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6話 レミはお嬢様のキスを、受け止めます。

 

 

  お嬢様はちゅーが大好きだった。嬉しくなったりテンションがあがると母様や近くにいるメイドにすぐちゅーしてしまうらしい。

  

 ……しかも、お嬢様がちゅー大好きになったのは私のせいだった。

 

 母様は喜ぶからと私にたくさんキスしてくださった。その後、同じように赤ちゃんのリアお嬢様にもキスしていたら……いつのまにちゅーが大好きになって、お嬢様の方からちゅーするくせがついてしまったらしい。

 

 

「だからレミのおかげでリアはキス好きになったのよ〜」母様は嬉しそうにそう伝えてくる。

 

 そう言われると……恥ずかしくて、嬉しい。たくさんお嬢様のキスを受け止めてあげなければ、とやる気になってしまう。……母様がいないとき、寂しくないように満足させてさしあげたい。私のくちびるでよければ、だけど。

 

 

 

 

 私は母様やリアお嬢様と別れ、今日の出来事を報告するためにメイド部屋の前に来ていた。

 

 メイドのみんなは多分心配してくださっている……早く報告して、悪いことではなかったと安心させてあげないと。

 

 でも、ちょっと気まずい。リアお嬢様のお世話をしたがっているメイドは多い。今までは日替わりでお世話をしていて、「今日私がお世話するんだー」「いいなー」みたいに自慢したりうらやましがってる会話はよく聞く。

 

 だから他のメイドをさしおいて、私がお嬢様のお世話をしてしまうのは……もうしわけないなぁと思ってしまう。

 

 そんなことを考えて、ドアを開けるのをためらってしまっていた。

 

 ぽにゅ。私の頭に何かが乗っかる感触がある。なんだろう? 手を伸ばして触れてみる。

 

 むにゅ、むにゅむにゅ。左右に二つ……まるくてやわらかい。触れる指の感触が心地よくて、たくさんもみたくなる。

 

「きゃー、レミのえっちー。へんたいー」棒読みなセリフがやわらかの上から聞こえてきた。

 

 あわてて振り向くと、顔がやわらかにぶつかって、包まれてしまう。「ぷにゃっ」おもわず変な声が漏れてしまう。

 

「触るだけじゃなく、顔も埋めるなんてー。すけべー」と言いながら声の持ち主は私の背中に手を回し抱きしめてくる。この声は……心当たりがある。

 

「わぷっ」顔をあげると、そこには高校生にしてバイトメイドの一人、リコの顔があった。にやにやと笑っている。頭の上に乗っていたやわらかの正体は……彼女の胸だった。母様ほどではないけれど、かなり大きい。

 

「り、リコさん……すみません」私は顔を赤らめて、謝ってしまう。

 

「同僚のおねえさんのおっぱい揉むのはせくはらですよー。メイド長に報告しちゃおうかなー」ふわふわのセミロングの髪を指先でくるくるしながら、リコは小悪魔な笑みを浮かべる。

 

「そっ、それは……」

 

「代わりに今日一日、リコお姉様って呼んでくれたらヒミツにしてあげます〜。ほら、スイも見てるから言い逃れはできませんよ〜」

 

「いやいや、えん罪じゃん……私からはリコがセクハラしてるようにしかみえんし」少し後ろで呆れ顔になっている女子高生はバイトメイドにしてリコの幼馴染の友達、スイだ。背中には肩掛けタイプの通学カバンをリュックみたいに背負っている。

 

「ほら、レミちゃん困ってるじゃん、はなれなって」スイは二人の間に入ってくれる。

 

「私とレミの間を引き裂くのー?」リコはほっぺをふくらませる。

 

 リコとスイ。二人は高校生で、いわゆるギャル? というものらしい。肌が白いリコが白ギャルで、肌が褐色のスイが黒ギャル……とメイドの間では言われている。本人達は否定するけど。

 

「リコのものじゃないっしょ」とスイが言うと「たしかに」とリコは素直に納得する。

 

「リコ……おねえさまとスイおねえさま」私はそう呼んでみる。

 

「わ、ちゃんと呼んでくれた〜。レミちゃんのそういうとこ、すき〜」リコはそう言ってまた私に抱きつこうとした。

 

 それをスイは止めながら、「いや、リコの言うこと真に受ける必要ないって……。でもおねえさまって言われるのけっこういいな……」と少しにやけている。

 

「いま学校から帰ってきたんです?」私はたずねる。

 

「んー、そんなとこ。今日は土曜だから早く終わるんよ。あれ、イメチェンした? 服の色違くない?」スイは私の服装を見て言う。

 

「はい! 今日レミは一人前のメイドになりました!」私は少し胸を張って報告する。

 

「まじ? やるじゃん」「おおー!」スイとリコは喜んでくれる。

 

「私達おねえさんメイドがしっかり教育したかいがあったねー」「いやリコはセクハラばっかしてたやん」なんて二人は言いあっている。

 

 二人私の教育係としてよく面倒を見てくれていた。学校にいけない私のために、勉強も一からたくさん教えてくれた。

 

「はい、おねえさま達のおかげで立派なメイドになれました! ありがとうございます!」私は元気よくお辞儀をする。

 

「………へへ」「そう言われると……照れるね」二人は恥ずかしそうにしていた。

 

 

「あ、もう中の準備大丈夫?」とスイはリコに話しかける。「んー、もうとっくに大丈夫みたい。私達が時間稼ぐ必要もなかったぽい」リコはスマホを取り出し何かを確認していた。

 

「おけおけ。じゃ、レミここで立ち話もあれだからさ、続きは中ではなそうよ」スイは私の肩をつかみ、メイド部屋の中に入るよう促す。

 

「えっ……はい」私は覚悟を決める。おかかえメイドになった事はどうせ話さないといけない。ドアノブを開き、勢い良く開く。

 

「「「「「誕生日おめでとう〜!!!」」」」パンパンパンパン!!!

 

 メイド達の合唱と同時にクラッカーの音が部屋中に響き渡り、紙吹雪があたり一面に舞い散った。

 

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