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4話 あまえんぼレミは、ちゅーしてほしいです。

 ぎゅっ。母様はまた、立ったまま私を抱きしめてくれる。大きなおっぱいが、私の両頬を包んでくれる。

 

「ふにゃ……」抱きしめられたら心がふわふわして、顔がほろほろと、とろけちゃう。

 

「あとなにか、ほしいものはある? なんでも言っていいわよ」

 

「レミはこれだけでもとってもうれしいです。でも……」

 

「でも?」 

 

「一つだけおねだりしてもいいですか……?」上目遣いで母様を見上げる。

 

「もちろん。なあに?」

 

「きっ、キスをやっぱり……してほしいです」

 

「素直になったわね。いくらでもしてあげるわ」母様は私を振り向かせて顔を近づける。

 

 ちゅ。美しくて柔らかい唇が触れる。……私のおでこに。

 

「ありがとうございます」もちろん嬉しいけれど、ほしかったキスはそれじゃなくて。

 

「違うとこにキスしてほしかった?」

 

「は、はい」

 

「じゃ、ここ?」ちゅ、と今度はほっぺに口づけをしてくれる。

 

「はにゃ……」ほっぺにされるのもとってもうれしい、けれど。

 

「どーこ? ちゃんと言ってくれないとわからないわよ」にこりと、母様は笑みをみせる。それは小悪魔……いや大悪魔のような笑みで。

 

「いじわるです……お口に、ちゅーしてください」つま先立ちして、手を伸ばして母様の首に手を回しながら、私はおねだりする。

 

「うふふ、やっぱりしてほしかったのね……あまえんぼレミちゃん。たっぷりしてあげるわ」やさしくほほえみながら母様は私に口を近づけてくれる。

 

 ちゅー。くちびるとくちびるが、ふれあう。とってもとっても、幸せになる。柔らかい光が、心の中に差し込んでくる。

 

 目をうっすら開いて、母様を見つめる。母様も目を開けていた。目があうと、にっこりと笑いかけてくれる。私もにっこりと笑顔を返す。

 

 ああ、母様に救われてよかった、メイドになれてよかった。私は心からそう思った。

 

 

 

 

「さて、今度は一人前のメイド、レミちゃんにお仕事をお願いしようかしら」

 

「はい……私にできることならなんでもいたします!」私はぐっと両腕で胸に拳を作り、やる気をみせる。

 

「頼もしいわ〜。じゃあついてきて」母様は私の手を引き、廊下をへだてた隣の部屋に向かおうとする。その部屋はたしか。

 

「リア〜。また寝てるの?」母様は部屋の奥にあるベッドに声をかける。そう、その部屋は母様の一人娘、リアお嬢様の寝室だった。

 

「んにゅ」むくり、とベッドから小さな人影が起き上がる。

   

「こっちきて」と母様は彼女に手招きをする。とことことベットから降りて私達の前に歩いてきた。

 

「おふぁよございまふ」ふぁあ、とお嬢様はあくびをする。

 

「おはよう。レミとリアは初対面、だったかしら?」

 

「いえ、何度かお会いしたことはございま? す」パーティやイベントのとき、リア様をメイドの何人かでお世話する機会があって、その時に私も一緒にお世話させていただいたことがある。

 

 でも、リアお嬢様は首を軽くかしげる。覚えてないみたいだ。無理もない……私はお嬢様一人をお世話したけれど、お嬢様はたくさんのメイドにお世話されたのだから。

 

 私は改めて自己紹介する。膝をつき、お嬢様より少し下に目線を合わせる。「はじめまして、私は見習いメイドの……あ」

 

「もう一人前のメイド、でしょ」母様が訂正してくれる。

 

「す、すみません。一人前のメイド、レミと申します」そういうと共に丁寧にお辞儀をする。

 

「レミ……」お嬢様はこくんとうなずく。名前を覚えていただけたみたいだ。

 

「リア……いざなみ、リア」とお嬢様も自己紹介してくれる。

 

「いざなみリア、様。はい、覚えました」

 

「うんうん。やっぱり一人前のメイドになってるじゃない」母様は嬉しそうに私の頭をなでなでしてくれる。

  

「え、えへへ」急に撫でられて私は照れる。「それで、私は何をするのですか?」母様を見上げたずねる。

 

「私の一人娘……リアのおかかえメイドになって、お世話をしてほしいの」

 

「へ?」私は目を丸くさせる。


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