第1回公判前整理手続き
短いですm(_ _)m
「それでは、東ライブ傷害致死事件 第1回公判前整理手続きを初めます」
AZUMA TVのライブストリーミング中の事故に因んで名付けられた名前とともに一回目の公判前整理手続きの開始が松前裁判官長により、宣言された。
今回の公判前整理手続きでは検察側が事前に提出した証拠調べ申請に基づいて判事が審理した内容、被告弁護士が証拠の情報開示を求めたものの提示などが行われていく。
公判前整理手続きにおいて、最も重要なことは争点の洗い出しだ。審理が長引けば、裁判員を長期間に渡り拘束することになるため、本番の公判で争うポイントを絞ることが求められる。
「検察としては当日のセットの状況、被害者と同じ承諾書にサインした、他の参加者の証言を得ている。まず、安全確保として、セットの小道具が発泡スチロールで作られていたこと、床は暑さ50センチの格闘技用のマットを路上に見えるように塗装して敷きつめるなどをしていたとあるが、これについては確かに使われた資材の納入状況や、現場の確認で確かめています」
九条検事が被告側の主張に間違いは無いことを認める。これに被せるように本橋弁護士が切り込む。
「草薙先生、示談の方は受けて貰えませんか」
「本橋先生、それは今言うことではないでしょう」
所長が冷静に流す。
今回の事件というか、事故はライブ放送中に起きた。
AZUMA TVの年一の人気企画、○○出来たら1000万という、公募による参加企画で、ただし参加者についてはかなりヤラセがある感じで、まあ、打ち合わせで予定した通りの参加者が企画にチャレンジするも失敗するという予定調和を楽しむものといった感じなのだが、今回の企画 「浅科 捲にストリートで勝ったら1000万」は公募の段階から、いつもに増して炎上していた。
理由は大きく5点
現役格闘家が公募の素人を相手にする企画内容だった点。
ストリートという曖昧な表現により、ルール設定が明瞭ではなく、事故が危惧された点。
あきらかに強そうな公募者や、経験者、元プロアスリートや現役アスリートの挑戦を面接で落とした点。
そうした、不可解な選抜をしながら、「本気でやれば彼等は僕に勝てない」と宣言した点。
結果的に選ばれたのが、元アイドルや素人の喧嘩自慢で格闘技未経験者の上、体格的に浅科より小柄な人物が二人に現役格闘家とは言え、ほぼロートルのストライカータイプの選手だった点。
それでも、ブックがあり、台本通りな展開で、浅科最強とやったとしても、アンチが炎上して、信者が擁護する展開で盛り上がれば、製作サイドとしては予定通りだった筈だ。
しかし、実際には一人目の挑戦者も大怪我を負い、今回の被害者は放送中に緊急搬送されて、搬送中に死亡した。
経緯はこうだ、元アイドルで不祥事が原因で芸能界を追われた被害者は持ち前の身体能力で浅科氏に組み付いたものの、腹部を強打されて崩れ落ち、そのあとに激しく路上に見えるように塗装されたマットへと叩き付けられた。
その際、受け身を取れずに後頭部を強打、既に朦朧としていたと推測される状況で腹部に蹴りを受けて、起き上がることが出来なくなり、過呼吸に異常な発汗、意識の消失が確認されて、緊急搬送となったものの、蹴りから、救急車への要請に時間がかかり、結果、搬送中の死亡となってしまったのが、今回の事故の詳細であり、死因は後頭部強打による頭部内出血、腎臓内部破裂によるショック症状だと認定された。
これにより、世論は大炎上。浅科 捲、AZUMA TVは殺人者としてバッシングのただ中にあるものの、彼等は被害者が事前に承諾書にサインしていることなどを中心に無罪を主張して、本橋弁護士がそれに注目して、弁護を買ってでた。
法曹界にいる多くの人間の考えは、今回のケースでは事前の承諾書が違法性を阻却出来うる事由にあたらないとの見方が強い。
本橋弁護士が依頼を受けた当初から、原告の被害者遺族に対して示談を持ち掛けているのも、このあたりが大きいだろう。
結局、第1回公判前整理手続きでは、検察側の事前に提出した証拠の確認とそれを踏まえた、被告側からの新たな開示請求があったあと、今回の事件について、傷害致死、及び安全管理の不備については原告、被告側双方で、ある程度は同様の見解で一致、おおよそは違法性を阻却出来るか否かが争点となることで合意して終了となった。
第2回以降の手続きもほぼ同様の展開で、正直、本橋弁護士がこの弁護を自ら名乗り出て、強気を崩さない理由がわからない。
既にネットを中心として、浅科 AZUMA TVと同等かそれ以上に叩かれている。
何かしら秘策があるのだろうか。
ほぼ、原告側の主張が通るだろうと確信しながら、遂に本公判が始まろうとしていた。
次回より、公判(裁判)スタートです。
冒頭陳述から検察側の証拠調べ請求までになると思います。