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婚約破棄された悪役令嬢は北の修道院に往く  作者: 鳥鼠 ゆき


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十九話 お茶会

ザハエル様は、鉤爪でバスケットを掴むと、ふわりと飛んで帰って行かれました。

衝撃的でしたが、知れて良かったと思う事が多かったように思います。

色々と思い直す事が出来ました。


「……」


それから、浴場の掃除を済ませて、私も戻ります。


他の細々としたお手伝いをお昼まで熟していましたが、だんだんと近付く予定に、そわそわしてしまいます。

休憩の時間は限られていますから、出来るだけお茶会に使いたいのですわね。


「楽しみにし過ぎよ」


「申し訳ありません」

そう仰いながらフェリスさんも、自室に準備をして下さっていました。小さなテーブルに、可愛らしいレースのクロスが掛けてあります。小ぶりの花瓶には小さな野の花が。


椅子も宿舎の個室には一つずつですので、何方かに貸して戴いたのでしょう。


「こんなモノしか用意できなかったけれど、文句は言わないでよ」


「とんでもありませんわ」

文句など有るはずがありません。

気持ちが籠ったおもてなしに、中身の無い絢爛さなど敵うはずがありません。


「まあいいわ、早速お茶にしましょ」


「あ、お茶は」


「入れられるの?」


「申し訳ありません。教えて戴けますか?」


「別に、謝る必要ないわよ。準備は万端なんだから」

最近フェリスさんは、言い回しは変らないのですが、時々とても優しい表情を私に向けて下さるのですよね。


私も自然に頬が緩んでしまうのですが、そうすると彼女はプイッと他所を向いてしまわれるのです。


「ごほん、ほらじゃあ入れて見せて上げるから、見ていて」


「よろしくお願い致します」

カップとポット、それに熱湯も用意されていたようで、手際よくフェリスさんがお茶を入れて下さるのを、確り見させて戴きました。

私、お菓子以外は何も貢献しておりません。不甲斐ないです。


せめて、お茶の入れ方は、今回で覚えたいと思いますわ。次回までに、次回があるか解りませんが。

確り練習しておきます!

「はい、こんな感じね、上手く出来たかしら?」


「ええ、良い香りです」


「うんっでは、いただきましょう」


「いただきます」


美味しい、それに温かさが喉を滑り落ちながら、身体の疲れを癒してくれるような気がいたしますわ。


「美味しい……」


「お菓子も食べましょうよ、折角なのだから!」

二人でリボンを解き、箱を開けると中には色とりどりの焼き菓子が、入っておりました。目にも楽しいですわね。ジャムが乗っているもの、間にクリームが挟まっているもの数は少ないですが色々あります。


「くすっ」


「ふふふ……」


食べてはどちらからともなく、笑い合って居りました。

それから、お仕事の合間の他愛ない出来事を話し合ったり、面白い神官様のお話を教えて戴いたり。とても、楽しい時間を過ごす事が出来ました。


本当にこんなに楽しい。


貴族のお茶会や会食は、仕事のうちですから楽しくなくても、当たり前なのですけれど。

それでも、それでもです。


「……楽しい時間は直ぐに過ぎてしまいますわね」

お菓子もお茶も、ほぼ空けてしまいました。

そろそろ休憩の時間も終わり、午後の勤めに戻らなくてはなりません。

残念ですね、また、機会を見付けてフェリスさんをお誘い出来れば良いのですが。


「あ、もう時間っか……」


フェリスさんもこの時間を惜しんで下さっているのか、俯かれ少し暗いお顔をされました。

それから、居住まいを正されると、頭を下げられました。


「ごめんなさい! わ、私、言わないといけないとってずっと思っていて、貴女の事、勘違いしてた」


「えっ」


「貴女、全然嘘つきじゃないのに、酷い事を言って。本当にごめんなさい」


「いえ、わたくしは」


「噂を疑いもせず信じ切って、私、神官長様に聞いたのよ。どう言う事なのかって、そしたら……貴女が聖女として祭り上げられたのは8歳の時だって言われて、よく考えれば……よく考えなくても解かる事なのに」


驚いて、私は何も言えなくなってしまいました。

フェリスさんの謝罪にも、神官長様が彼女に仰られた内容も……。


「言われて初めて気づいて、政治的な何かがあって大人たちが幼かった貴女を利用したんだろうって。でも本当は貴女は、マリー様は本物の聖女なのじゃないかって私」


フェリスさんは、そう言うと更に椅子から下りて、跪こうとされます。私はそれに気づいて、彼女を制止しました。

それは、されたくない。絶対にされたくありませんでした。


「やめてください! 私は、私は聖女ではありません。聖女ではないのです。それだけは」


「マリー様……」


「私は、たまたま聖女様に間違われるような事がありまして、それで周りの方にそうだと扱われて……確かに、確かに私は噓つきマリーだったのです。ですから、私は聖女ではありません。敬称も必要ないのです」

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