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24×2  作者: 佐伯チカ
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屈曲

生い立ちの1ページ目がめくられる

誰も僕を愛してはくれない


代償を求めない愛などないのだから


母親でさえ



「せんぱ~い!」


僕は、地方でトップクラスの進学校の3年生だ。

振り返ると、同じ部活の後輩がいた。

彼女の名は『千鶴』。高校1年生だ。

部活と言っても、名ばかりの「歴史研究部」。

実態は、放課後にみんなのたまり場になる部室が欲しい連中の集まりだ。

「今日は、部活でないんですか?」

憮然として校門の前に立ちはだかる。

当然だろう。

僕は彼女と付き合っている。


「ああ、今日はちょっとな」

言い訳だ。実は別の女子校の理恵と約束があるのだ。


「つまんないな~ 私も帰ろうかな~」

彼女は可愛い。文句の付け所がないほどの良い子だ。

でも、僕は贅沢なのかも知れないが、埋め尽くせない何かを感じていた。


「じゃあ、明日な!」


「うん。バイバイ!」


自転車にまたがり、理恵の家に向かう。

何を期待している訳ではなかった。

ただ、何かをしていなければ、苦しかった。


家の前には理恵が制服のまま、待っていた。

「今日ね、両親いないの!夜まで!ふふっ」

意味深な言葉をはいて彼女は僕を部屋へ案内してくれた。

「何か飲む?」


「じゃあ、コーヒー」

僕はポケットからタバコを取り出し火をつけた。

『ふ~・・・うめえや』


ほどなく彼女がコーヒーを抱えて部屋に戻ってきた。

「あ~!また吸ってる!!」


「いいだろ!窓も開けたからさ」


「もうっ・・・」


それから彼女の高校の友人の話とか、誰と誰がエッチした、とか。

どうでもいい話を聞かされうんざりしていた。

しばらく黙っていた僕に彼女が言った。


「ねえ、私たちもエッチしようよ!」

唐突だ。何を考えているやら。僕は呆れていた。

すると彼女は制服を脱ぎだし、下着だけの姿になった。

僕は彼女に押し倒されるようにベッドに横たわった。


・・・・・・・・・・・・・・・


僕はまた、タバコを取り出すと火をつけた。

「ねえ。どうだった?」

彼女は照れくさそうに聞いてきた。

「初めてだったの?」

僕は聞き返した。

「うん。でもね、とってもね、嬉しかった」


『そんなもんなのか』

僕は服を着ながら思った。

『セックスってなんなんだ!!!』


・・・・・・・・・・・・・・・


「おはよう!」

朝から千鶴は元気がいい。

「今日は部活でるよね?」


「ああ、行くよ」


また一日が始まった。くそみたいな一日が。


・・・・・数週間後・・・・・・


理恵から伝えられた。

『妊娠した』と。

正直に言うと、僕はわくわくしていた。

『少しは面白くなりそうだ・・・』


翌日、理恵と喫茶店で待ち合わせをした。

始終うつむいていた彼女が、震える声で言った。

「堕ろしたいの。だから病院へ連れて行って」

意外というべきか、妥当な判断というべきか。

「わかったよ」


世の中、甘くはない。すぐに両親のもバレてしまい、学校にもこの噂は広がった。


学校に呼び出され、停学処分を通告された。

『当然だな』

自宅へ帰ろうとしたとき、千鶴が声をかけてきた。


「ねえ、嘘だよね 嘘って言って!」


僕は無言で自転車にまたがった。

彼女は純粋な女の子だ。

これ以上、僕のような男と関わってもしょうがないだろう・・・


・・・・・3月・・・・・・・・・


こんな僕でも大学受験だけは成功した。

まがりなりにも田舎ではトップクラスの進学校だけに、落ちこぼれでもなんとかなるだけの

勉強はした。


僕は、この場所から逃げるように東京の大学へ進学したんだ。

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