十一話 収入を得よう
次の日。
「お休みの日なのに」
「大丈夫ですわ。他にする事もありませんし、それに自分でお金を稼げるのは嬉しい事です」
結果から申しますと、ただ援助していただく事は難しく、当然ですわね。ですから、休日や休憩時間に仕事をし、給金をいただける事になりました。
ですので、本日は一人で仕事に従事いたします。
出掛けていくフェリスさんは、とても心配して下さっていますが。
そもそも、休日に働く事も、反対されていました。
最低限生活を保障するべきだと、言われて。
「フェリスさんのお陰です」
「別に、私は何も、結局大変になっただけだし」
「それでも、助かりました」
「……今日は私は居ないから、気を付けて、神官様とかみんなに聞いて助けて貰いなさい! いい解ったわね!」
沢山心配していただいて、何というか喜んではいけないのですが、胸の中がほわほわいたします。
みなさんにご迷惑を掛ける訳には行きませんので、何とか頑張ってみますわ。
「解りました。ありがとうございます」
心配そうにしながら、フェリスさんは出発されました。
最初、自分も休日返上して働くなどと、言われていらしたので説得できて良かったと思います。今日を逃せばまた買い物や、外での用事を済ませるのに2週間待たなければいけませんから。
彼女は近くの村に家族もいらっしゃいますし、少ない休日お目にかかりたいでしょう。
「さて、一人でも確り出来る所をお見せするために、頑張りましょう!」
何時もの書写の仕事は、今日は他の方がされて居ます。治療所のお手伝いは、今は止めておいた方がいいと言う事になり。
本日は、神殿にある浴場の掃除をする事になりました。
礼拝に来る方や、近くに住んでいる人々が利用しているらしく、二つある施設を交互に解放しているのだそうです。
「まぁ……」
沢山の方が使われているので、中々どうして汚れておりますね。
階段状になっている大きな湯船、中に溜まっている水は濁っています。優美な彫刻を施された石柱もちょっと水垢でくすんでいますわね。
瓶を傾けて、水を注ぐ小さな天使たちも困っているように見えます。
「さぁやるわよ。貴女水属性の魔術が使えるのよね」
「あ、はい!」
「それは助かるねぇ」
ここでも魔術を使える事は歓迎していただけるようで、汚れた水の排水を促したり、モップで擦った場所を流したり、活躍出来ましたわ。
しかし、浴場のお掃除も全身運動ですわね。最近筋肉痛も軽くなって参りましたが、これはまたあの痛みを味わう事になりそうです。
でも、それにもだんだんと慣れてきて居るのですよ。
何と言いますか、鍛えられて行っている感じがしまして、嬉しいのです。
それに。
藁の束で壁面を擦っていると、並んで同じように擦っている、年上の女性と視線が合い。眼を細めて、大丈夫かと気遣っていただけました。
ありがとうございます、大丈夫ですっと笑顔で返答して、一緒に頑張ります。
何よりみんなで色々な事をするのが、楽しいです。
「マリーさんお願い、こっち来て、こっちの湯船も水で流してくれる?」
「あ、はい。お任せ下さいませ」
呼ばれて付いて行きますと、建物の中、ずいぶん奥まったところに進んで行きます。
何というのでしょう、荘厳な雰囲気ですわね。聖堂にも似ています。
行き止まりの大きな扉を開けて入りますと、やはりそこも浴場のようでした。
白い大理石と、青い装飾。魔石が所々はめ込まれた天空の女神様の像が、壁の一面に彫り込まれております。
「美しいですね……」
「こっちは人用では無いからね」
「え?」
「神霊様用なのよ。だから誰も使ってないって訳」
「使われたとしても、人間みたいに汚したりしないんでしょうね」
「まあね。本当湯船で排泄する奴、罰が当たればいいと思うわ」
わははっと年配の修道女の方が豪快に笑われました。
た、確かに先ほどの浴場は汚れていましたわね。ここの方々は掃除に余念がありません。掃除をして、清浄に保つ事こそ修行の第一歩なのだそうです。
ですので、毎日きちんと定期的に掃除していて、あの状態なのですから苦労が偲ばれます。
「使わなくても神霊様用を、汚くして置く訳には行かないからさ」
「垢は無くても、埃とか水もそのままだと腐るからね」
なるほど、そうですわね。
それに神殿なのですから、むしろこちらが本命とも言えます。
「さっと水で流しておくれよ」
「水垢が酷いところは私たちで擦るからさ」
「解りました。でも私も、確りお掃除いたしますわ!」




