三十七話 声は届かない
「私は、私はここに居りますわ!!」
「…………マリーはどこ……どこ……?」
思いあまって私は名乗り出たのですが、その人はフラフラと明後日の方に歩いて行ってしまいます。どうしてなのでしょうか?
私を探しているはずですのに。
「お待ち下さい!」
「駄目よ」
「むぐぅ……」
フェリスさんに手で口を塞がれ、止められてしまいました。
「おーまーえーらーなぁ、危ないって言っとろうが!」
「そうよ、また襲われたらどうするの」
「お前もな」
フェリスさんもアマト様に睨まれて、謝罪させられて居られます。しかし、私は操られたまま離れていく方の背から、視線を外せませんでした。
どうして先ほどの様にならなかったのでしょうか?
「……なぜ?」
「……さっきは、名前に反応したのかもしれねぇな」
探せと命じられてはいるけれど、私の姿が解らないのだろうとの推測でした。その上、意識を支配されているので、周囲の状況を、あの方自身では正しく認識出来ていないのだろうと。
「どうすれば、彼らを解放する事が出来るのでしょうか?」
アマト様に伺いますが、厳しい表情をされて首を横に振られます。
「今は難しいだろうな、本体を叩く必要がある、だろう」
「そんな……」
「なら、取りあえずは、名前を呼ばなければ大丈夫よね? 宿屋とかには泊まれるかしら、それともここの神殿に保護を求めた方が安全かしらね」
フェリスさんが仰った事で、ハッと気が付きました。途方に暮れている場合では、無かったのでしたわ。
安全を確保して、修道院へ報せを送る。
依然目的は変らず、キャディキャディ様にお目にかかる事なのです。
キャディキャディ様に無事をお知らせして、神術についてお力を借りる事が出来るように戻りましたら、私を狙う意味も無くなり襲撃も止むかもしれません。
そして、彼らが解放されれば、これ程いい事は有りませんわ。
暫く周囲の状況を見計らいまして、私たちは町の宿屋へと移動致しました。
通りには数人ずつ、私を探している方がいらっしゃいましたが、それを止めようとしている方も居りまして、どうもこれが人々の中では奇妙な病と思われている様子です。門番の方がされていた話題でしたね。
神殿でも治療が出来ずに、困惑していると宿屋の方も仰っていました。
これが、私一人捕まえるために王太子ブレダン様がする事でしょうか……?
「やっと落ち着けたわね、それじゃあ冒険者ギルドに依頼を出しに行ってくるわね」
一人になると危険だろうと、借りた三人部屋に荷物を置くと、フェリスさんがそう仰いました。
「場所は解るか?」
「だいたいなら、後は聞きながら行くわ」
しかし、少し待って下さい。自然な感じで進めていらっしゃいますが……
「フェリスさんお一人で行かれるつもりですか!?」
「そりゃそうでしょ、マリーが狙われているんだから、アマトは護衛だし」
「そうかもしれませんが」
「大丈夫大丈夫、気を付けて行って来るから、アマト、マリーに変な事したら許さないわよ」
「するかよ」
「あ、ちょっ」
フェリスさんは、私が止める間もなく部屋を出て行ってしまいます。すると、アマト様が窓を開けて、大鳥のお姿の分霊体を放ちました。こっそりと護衛をするとの事で、それならば、確かに安心かもしれませんが。
「そう心配するな、それよりも、此方はもっと猶予が無くなった」
「どういう事でしょうか?」
フェリスさんが出掛けられますと、急にアマト様が慌て始めました。下ろした荷物から紙とペンを取り出して、何か書き始めます。
「悪いが、移動しながら説明する」
「え、あの」
短い文章を書き終えると、手を引かれて部屋を出ます。今来たところですのに、それに私は外には出ない方が良いというお話では無かったのでしょうか?
「あ、あ、あの、アマト様フェリスさんは」
「彼奴はここに置いて行く」
「ええ!?」




