4話:女の子の御友達
4話:女の子の御友達。
やばい。
男の娘コスプレしてるのがバレてる。
由崎祐紀が可愛い声で言う。
「というわけで、作戦会議よ。」
なにが作戦会議だ。
「いつも眼福な「赤塚 愛杜」君には、おねぇさんが奢ってあげる。」
駅から少し離れた喫茶店に行くことになった。
愛杜は喫茶店で珈琲を飲むなどお金のかかることはしたことがないのだが・・・生まれて初めてかもしれない、喫茶店。
愛杜の喫茶店デビューは珈琲の濃い香りが漂う喫茶店ではなく、紅茶専門の喫茶店だった。
祐紀は手慣れた雰囲気で店員さんに伝える。
「ダージリン・ファースト3つね。」
続けて、祐紀が言う。
「あ、そうそう、あと、もうひとかた来ますから。」
愛杜はとても気まずかった。
コスプレがバレてるのである。
しかも、男の娘コスプレ。学校の男女問わず知れわたったら最後、悲惨な3年間が待っている。
祐紀は言った。
「そんなに緊張しなくても良くってよ。写真を学校でバラまこうなんて考えてないし、コスプレを辞められたらこちらとしても、眼福がね・・・。」
愛杜はさらに緊張した。何を言われるんだろう。男の娘コスプレなんて今では珍しくないが、写真を見せられたら自分だってことが高い確率で学校内でバレてしまう。
しかも、今のカメラにはネガなんてものは一切関係ないし、デジタルデータだからDVD-Rとかに書き込まれて、バックアップなんてされたら永久に消えることはないし、それに「一眼レフ」ってなんだよ。金持ちか?
しかし、由崎祐紀を攻略するつもりが、殆ど学校生活が全体的にヤバくなってきてる。
大体、こんなことは攻略サイトに書いてあった・・・えっ・・・書いてあった?書いてあったかな!?
ああああああ、読んでない!
攻略サイトを信じてなかったから「櫻崎 詩杏」の事ばかりをガン見して、「由崎 祐紀」のところをちゃんと見てない。詩杏からの告白を断ること以外考えてなかった。マズイ。
約5分くらいしてから、ウェイターの御ネェさんが3人分紅茶を持ってきた。
愛杜は緊張していたが、紅茶を口にした。ファーストってなに・・・。
「くぴっ。」
愛杜が飲んだ初めてのちゃんとした紅茶。店に残っていた「最後」の「20〇0年〇ャッスルトン農園DJ1」。
「お、美味しい。なにこれ?」
「由崎祐紀」が落ち着いた様子で頃合いを見計り、声を掛けてきた。
「愛杜君。いや、愛羅様。」
「ちょっと待って!。アイラだけはよして・・・。」
尚、クラスメイトにアイラという子は「いる」。関連性は無いが偶然の一致だ。
「これから、貴方には、私の制服を貸すわ。」
「えっ・・・???」
「だから、貸すわ。」
意味が分からない。今日は理解不能なことが多い。
「たぶん、サイズはぴったりのはずよ。下以外ね。流石にスカートの丈をこれ以上短くしたら生活指導が入ってしまうわ。流石に、東大を"一緒に"目指す相手ですからね。まぁ、東大を目指すのですから、勉強も毎日しましょう。」
さらっと言ったな、さらっと!
東大って言ったな!東大って!
「サークル名は何がいいかしら?」
「由崎さん・・・。話が飛びすぎる。もっと順を追って説明していって・・・。」
「はいはい。私たち"4人"のサークルは、コスプレ写真を作ってコミケで売る事をしようとしてるの。そこで愛杜君には被写体にいなってもらうのと、まぁ撮影は私。さっき見せた写真を見てもらえれば分かるけど、腕は悪くは無いと思うわよ。詩杏にも被写体になってもらおうかと思うわ。ただ、女役としても使えるし、男役としてもね。そして・・・。」
店の扉が開き、カランという音がした。
「遅くなってごめん。当番で・・・。」
「あら、未菜。来たわね。紹介するわ。上原 未菜。うちのクラスの「娘」よ。」
「初めまして、「愛羅」様。紹介のありました上原 未菜です。よろしくお願いします。いつもコスプレ写真見させて頂いてます。私もカメ子で参加したことがありますけど、話したのは二言三言くらいですね。」
「未菜には、メイク+衣装担当と考えてるの。それでも、このルックスよ。愛杜君の彼女候補としてもいい線言ってるんじゃなくて?」
この御嬢様口調はなんなんだろう。
っていうか「彼女候補」とか言いやがった。
4人が妙な趣味のサークルメンバーとなってしまったのだった。