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婚約破棄された悪役令嬢は北の修道院に往く  作者: 鳥鼠 ゆき


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十七話 天使の仕事

心配していたのですが、暫くしますと、ザハエル様が何でも無い様子で現れました。

天井の開いた窓から、青色の美しい魔鳥が入って来まして、普通に喋りだした時には、驚きすぎで腰が抜けてしまいそうになりましたが。


「最初に会った時より驚いてねぇか?」


「いえ、そんな事はありませんよ」


小動物は神霊様の使い、使いでは無く、ご本人ではありませんか……。

いえ、そんな事よりも、伺わなければならない事がございますわね。


「ああ、昨日の夜に来たぞ、他の連中も暫く寄り付かないだろう。だから今日はお湯はいらない」


「そう言う訳には参りませんが、怪我をされたのですか?」


「いんや、返り血だよ、返り血」

そうだったのですね。怪我をされたので無くて良かったです。

しかし、物騒な単語が天使様から出てきまして、少し不安ではありますが。


「ちょっと手強かったんで、疲れて水浴びして速攻寝てたんだ、飯の用意をするのも面倒でな。今日も本体を動かす気力はねぇ」


ザハエル様は着地した祭壇の上で、伸びて腹這いになります。

とてもお疲れの様子でした。ふわふわの羽根が溶けたスライムのように広がって、不敬ではあるのですが、お可愛らしく感じてしまいますね。


背中をなでなでしたいです。


「……そうなのですね、いったい何と戦いになったのでしょう、邪悪な魔物とかでしょうか?」


「魔物じゃないな、いや人種の分類だと魔物か?」


分類、どういう意味でしょうか?

「ここら辺はまだガバガバの適当だろう? 自分たち以外は魔物と呼んだり、都合の悪い奴を魔物と呼んだり」


「魔術を使う危険な生き物、が魔物ではないのですか?」


「それだと人種も魔物に含まれちまうだろう、いや別に俺様はそれで全然構わないが」

確かに、そうとも成りますか、人は危険な生き物でもあります……。

しかしそれは、何とも他の誰かが聞きましたら卒倒しそうな、お話ですわね。特に権力者はどんな態度を取るか、解りません。


「人の中で、魔術が使える者は少数です」


「そうか、なら人種の中に魔物が含まれるのかな」

上体を起こして丸くなり、クツクツとザハエル様は笑われました。

どうも質問の本題から、どんどん離されている気がいたしますね。


「ザハエル様は、守護天使様……何から何を守護されているのでしょうか?」


「それを聞くか、まぁ教えてやらない事も無いがな、お前口が硬いと言うか鈍いし」

鈍い、確かにお喋りは得意ではありません。

親しい友人もいませんでしたし、妖精のキャディキャディ様とは当たり障りの無い会話をする様にと、言い付けられ、常に見張られても居りました。


今も話し相手と言いましても……!

フェリスさんが……い、居ると想って宜しいのでしょうか?

今日お茶会のお約束を、致しましたし。


と、取りあえず、余計な事を他人に話す心配は無いと、判断されたと言う意味で、受け取っておきましょう。


「そうだな、何の守護かと聞かれれば、うつわを守っていると答えるのが正確か」


「器、ですか……?」


「ああ、この地の霊の宿るべき生きた存在全てだな。その中には、お前の想定する邪悪な魔物も含まれるかもな」

生きているモノなら全て、とても、とても規模の大きなお話で、それは少し呑み込むのが難しいです。

でも、魔物も守る対象なのですね……。


「では、何から」


「外敵から、裏切り者から」


ゾクリとするほど美しいアクアマリンの瞳が、こちらを見つめながら仰いました。

外敵とは、どういう事でしょうか……いけませんね、次々知りたい事が出て来てしまいます。


それに裏切り者も、不穏なお言葉でした。しかし、天使様が直接教義を破った者を、罰したというような話は聞いた事がありません。

勿論、私はものを知らないので、普通にある事なのかもしれませんが。


「あ、勘違いしてるかもしれないが、どちらも普通の生き物は対象に入る事は中々ねぇぞ。外敵、外の神霊が、侵略のために送り込まれた生物兵器とかはあるが」


「そんな、存在が、居るのですか!?」


外、何処かは解りませんが、そこには私たちが信仰している神霊様たちと敵対している存在が、居るのですね。

そして、現在も神霊のザハエル様が疲弊する様な、争いが起きている……?


「侵略のため……せいぶつへい、き……?」


「解りやすく言うと、ゴブリンとかオークとか、あーでもゴブリンと妖精の一部をお前ら混同してるからな、解りにくいか?」


「それは魔物では?」


「まぁそうだが、そもそもアレも通常の生き物を改良して、送り込んだ環境を破壊するようにしたものだしな。元々この地にも在来のゴブリンが居たんだ、其奴らは肌が茶色でもっと小さくて大人しい奴らだったが、あっという間に侵略的混血をされ緑色の破壊者しか残っていない」


人も同じように成らないとは、限らないぞと。

そう教えられて、背筋が寒くなりました。ゴブリンなど、よく聞く身近な魔物です。


「なんてな、まあ現状人種の方が強いしゴブリン程度なら、大丈夫なんだけどな」


「そうなのですね」

良かった、驚かさないで下さいませ。

鳥の姿で表情は無いはずですのに、ザハエル様は意地悪に笑っておられるように見えます。

っと言いますか笑っておられますね。


「まぁな。あーそれから、そうだな大きすぎる災害とか、アンデッド何かの歪んだ霊を元の流れに戻したりとかもだな、俺様はいろいろと忙しいんだ」


「では今回は、そのせいぶつへいき、の強いモノと戦闘をされたのですか?」


「いや、今回は、狂った神霊を殺してきた」

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