9話:番外編:愛杜の思い
愛杜が思っていたより、ずっと高等学校生活は充実していた。
ほぼ、「陰キャなのに充実してる」と言っても過言ではない。
まず、あの3人だ。
由崎 祐紀。
櫻崎 詩杏。
上原 未菜。
この3人は、言うまでもなく可愛いし、一緒にいて楽しい。
しかし、推しは祐紀である。
「綺麗」、「美人」、「美少女」、「透き通った声質」、「色んな服が似合うスレンダーなボディ」、いろんなパラメーターがMAXで、文句の付けようがない。
ただ、問題は性格だ。
お嬢様キャラに「陰キャ」がくっ付いてきてる感覚。
くっ付いてきてるというか、古い言葉を使ってしまえば「ヲタク」である。
しかし、勉強は真面目にやっており、入学試験においては1番を取ってしまっている。
愛杜自身、入学試験には手ごたえがあった。
まず1番を取れると思ったのに、実際には祐紀に負けて2番だった。
陰キャだけど「新入生代表挨拶」したかったのに。
祐紀は勉強においても1番で、愛杜の中でも1番なのだった。
ただ、3人と接するうちに、みんなの性格も段々わかってきて、これと言って攻略に誰を優先するべきかについては難しくなってきている。
しかも、攻略サイトによると、3年生まで一緒に進級し、東大合格発表の後に告白されるという難易度の高い攻略の仕方しかないのである。
攻略サイトの「言い分」としては、大学生活を3人の誰かと付き合って、結婚まで行くというのだ。
基本、コスプレイベント、コスプレ撮影によって作られる写真集、図書館、喫茶店などのイベントを失敗なくこなしていけばクリアは難しくはない。
ただ、視線の送り方によっては失敗することも書かれている。
「あまり3人の胸をチラチラ見ないこと」と書かれている。当然ながら「Ctrl+A」を押して出てきた情報である。
あと、愛杜は祐紀の「せいで」、紅茶にハマってしまった。
時期的にダージリンファーストがそろそろ出る時期だが、学校2日目に喫茶店で飲んだ味が記憶に「濃い。」
夜は勉強、早朝に新聞折り込みと配達、日中は学校、放課後は4人で勉強して予習復習。
中間テストは正直、祐紀に勝ったと思っている。
実際のところ、同点1位だった。ある意味勝った。
「あ」と「ゆ」である。
掲示板に貼られた名前では、愛杜が一番上に書かれている。
何度も言うが「ある意味勝った。」
だが、ある意味、負けてる。
なぜなら、同点一位と言っても、2人とも満点だったからである。
満点が故に、実力で勝ったわけでもないし、実力が上だから「祐紀」に「勝った」わけではない。
この微妙な感じを理解できるだろうか。
中間テストは出題範囲が分かり切ってるし、授業で先生が出した「聞いてるか、お前ら」的内容も2人は真面目に受けてるのだから逃すはずもない。
そして、これから2人は競い合っていく中になる。
あるイベントが始まるまでに。
話は進み、コスプレもやり、図書館での勉強会、喫茶店でのダベリ。それが、1年半近く続いていく。
特にこのことについて、「あ~や、こ~や」話をしていっても飽き飽きしてくるだけの話だ。
愛杜は攻略法通り行動し、そして「楽しみ」、時にはストレスで胃に穴が開きそうになったり、時間は過ぎていくのだった。
もう4人はいい友達同士になっていく。
時は進み、2年生の9月。新しいイベントは発生する。
では、次の話に!