると部屋中真っ暗だった。

『何かあったのか!?』

僕は、急いで寝室へ向かった。

そこには寝ている紀子の姿があった。

「おい!どうしたの?」


「う~ん・・・」

紀子は目を擦りながら、僕の方を見た。


「具合でも悪いの?」

僕が訪ねると紀子は不機嫌そうに言った。

「ただ、寝ていただけよ!」

「もう帰ってきたの?」


僕は呆れて言った。

「もう6時だぜ。夕飯は?」


相変わらず憮然とした態度で紀子は言った。

「コンビニでお弁当でも買ってきてよ!」


驚いた。

いや、瞬間的に頭に血がのぼり、口論となった。


『まったく、いきなりこれか!』

僕は呆れて、そのまま寝ることにした。


その時は、たまたま機嫌が悪かったのかと思い過ごしたが、

『たまたま』ではなかった。

それから、僕は毎日コンビニの弁当を食べ、

休みの日は、3食ともコンビニ弁当だった。


何もしない。何も出来ない。

世の中にこんな女の子がいるとは思ってもいなかった。

付き合っている時は、彼女のアパートへ行くと料理を作って食べさせてくれたものだ。

『釣った魚に餌はいらない』

とは、男のセリフとは限らないらしい。


そんな毎日が数ヶ月続いた。

さすがに僕も、限界に来ていた。

その晩はいつにも増して激しい口論となった。

その瞬間。

例の発作が襲ってきた。

激しい動悸。めまい。頭の後ろを闇へと引っ張られるかのごとくの恐怖。

僕は、とっさに言った。

「ちょっと、待って!」

「パニックが・・・」

「助けて・・・」


紀子は凍り付くような冷たい目で僕を見下ろしながら言った。

「そういう時ばっか!ずるい!」

そう吐き捨て外へ出て行ってしまった。


「タ・ス・ケ・テ・・・」


この日を境に、彼女は他の男と不倫し、僕の目の前にはほとんど姿を現さなくなった。


『だから、言ったんだ』

『希望なんて持つなって』


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