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婚約破棄された悪役令嬢は北の修道院に往く  作者: 鳥鼠 ゆき


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四十二話 再会

「!?」

絶句し言葉が喉に詰まります。


「これは、その証みたいなもんだな」

チラリとご自分の頭上を見上げて、ザハエル様はおどけて見せます。神格からの使命のため、上位の存在からの支援が受けられるのだそうです。

また私を気遣ってか、小間使いはつれぇぜ、などと仰っていました。


「……キャディキャディ様を、こ、……倒されるのですか?」


「相手次第だな、取りあえずアレは止めさせねぇと」


「そうですわね」

本当はお二人に、戦ってなど欲しくはありませんが、全てキャディキャディ様がされている事ならば、お止めしなくてはならないとは思います。

既に被害が出てしまっていますし。


「すまない、行くぞ」


「は、はい」


ザハエル様は、直ぐにまた王都へ向けて進み始めました。

進む毎に辺りは暗くなり、雨が降り始めます。地表は水に覆われて、水路ばかりか道が川のように成っておりました。

雨粒はザハエル様が避けて下さいますが、あまりの降水の多さで、水の膜に包まれてしまいます。


まるで、()()()()が発動しているようですわ。


「このまま奴の領域に突っ込む、キャディが出て来たら、説得してくれ」


「はい!」

バリンと何かが割れる音が響きました。

キャディキャディ様が、他の神霊様を遠ざけるため、施されていたものをザハエル様が壊されたのでしょう。

王都の中に終に入って行きます。


中心部に進むほど、どんどん被害が酷くなっていきますわ。

家屋は流され、人々は逃げ惑い、屋根の上に避難している方達まで居ります。しかし、おかしいですね、こんな状態ですのに、騎士団や魔術師団が民の救助をしている様子がありません。


「おい、見ろ。居たぞ」


下ばかり見ていてたのですが、ザハエル様に促され、視線を上に向けます。


「あれが、キャディキャディ様、ですか……」


王城前、その上空に小さな人影が浮いているのが見えます。まだ遠くてはっきり致しませんが、それが以前のキャディキャディ様ではない事は、直ぐに解りました。

周囲には、水柱が幾つも立ち上がっています。その様はまるで川が怒、鎌首を持ち上げたかのようでした。

「肉の身体を得たか」


「にく?」


「怯むな!」


「撃て、撃てぇ!」


「何をしている、早く、早く悪魔を殺せ!」

あれは、ブレダン王太子……。

何と言う事でしょうか、王国の騎士達が王太子の指揮の下、戦っているようです。結界が発動し、数多の魔術がキャディキャディ様目掛けて、放たれています。


信仰している、神霊様を攻撃するなんて!!


「……ああぁ!」


キャディキャディ様!?

魔術が炸裂致します。キャディキャディ様は、大丈夫なのでしょうか!?


「ザハエル様、キャディキャディ様が」


「大丈夫だ、キャディの方はな」



「やったぞ、悪魔を倒した!」


「おおぉー」

王城側は勝ち鬨の声を上げておりますが、爆発の煙が晴れると、それが直ぐに落胆の声に変りました。

ザハエル様の仰る通り、キャディキャディ様は無傷の様です。無事で良かった。


しかし、安堵した直後でした、キャディキャディ様がお手を振られると、水柱が倒れ込みます。大波が起き、王都の中で一番高い位置にあるはずの王城を襲いました。

膨大な水量に、防御結界が押し流され、美しかった王城の全面が瓦礫へと変えられてしまいます。


「ははっざまぁ~」


「ザハエル様」


「解ってるよ、これ以上キャディキャディに生き物を殺させるのは、拙いってのは」

そう仰ると、ザハエル様は神術を唱え、人々を守って下さった様でした。

波が引いていくと、王城の人々が漂着物の様に転がされ、残されております。その中には、ブレダン王太子や妹のアナベナも、勿論居りました。


「げほっげほっ……ひ、ひぃ化け物め!」


「けほっけほっどうして、私がこんなめに」

ザハエル様、負傷からは守った様ですが、彼らはずぶ濡れのドロドロです。

操られていないところを見ますと、態々ご自分の水の中に沈められたのでしょうか?


チラリと見ると、視線を外されました。

わ、わざとされたのですか、確かに私も思うところはありますけれど……。


「そんな事より、キャディキャディだ、まだ話が出来ると良いんだが」

キャディキャディ様を追って、ザハエル様も王城の更地になった前庭部分に降り立ちます。

私も、そっとザハエル様腕の中から、下ろしていただきました。


「お、お前は!」


「お、お姉様!?」


「天使だ」


「天使様と……」


「や、やはりあっちが本物……?」


色々な声が聞こえますが、私はそれに応える余裕はありません。キャディキャディ様が、キャディキャディ様が直ぐそこに、いらっしゃるのです。

その小さな背中に、呼びかけました。


「キャディキャディ様!!」

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