終焉
お願いします 僕の時間を返して下さい
お願いします 僕の夢を返して下さい
お願いします 僕の 大切な人を 返して下さい
「ねぇっ!純愛って信じる?」
彼女は無邪気に笑いながら、僕のコートの裾をちょこんと掴みそう言った。
「さぁ・・・」
僕は反射的にそう言い返していた。
「サイテー!!」
ほっぺたをぷっと膨らまし、彼女はそっぽを向いた。
若い子は無邪気で良い。
いや、無邪気であることが無垢たる所以であり、本当の母性の証なのかも知れない。
「そうむくれるなって!」
あやすようにそう言うと、彼女は少しはにかんで言った。
「嘘だよっ!」
愛くるしい。
この場で彼女を抱きしめて、そのまま絞め殺してしまいたくなる。
そう、利己的でない母性を持ついまのうちに・・・
僕は狂っている。客観的にみてそう思う。
自分でも不思議な感覚。
愛おしくて愛おしくてたまらない。一方でその愛おしさを破壊したくなるような衝動。
「苦しいってば!!」
「離して!お願い!」
彼女の声が遠ざかっていく・・・
あの時の僕のように・・・
目の前には、マリオネットのように意のままに動く彼女がいた。
『そうさ。君は救われたんだよ。あらゆる利己的なものから』
『僕は間違ってなんかいない。全てを狂わせたのは・・・あの時の・・・』