決別
夢を見ていたのだろうか
24年間もの長い間
それとも一瞬の出来事だったのだろうか
アズミがいなくなってからの僕は
一層、パニック障害の症状が酷くなっていた。
それでも、生きようとしていた。
一方で、母は父を失って心のバランスを完全に失っていた。
事あるごとに、自分の苦しみを僕には理解出来ないと罵倒した。
そんなある日、いつものように母は僕に行き場のない悲しみを
ぶつけてきた。
当然、僕にとってもこの世で一番の存在であった父の死は
たやすく乗り越えられるものではなかった。
「あんたは、お母さんの苦しみなんかちっとも理解できないんだよ」
「私は、あんたなんかよりずっと長くお父さんと一緒だったんだから」
「わからないでしょ?」
僕は絶句した。
同時に、何故かくすくすと笑ってしまった。
「何がおかしいの?頭おかしいんじゃないの?」
母の罵倒は続いた。
確かに、僕は頭がおかしいのだ。
でなければ、大切な人を2人も失うことなど無いはずだから。
「こんな事なら、あんたなんか生むんじゃなかった・・・」
その通りだと思った。
と同時にそんな母の姿が、自分の姿と重なった。
あの時の僕は、バランスを失うというより、
タイトロープから落ちている最中だったんだ。
真っ逆さまに・・・
それからの僕は、毎日毎日、
アズミとの思い出の場所を彷徨い歩いていた。
「助けて!」
「アズミ!アズミ!アズミ!・・・・」
泣きながら・・・
迷子の子供のように
泣きじゃくりながら・・・