2話 不安と安心
二週間掛かってやっと更新……。まぁ、でもテスト期間だからしょうがないね!テストが終わったら、もう少し早く更新できると思います。多分……きっと……
「──少女を殺せ」
「は?」
いきなりの言葉にそんな声をあげてしまう。
殺せ──日常でも聞くことはあるそんな言葉。だが、この『殺せ』は重みが違う。理解できない。しかし、これだけは分かる──ヤバい。
「そ、そんなこと出来るわけないだろ!」
「いいや、できる。相手は子供一人、出来る筈だ」
「そういう事を言ってるんじゃない!ボクに人は殺せない!」
声を荒げる。ボクに人殺しなんて出来るわけが……
「何を言ってる?君はすでに人を殺したじゃないか。忘れてしまったか?」
忘れてなんかいない。忘れられるわけがない。今でも鮮明に思い出せる。人の頭が潰れる音を。感触を。命が散りゆくその瞬間を。
再び気を失いそうになるのを、辛うじて耐えるが、顔にでてしまっていたらしい。
「思い出したか。君が人を殺した事が世間にバレたら……。なぁ分かるだろ?君のためなんだ」
「ボクの……ため……?」
「あぁ、そうだ。残りの人生を豚箱で過ごしたくは無いだろ?君のために言っているんだ。ただ、自分の尻拭いは自分しろと言っているだけだ」
確かにそうだ。あの女の子さえ居なくなれば、きっと大丈夫。ズキンと心が痛む。でも、仕方ないんだこうしなければならないんだ。と、そう自分に言い聞かせる。
「……どうすればいい」
「情報はまだ漏れていない。君の能力なら確実に殺せる。安心しろ少女の居場所は割れている」
そういうと一枚の地図を渡してくる。そこにはあの少女の居場所が書かれていた。
「出来るな?」
「あ、あぁ。……殺るしかないんだろ?」
そう自分に言い聞かせるように言いボクは、その場から逃げるように立ち去る。
男は当薬が出てくのを確認すると、
「……よし、頼んだぞ」
覆地古亜に、そう話し掛ける。古亜は小さく頷きその場から立ち去る。
古亜がいなくなり、その場には男一人がたたずみ言葉をこぼす。
「林道当薬、君はどんな答えを出すのかな?」
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ボクは今、地図に書かれていた少女の家らしき建物の前に立っていた。
まだ、気持ちに整理はついていなったが、状況だけは理解している。あの少女を殺さなければ必ず警察に捕まってしまう。
だから、殺さなければならない。幸い人一人くらい確実に殺せる能力をボクは持っているらしい。それに、人を殺すのは初めてじゃない。
殺さなければならない。そう自分に言い聞かせ、震える手で玄関の扉を開ける。
なぜか扉には鍵が掛かっていなかった。だが、緊張のせいかそのことにボクは疑問を持たなかった。
慎重に、少女のいる寝室に足を運ぶ。
ボクはなぜか少女の居場所を知っていた。地図には建物の場所は書かれていたが、今少女のいる部屋など書かれているはずなかった。だが、またしても緊張のせいなのかそのことに違和感を感じない。
五月蠅い心臓を抑えて寝室の扉を開く。そこには小さく寝息をたてる少女がいた。あんな事があったのによく眠れるものだな、などと、考えつつもゆっくり少女に近づく。
そして、あらかじめ用意しておいたナイフを取り出し大きく振りかぶり、少女の心臓めがけナイフを振り降ろす。
「──ティカ」
が、ナイフは少女の胸ギリギリで止まる。突然、ドアの後ろから少女を呼ぶ声が聞こえた。慌てて咄嗟に隠れようとするが、周りに隠れられそうなものは見当たらない。
「ティカ、起きているか?」
そんな言葉と共に、扉が開き少女の父親らしき男が入ってくる。
「ッ!?」
「だ、誰だ!」
どうすればいいか分からなくなり、あまりの恐怖に目を瞑ってしまう。
──何秒たっても声がしない。不思議に思い恐る恐る目を開ける。
そこには先程の父親らしき人が倒れており、黒い服を纏った男女二人と──覆地古亜が立っていた。
「古亜!?」
「テメェに呼び捨てにされるほど仲良くなった覚えはないんだが?」
「な、なんで此処にいるんだ?」
「なんで?決まってんだろ手伝いに来てやったんだよ。人殺しの」
分かってはいたが、正面から言われるとやはり来るものがある。
「へ?あっあ、あの時のお兄ちゃん?」
「……!?」
少女が起きてしまった。驚きで頭が混乱する。なんだか驚いてばかりだ。そんなことを考えつつ、何をするべきか悩んでいると、
「なに悩んでんだ。殺せよ」
「え?え?こ、殺す?」
少女はこの状況をうまく呑み込めずにいる。まぁ、当然なのだが。いや、むしろこの程度で済んでいるのはすごい。起きたら知らない人がいて、いきなり「殺す」なんて言われたら、ボクなら発狂ものだ。
「まぁ、しょうがねぇか。仕方ない私がやってやる」
そういうと古亜は、懐から拳銃を取り出し銃口を少女に向ける。
「ひっ!」
少女は恐怖で小さく悲鳴をあげる。
ボクはその少女の顔をみて、昼間の光景がフラッシュバックする。路地裏で見た恐怖に染まった少女の顔を。その瞬間、自分の正義感がボクにこう告げてくる。
──助けなければ──と、
そして再び、その正義感に身を任せる。すると、昼間と同じように頭に浮かんできたのは、
─白い花─
だった。
力が湧いてくる。これなら三人相手でも勝てるかもしれないとも思ったが、二度も同じ過ちを繰り返すほどボクも馬鹿じゃない。
「悪いっ!」
そう一言、先に詫びを入れ、少女を抱きかかえる。そのまま、窓ガラスを脚で蹴破り屋根を伝いとにかく逃げる。
「おい!待ちやがれ!」
そんな叫び声が聞こえ、銃声が鳴り響く。マジ怖い。死ぬ。ちびりそう……あっ。やべっ
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そんなこんなで、何とか無事に、大量にコンテナの積まれた大きな倉庫まで逃げてきた。ここまで走ってきて感じたのだが、昼より力が出ない気がする。まぁ、気のせいかもしれないが。
「お兄ちゃん何で此処にいるの?どうしたの?」
走って乱れた呼吸を整えていると、そんな事を聞いてきた。ボクが怖くないのだろうか。いきなり家から連れ出されて……そうでなくても、昼間にボクが人を殺すところを、少女は見ていたはずなのに。
そんな疑問をシンプルに少女に問いかける。
「君はボクのことが怖くないのか?」
「全然……ううん、ちょっとだけ怖いかも、でもね二回も助けてくれたんだもん。お兄ちゃんはきっと優しい人だと思うから」
きっと二回っていうのは、昼間の男の時と、さっきのことを言っているんだろう。だが、昼間の事はともかく、さっきの出来事について、正直に話さなければいけないだろう。
「……違うんだ。……ボクはさっき君を殺そうとして、家に忍び込んだ」
ティカは少し驚いたような表情を浮かべるが、その顔に恐怖や失望の色はない。
「僕は優しい人間なんかじゃないッ!自分のために人を殺そうとする最低な人間だッ!」
自分で自分が嫌になる。自分の弱さに、情けなさに、罪悪感に、泣きそうになってしまう。そんなボクを慰めるように、
「大丈夫だよ。それが本当だったとしてもお兄ちゃんがいなかったら、今頃、死んじゃってたかもしれない。だからね、ありがとう、お兄ちゃん」
我慢してた涙が、溢れ出す。でもそれは、自分の不甲斐なさからでも、罪の意識からでもなく、この小さな女の子を助けられていた、という安心からだった……
次回は一週間以内に投稿目指して頑張ります!