三十五話 浸食
町の外壁が近付いてきます。
以前通り抜けた時は、好奇の目で見られていたのを思い出します。ただ、その時私は罪人として、晒されて居りましたので、仕方がない事。
むしろ、罵倒など掛けられる事無く、遠巻きにされていましたので穏当だったと思います。
「顔を出すなよ」
「は、はい」
馬車の窓を閉じて、カーテンを引き、万が一覗かれた時のためにフード付きのローブを目深に被ります。
周囲の音に注意して居りますと、町の入り口、外壁の門に付いた事が解りました。
警備の兵士でしょうか話し掛けてきます。
「初めて見る顔だどな、、身分をこに証明する物はいるのあるか?」
「何のためにこの町に来た?」
「冒険者だ、修道院から王都に向かうため、神職の護衛をして来た」
アマト様が二人の兵士に返事を致しました。
嘘は全く言っておりませんわね、詳細にも話しておりませんが。
ただ、やはりSランク冒険者と言うのは、大きいのでしょう。見えなくとも、場が気圧されたのが解ります。
お陰でしょうか馬車の中までは、確認されないようでした。
「……ま、冒険者カードをりー確認した」
「王都で、大きな災害があったと聞いたが、その件で?」
「ああ、そうらしい、詳しい事は行ってみないとだがな、何にしても回復要員は重要だろう」
良かった、どうやらすんなり通れそうです。
「そうか……出来たら、この町の神殿にも寄って、手伝って欲しいんだがな」
「この町でも何かあったんですか?」
フェリスさんが問いますと、相手の方は躊躇われながら仰いました。
「ああ、ちょっと、その妙な病気が流行っているらしくてな」
「どこにいるの!」
「おい、確りしろ」
何でしょう、答えた方とは別の方が、急に話しに割り込まれた、のでしょうか?
「? 町の宿屋があれば滞在するつもりだ」
「そ、そうか、もう大丈夫だ行ってくれ」
「解った、じゃあな」
「時間があれば、神殿にも寄らせていただきますね」
「ああ、すまんな」
馬車が再び走り出しました。
無事に町の中に入れたようですわね。何だか少し、兵士との会話に違和感がありましたが……。
「……」
「……」
もう大丈夫でしょうか、門から離れるのを待って、前方の窓を少し開けてお二人に話し掛けてみましょうか。
「フェリスさん、アマト様」
「だめ、マリー」
「ばっ名前を呼ぶな!」
「?」
何が起きたのか、解りませんが窓の隙間から見えたのは、虚ろな人々がフェリスさんの声に反応して一斉に此方の振り向いた瞬間でした。
その視線は正気を失っていると、そう何故か直感的に理解してしまいましたし、視線を合わせ私を認識されてしまった事も解りました。そう失敗をしてしまったのです。
「ぅ、ごめ」
「いいから馬車を飛ばせ」
直ぐに馬車が速度を上げて、走り出しました。凄く揺れて怖いくらいですが、それなのに誰かが車体に飛び付きしがみついた様です。
窓を叩き、掌が擦る音が致します。
「っ!」
「座ってろ、水よ」
アマト様がそう言われると、放たれた水流が人々を引き剥がしていきました。




