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聖女様のターン2

読んでいただき、ありがとうございます。


※本日2話目の投稿です。(本日は3話投稿予定)

 今話もマリカ視点です。

「なんてことをしてくれたんだ!私は……私は、この国の第一王子なんだぞ!」


魔法陣の上、額に従魔の印を浮かべたアルバートが怒鳴り散らしている。


それにしても、仕方が無いとはいえ、こんな奴の額に口付けをしなければならないのが嫌だった。まあ、唇じゃないだけマシなんだけど。

さすがに唇には好きな相手(・・・・・)じゃないと無理だ。やりたくない。


「それをこんな……。私が今まで、王太子になるべく、どれだけの努力をしたと思っている!」

「へぇ〜、そうなんですか?」


聖女の従魔になってしまったアルバートが王太子になることは難しいようだ。


「そんな私の努力も時間も……マリカ、お前が全てを踏み(にじ)ったんだ!」


今まで私に見せてきた王子様らしい姿は欠片も見当たらなかった。猫をかぶっていたのはお互い様だったらしい。


「それでも、アルバート様は元の世界にいるんだから、これくらいいいじゃないですか」


私は軽い調子でアルバートに声をかけた。


「家族や友人……たしか、婚約者もいましたよね?みんな同じ世界にいるじゃないですか。私みたいに突然異世界にたった一人で連れて来られたわけじゃないんですし、そんなに怒らないで下さいよ」

「何を……?」


私に意見されたことに驚いたのか、アルバートの勢いが弱まる。


「アルバート様。私にだって、あなたと同じように元の世界で歩んできた自分の人生があったんですよ?家族や友人だっていたし、努力もして仕事だって決まっていたんです」


私はアルバートを見据える。


「それなのに、あなたたちは私の許可もなく勝手にこの世界に連れて来て、いきなりこの世界を救えと言ってきた」

「な、何を言ってるんだ?マリカは聖女として召喚されたのだから、それは当たり前のことだろう?」


アルバートは困惑したように眉根を寄せる。


「私にとっては当たり前じゃないんですよ」


そう言って、私はちらりと王族のボックス席に目を遣る。そこには第二王子であるシリルがいた。

彼も驚いた表情をしながらこちらを見ている。


シリルは周りからの評判通り、正義感が強く誠実な人なのだろう。そんな彼が私に言ったのだ


『この大陸を救うために旅に出るマリカ様を、従騎士となって守ることが、聖女召喚を主導したこの国の王族としての責任を果たすことだと思うのです』


この言葉を聞いて、内心ため息しか出なかった。

王族としての責任だとか、いい感じのことを言っているように聞こえるが、コイツも何もわかってない。


結局は彼も含めて、誰もが、召喚された聖女はこの大陸を救うのが当たり前だと思っているのだ。

そこには聖女自身の意見も意志も何も含まれていない。 


「私は元の世界で人生を歩みたかったんです。この世界に召喚されて聖女になることなど望んでいません」


私はアルバートだけではなく、このホールにいる全ての人たちに向けて自分の意志をはっきりと告げる。


「しかし、私たちは聖女であるマリカのことを大切に扱ってきたつもりだ」


アルバートが慌てたように口を挟んできた。


「いや、思いっきり政治の駒にしようとしてましたよね?」

「え?」

「とりあえず口説いて惚れさせれば、簡単にいうことを聞くと思ってたでしょ?」

「………」


アルバートは黙り込んでしまった。

やはり、私がモテていたのはグレンにだけだったらしい。ちくしょう。


「だからって、このような恐ろしいことをせずとも……」


懲りずにまたぶつぶつとアルバートが何か文句を言っているので、しっかりと反論することにした。


「皆さんは私の人生を好き勝手にしようとしましたよね?だから、私がされたことをそのままお返しするだけですよ」


そう言って私はにっこりと微笑む。


「こんなふうに有無を言わさずに、自分の生き方を……人生を……好き勝手にされる気持ちがわかりました?」


認識を改めさせるには、実際に体験させるのが一番だ。

突然召喚されて、今までの自分の人生と自由を奪われるかもしれない恐怖を味わえばいい。


「聖女マリカよ、そなたの気持ちはよくわかった」


王族専用のボックス席から低く威厳のある声が響いた。

ようやく、この国の最高責任者が動くらしい。


「このような真似をして……一体何を望んでいる?」


やっと、この言葉を引き出すことができた。


(これで対等……いや、まだちょっと足りないか?)


しかし、ひとまず交渉の場につくことには成功した。

私は気合いを入れ直し、自身の望みを国王に告げた。

次話で完結予定です。

土日は書けそうになくて、本日まとめての投稿になります。よろしくお願いいたします。

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