三十四話 町へ
「なんて事なの彼奴ら!!」
「フェリスさん」
「おう、今日も元気そうだな」
フェリスさんが起きて来ましたので、昨日の出来事と今の状況を整理、説明しているところです。
王都から来た使者であるはずの、男爵の子息と兵士たちから毒を盛られた上に、襲撃を受けそれをアマト様が退けた事。
そうして被害はありませんでしたが、森の中に放置されてしまった事ですね。
私たちが使っていた馬車も馬も一緒に放置されていますので、移動は出来そうですが……。
「取りあえず、守ってくれて有り難うね、助かったわ」
そう言って、フェリスさんは頭を下げられました。アマト様が一緒に来て下さっていなかったらと思うと、私もぞっと致します。
「どうしたやけに素直だな」
「なによ、お礼ぐらい言うわよ。……やっぱり、その、強いのね」
「本当にどうした?」
「もう、頭ぐちゃぐちゃにしないで、ちょうだい。ちょっと悔しいのよ。マリーに変な事されないように気を付けてたのに、まんまと毒を盛られて……」
フェリスさん、そんな風に考えて、行動して下さって居たのですね。
私一人まるで無警戒で居たのが、恥ずかしいです。
「気にするな、ずっと気を抜かないなんて事、不可能なもんなんだ」
「そうです、私なんて何も考えずに過ごしてしまっていましたもの」
「マリーはマリーで色々悩み事があったんだろ。ま、問題は次の行動だな、どうするか?」
どちらにしても、王都には……と言いますより、キャディキャディ様には会いに行きたいです。しかし、命を狙われて、フェリスさんをこれ以上巻き込む訳には参りません。
一度、修道院に戻る方が良いのかもしれませんね。
「修道院に戻り、神官長様にご指示を仰いだ方が宜しいでしょうか?」
「そうね。でも町が近いし、そちらに行って冒険者を雇って護衛を増やすか、私たちは動かず修道院に連絡して貰うのが、良いかも知れない」
「なるほど、その方が安全でしょうか?」
「俺様が居るのに、護衛の追加はいらねぇぞ?」
「それじゃアマトが少しも休めないじゃない、護衛に馬車の操縦に」
「……あー馬車の操縦、か」
「まさか出来ないの?」
馬車の操縦、私も勿論出来ません。思わぬ問題が浮上してしまいました。
「いや、馬には乗れるから行けるだろう」
「無理でしょう、私も駄馬の1頭引きのしか操縦した事ないから自信がないし」
「何だ、お前が出来るんじゃないか」
「だから、自信がないって言っているでしょ」
「大丈夫だろう、できるできる」
「や、やっては見るけど……」
ザハエル様はまた手加減して下さいまし。
しかもフェリスさんに無理にお願いして出来たとしても、先ほどフェリスさんがアマト様に仰ったように、慣れないところに修道院までずっと一人でなど、大変でしょう。
倒れてしまいますわ。
「無理はしないで下さい、駄目そうなら歩きましょう。どちらにしてもやはり町に行って、人手を頼んでみましょう」
「……解った、頑張ってみるわ!」
心配です。
強敵に立ち向かう表情をしていらっしゃいますよフェリスさん。
「本当に、無理はしないで下さいませ」
それから、試しながら馬車を動かして戴いて、町へと向かう事に成りました。
フェリスさんが仰るには、何とかゆっくりなら指示に従って動いてくれる様です。ただ、四頭立ての馬車なので、気を抜くと凄く速度が出て、そうすると制御が難しいそうです。
「大丈夫かー」
「大丈夫だから、話し掛けないで」
「お、町が見えてきたな」
「本当ってまだ遠いじゃない。でも、取りあえずあそこまで行けばいいのね」
御者台に二人で座り、フェリスさんとアマト様が話されています。
私は馬車の前側の窓を開けて、会話に参加させて戴いております。
「町に入るのに多分身分証なんかを求められる、俺のギルドカードでだいたいは押し切れると思うが、ぶっちゃけ変な取り合わせだからな怪しまれるかもしれん」
「そうね、特にマリーは出来るだけ、隠れていた方が良いわ」
「解りましたわ」
私への襲撃が、誰の指示かによっては、他にも来る可能性があります。
男爵子息の個人的な凶行、っと言う事もまだありますが……。




