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お嬢様!ピーマン残すなら、口移しで食べさせます!  作者: 紫音 萌
メイドとお嬢様の、幸せな日々。
17/19

1話 お嬢様、おべんきょうをしましょう!


 お嬢様が7才、レミが11才になったある日の事。

 

 私、バイトメイドのスイはリコと並んで座っていた。目の前のテーブルの向かいにはレミとリアお嬢様が仲良く並んで座っている。

 

 今日はお勉強の日だった。レミがリアお嬢様に勉強を教えることになっている。だけどたまに、レミが教え方がわからなくなったり、お嬢様が理解できないときがあったりする。そんなときは私達が一緒に教えてあげる役だった。

 

 まあ、二人とも頭がいいから教える機会はあんまり来ないんだけども。暇なので、私とリコも自習していた。

 

「……10ミリは1センチ……10ミリは1センチ。うん、覚えた」お嬢様は復唱している。今日は長さの勉強らしい。

 

「では……20ミリは?」レミはたずねる。

 

「うーんと……2せんち?」

 

「おお、すごいです。それなら……16ミリはわかりますか?」

 

「16? うーんと……えーと……16せんち、じゃない……えーと」

 

「ごめんなさい、少しいじわるな問題でした。まだ難しいですよね」

 

「あ、1センチ……と6ミリ?」

 

「わあ、正解です! お嬢様、素晴らしいです!」ぱちぱち、とレミは拍手する。

 

「えへへ」とほめられたリアはにこにこと照れていた。かわいい。

 

 二人が仲良くしている様子は目の保養になる。まるで仲の良い姉妹のようだ。つい私もほおがゆるんで、笑顔になってしまう。

 

 リコの方をちらりとみる。「う〜」左手で頭を抱えながら問題集と向き合っていて、今のやり取りには気づいていないようだ。もし見てたらテンションあがって私に抱きついてきただろうに。残念だ。

 

 私は数学が得意な方なので今日の宿題はすでに終わっていた。リコは苦手らしく、半分も進んでいない。「わからない部分、教えてあげるよ」と提案したけれど、できれば自分で解きたいみたい。

 

 のど乾いたな、お茶を作ろう。ついでにみんなの分も淹れてあげよっと。私は席を立ち、部屋の隅にあるティーセットに向かう。

 

 お嬢様はたしか……苦いのが嫌いだから、ミルクティーにしてあげよう。

 

 五分ほどかけて丁寧にティーポットに紅茶を淹れる。牛乳を取りだし、ミルク入れについでおく。お盆にのせ、ティーカップ四つとともにテーブルに持っていく。

 

 ことりと、じゃましないようにお盆を置く。そしてこぼさないようにゆっくりと紅茶とミルクを注ぐ。お嬢様のはミルク多めにしてあげよう。

 

 注ぎ終わったとき、二人もちょうど区切りがついたみたいでこちらに気づく。

 

「ありがとうございます」ぺこりと、レミは座ったまま丁寧におじぎをする。

 

「ありがと!」にこにことリアお嬢様もお礼を言ってくれる。

 

「ん、いいよ。今暇だし」と私は返し、ティーカップを二人の前に置く。

 

「付き合わせてごめんなさい」とレミはまた頭を下げる。

 

「気にすんなって。私も勉強できてるし、リコはこういう機会じゃないとあんまやらないしさ」苦手だからサボっちゃう……リコの気持ちはまあわかる。私も国語とかの苦手な教科はあんまりやりたくないし。

 

「お嬢様、熱くないようにさましますね」と、レミはリアのティーカップを取り、ふーふーする。そして一口飲み、「うん、大丈夫です」と差し出す。

 

「ん」とリアはそのまま口をつけてこくこくと、すする。

 

 それをみてるとまた、ほっこりする。仲睦まじいなぁ、なんて思う。

 

 私もやろうっと。残りのふたつのティーカップを持って席に戻る。

 

 ふぅ、ふぅと覚まし、一口すする。うん、ちょうどいい温さだ。これなら猫舌のリコもちゃんと飲める。

 

 リコはまだ問題と格闘していた。でも少しずつ進んでいる。……あ、あと少しで一段落つきそう、そしたら声をかけるか。 

 

 ティーカップを見つめる。……ゆっくりと回し、自分が一口飲んだ部分をリコの方にむける。

 

「よっしゃ解けた!」とリコはガッツポーズをした。

 

「リコ、お茶いれたからのんで〜」と私は声をかける。

 

「ん、ありがと〜」と、リコはやっと気づき、ティーカップを受け取ろうとする。

 

「や」と私は思わず声をあげてしまう。

 

「え?」と彼女は手を止める。すっ、と私は口元に持っていく。「ああ」と彼女は納得したように髪を片手でかきあげ、口元を近づける。その動作がいつもより美人に見えてどきり、としてしまう。

 

 こく、こく。ゆっくりと彼女はミルクティーをすする。……私が口をつけた場所と同じところに口をつけて。間接キス、しちゃった。

 

「……ふふ」私は笑みがつい、こぼれてしまう。

 

「ん? どしたん?」

 

「あ、いや、リコかわいいなぁ……なんて」私はほめる。

 

「にぇ!? はずっ……」リコはびっくりしながら顔を赤らめる。「スイがほめるの、めずらしいね」

 

「ま、たまにはね。いつもリコほめてくれるし?」リコは好きあらばすぐ私のことを褒めてくれるけど、逆はあんまりなかった。なんかはずいし。

 

「ふうん? じゃキスもして〜♡」そういいながらリコは私に身体をくっつけておねだりしてくる。くちびるをアヒル口みたいにつきだして顔に近づけてくる。

 

「だめでーす。勉強おわってないじゃん」私はアヒルくちびるに人差し指を押し付ける。

 

「つまり勉強終わったらいい……ってコト!?」

 

「さあてね」私は肩をすくめる。

 

「よっしゃ、リコ勉強がんばっちゃうぞ〜」肩をぐるんぐるんまわしながら問題集に戻る。

 

「がんばれ〜」

 

 

 私はティーカップの残りを口にする。もちろんリコと同じ部分に口をつけて。 

 

 

 

 


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